サラ・アーメッド

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サラ・アーメッド
サラ・アーメッド(2019年)
生誕 (1969-08-30) 1969年8月30日(54歳)
イングランドの旗 イングランドサルフォード
国籍 イギリスの旗 イギリス
オーストラリアの旗 オーストラリア
出身校
職業 著作家、大学教員、研究者
著名な実績 フェミニスト理論クィア理論ポストコロニアル理論
公式サイト www.saranahmed.com ウィキデータを編集
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サラ・アーメッド(Sara Ahmed, 1969年8月30日 - )は、イギリスとオーストラリアの二重国籍を持つ著作家学者ジェンダー研究が専門で、クィア理論やフェミニスト理論、ポストコロニアル理論交差性について研究している。

生い立ち[編集]

イングランドサルフォードにて、パキスタン人の父とイングランド人の母の下に生まれる。その後、1970年代初めにオーストラリアアデレードへと家族で引っ越した[1]。彼女の研究テーマである移民や出自、異質な存在やアイデンティティの問題は、こういった彼女自身の経験と強く結びついている。その後、アデレード大学を卒業し、カーディフ大学大学院にて博士号を取得した[2]。現在はケンブリッジ郊外にてパートナーのサラ・フランクリンと共に生活している[3]

経歴[編集]

1994年からランカスター大学女性学研究センターに籍を置き、2004年までの11年間ここを拠点に活動した[4]。同年にロンドン大学ゴールドスミス・カレッジに招聘され、メディア・アンド・コミュニケーション学部所属となり、フェミニスト研究センターの初代所長となった。これに際し同カレッジは「ゴールドスミスにおけるフェミニズムの歴史を強固にし、将来を形作る」と述べた[5]。その後2009年春に米国ニュージャージー州にあるラトガース大学の女性研究科長に就任した[6]。さらに2013年にはケンブリッジ大学ジェンダー研究センターの教授に就任し、「強情な女性たちー意志の歴史とフェミニズム」という題で研究を行った[7]。そして、2015年には全米女性研究協会の年次総会にて基調講演を行った[8]。しかしその翌年、ゴールドスミス・カレッジの職員による学生へのセクシャルハラスメントに抗議して同カレッジを辞任し、在野の研究者として仕事を続けることを表明した[9]

理論・主張[編集]

インターセクショナリティ[編集]

インターセクショナリティ(交差性)はアーメッドのフェミニズムにとって必要不可欠である。彼女は「インターセクショナリティがスタート地点であり、もし我々が力の働き方について説明する場合にはここから始めなければならない。」と述べている[10]。彼女はベル・フックスの意見に賛同し、「もし我々が性差別等を根絶したいのであれば、現代社会を構成する人種差別・植民地主義なども同時に見なければならない。」とも述べている[10]。アーメッドにとってインターセクショナリティとは、「我々がどこから来たのかを説明する[11]」ものであるが、同時に彼女は「それを経験するとき、苛立ちや疲労、痛みを経験する可能性がある」とも述べている[12]

彼女にとってインターセクショナリティが重要なのは、それ自身が自分のフェミニズムや自己認識を定義づけているからである。彼女は「私はある時はレズビアン、ある時は有色人種、ある時はフェミニストといった存在ではなく、常にそれらのすべてを兼ね備えている。そして有色人種のレズビアン・フェミニズムはこれらを常に粘り強く実現させる。」と述べている[11]

フェミニスト・キルジョイ[編集]

アーメッドは、フェミニズムの実践はフェミニストとして生きる上で必須であると考えている。アーメッドが掲げるキルジョイ・マニフェスト[11]では、フェミニズムを実践するなかで具現化されてくるものが、伝統的な家父長制の中で生きる人々と衝突を起こすと述べている。そのため、フェミニストとは他人の喜び(joy)を殺す(kill)存在であると述べている[13]

主な著書[編集]

単著[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Sian, Katy (2014). Conversations in Postcolonial Thought. Palgrave. pp. 17–18 
  2. ^ Ahmed, Sara (1999). Differences that Matter: Feminist Theory and Postmodernism. Cambridge University Press. ISBN 9780521592253 
  3. ^ Bio”. Saranahamed.com. 2023年8月15日閲覧。
  4. ^ People - Centre for Gender and Women's studies, Lancaster University, UK”. www.lancaster.ac.uk. 2016年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月26日閲覧。
  5. ^ Centre for Feminist Research”. 2016年9月26日閲覧。
  6. ^ Spring Newsletter 2009” (pdf). ラトガース大学. 2023年8月19日閲覧。
  7. ^ Previous Visiting Professors — University of Cambridge Centre for Gender Studies”. www.gender.cam.ac.uk (2014年10月17日). 2023年9月5日閲覧。
  8. ^ Koch-Rein, Anson (2015年11月9日). “NWSA Conference 2015”. Anson Koch-Rein, PhD. 2016年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月22日閲覧。
  9. ^ “London university professor quits over sexual harassment of female students by staff”. (2016年6月9日). https://www.independent.co.uk/news/education/education-news/london-university-goldsmiths-professor-quits-sexual-harassment-female-students-staff-a7072131.html/ 2017年1月21日閲覧。 
  10. ^ a b Ahmed, Sara (2017). Living a feminist life. Durham: Duke University Press. p. 5. ISBN 9780822363040. OCLC 946461715 
  11. ^ a b c Ahmed, Sara (2017). Living a feminist life. Duke University Press. p. 230. ISBN 9780822363040. OCLC 994735865 
  12. ^ Ahmed, Sara (2017). Living a feminist life. Durham: Duke University Press. p. 212. ISBN 9780822363040. OCLC 946461715 
  13. ^ 宮嶋俊一: “公開シンポジウム 「宗教を問い直す――家族・女性・リプロダクション」記録” (pdf). 北海道大学大学院文学研究院 応用倫理・応用哲学研究教育センター. p. 38 (2023年3月31日). 2023年9月7日閲覧。

外部リンク[編集]