ゲーム電卓
ゲーム電卓(ゲームでんたく)は、卓上電子計算機にコンピュータゲームの機能を盛り込んだ多機能化商品。1980年代の電子ゲーム流行の際に大手電卓メーカーなどから発売された。
概要
[編集]通常、電卓は7セグメントディスプレイ[注 1]の液晶などによる表示機能を持っているが、ゲーム電卓ではこの表示の画面を使ってゲームをさせるというものである。
はじめに同商品カテゴリを築いたのはカシオ計算機で、1980年に発売されたMG-880「デジタルインベーダー」という商品で、これは垂直軸を座標値でのみ表示するインベーダーゲームのようなものだった(後述)。
初期のものではボードゲームにある海戦ゲームのように、数字の表示を仮想的な座標に置き換えたものが主であったが、後に電子ゲームと同じようにゲーム表示用の専用セグメント(表示枠)を備えた製品も登場し、このブームに乗じて同じ電卓メーカーのシャープも参入したが、電卓の基本機能も載せていることから、当時急速に低価格化の進んだ電卓の中にあっては、やや高価な部類であった。
これらの電卓は、音を出す電卓や、時計機能を備えた電卓など、多機能化の一環でさまざまな電卓の方向性が模索された時代でもあったため、その一過性のブームに乗って販売されていたが、電子ゲームほどには明確なユーザー層が存在していなかった事情もあり、あまり多くの種類が発売されないまま、1980年代後半[1]には一旦、姿を消している。
しかしカシオ計算機は1990年代にもゲームボーイなどの携帯ゲーム機人気に目をつけ、再びこれに類するものを発売したが、やはり明確な市場を築けなかった。その後では変り種電卓として細々と命運を繋ぐ一方、占い機能などを搭載した電卓も見られ、これらは稀にコミュニケーションツールとして愛用する向きも見られた。
消費市場全体で、シンプルな往年のヒット商品が再評価される傾向を受けて、カシオ計算機は2018年3月、シューティングゲームを楽しめる復刻版として「ゲーム電卓SL-880」を発売した[2]。
近年では、パソコンやPDA上でゲーム機能を再現するソフトウェアも各方面から発表されている。
商品化された主なゲーム内容
[編集]カシオ計算機
[編集]- ディジタルインベーダー(MG-880)1980年8月発売
- 数字で表された敵インベーダー(数字インベーダー)にあわせてプレーヤーが照準ボタンで砲台の数値を増加させ、発射ボタンでその数値の数字インベーダーを撃破する…といったもの。ゼロ以外の数字インベーダーを撃破した際に撃破した数字の合計が10の倍数になっていればの形をしたUFOが出現した。これを撃破すると高い点が入るため、暗算力がものをいうゲームでもあった。数字インベーダーの桁が砲台のある左端に届いてしまうと攻撃されたことになり、砲台の表示が → → と減っていく。1つの面内で、3つ全ての砲台が無くなるか、残弾(画面には表示されない)を撃ち尽くすとゲームオーバーとなる。数字インベーダーを全滅させると、砲台と弾数が全回復し、次の面に進む。
- 手帳タイプだけでなく、カードタイプのMG-770、小型タイプのMG-890も同時に発売されていた。
- 2018年3月、SL-880としてリニューアル再販される。
- エイトアタック(MG-885)1981年発売
- 初代に続き、7セグ表示を活用したもの。フィールド上には小数点「.」が敷き詰められており、横棒が1か所だけ抜けた不完全な8の字(、、のいずれか)が左右に動き回る。プレイヤーはボタン操作で該当位置(、、)の横棒(ミサイル)を飛ばし、これを完全なの形に補完するシューティングゲーム。「8の字」の形成に成功するとその位置の小数点が消え、新たに「不完全な8の字」が動き出す。画面上の全ての小数点を消すと面クリアとなる。小数点のある位置で撃ち落としたほうが高得点であり、それを計算に入れて(すなわち頭を使って)撃ち落とす必要がある[3]。
- ボクシング(BG-15)1981年10月発売
- このゲームからゲーム専用の液晶パターンが用意されるようになり、普通の電子ゲームのようになった。CMキャラクターは篠沢秀夫が務めた。
- リング上で向かい合った2人のボクサーが描かれており、プレイヤーキャラクターは右側。パンチで攻撃するほか、スウェイバック(後ろに下がる)で相手のパンチを避けたりできる。グラブにはアップとダウンの位置があり、グラブでガードすることもできる。7セグには両者のスタミナとパンチ力が数値で表示される。相手のダウン後、カウント10でK.O.勝ちとなる。得点も入るが、K.O.した人数を競うこともできる[4]。
- 手帳タイプだけでなく、カードタイプのBG-8、アニメーションタイプのBG-20電卓機能なしも同時に発売されていた。
- 時計、アラーム内蔵。
- ベースボール(BB-9)1982年9月発売
- 7セグ表示の下にダイヤモンド、左右に打者(バット)と投手が描かれた野球ゲーム。投球したボールの一部が7セグの横棒を使って表現されている。CMキャラクターは野村克也と村山実が務めた。
- 占い(FT-7)1981年7月発売
- 統計理論によるバイオリズムの観点から相性と運勢が占える。占える内容は4つのテーマが用意されている[1]。
- スロットマシン、モグラ叩き(MG-777)1981年12月発売
- 当時流行っていたルービックキューブの電卓化。ALL SAME, STOP THE SEVEN, HIT AND HITの3種類のゲームが内蔵されていた。時計、アラーム内蔵。
- パチンコ(PG-200)1982年発売
- 電卓機能を備えたパチンコゲーム[1]。
- インターバルアタック、シフトパズル、ラッキーダイス(MG-888)1982年発売
- 3種類のゲームが選択可。カードタイプのMG-333もある。
- オクトリバーシ(CG-8)1984年発売
- タッチパネル、計算機能なしのCG-88もある。
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脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 数字のを基本とし、それを横に複数個並べることで数値を表現する。小数点も数えて8セグメント(8セグ)と表現されることもあるが、本稿では7セグと表記した。
出典
[編集]- ^ a b c d “ゲーム電卓で遊べるのはここだけ! カシオの電卓展”. 日経トレンディネット (2017年3月21日). 2017年10月5日閲覧。
- ^ 1980年代に一世を風靡したゲーム電卓が復活 シンプルで奥が深いシューティングゲームを搭載カシオ計算機ニュースリリース(2018年3月15日)2018年3月27日閲覧
- ^ 『ゲームセンターあらし』第27回「ハンバーガー仮面登場」、『月刊コロコロコミック』No.41(1981年9月号)、p76[信頼性要検証]。
- ^ 『ゲームセンターあらし』第32回「赤ん坊帝国」、『月刊コロコロコミック』No.45(1982年2月号)、p142[信頼性要検証]。
関連項目
[編集]- 電子手帳 - この機器には、ゲーム機能を追加するオプションカードも存在した。
- ポケットコンピュータ(ポケコン) - 電卓の延長上にある、シャープ、カシオなどが発売していたユーザープログラムの実行が可能な携帯型コンピュータ。7セグLEDではなくドットマトリクスによる英文字や記号が表示可能。本来はプログラム可能な関数電卓としての用途をメインとしているが、プログラム実行能力を利用してゲームなども作成可能。
- ワンボードマイコン - ほぼ機械語に特化した技術者向けの評価用コンピュータ基板だが、安価ゆえに個人用コンピュータとしても使われた。日本では電卓のようなテンキーと7セグ表示装置を搭載したものが多く、ちょうど本機と同じように7セグ表示を活用したゲームも作られた。