クロバナウマノミツバ
クロバナウマノミツバ | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Sanicula rubriflora F.Schmidt (1859)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
クロバナウマノミツバ(黒花馬の三葉)[2][3] |
クロバナウマノミツバ(黒花馬の三葉、学名:Sanicula rubriflora)は、セリ科ウマノミツバ属の多年草。日本では岩手県と長野県に隔離分布し、山地の林内にまれに生える。大きい葉状の総苞片は対生し、更に3全裂し、暗紫色の花が小散形花序につく[2][3][4]。
特徴
[編集]根茎は暗黄褐色で、長さ3cmになる。根は根茎に周囲に多数生え、長さ20cmになる[5]。茎は単一で直立し、分枝しないで花茎状になり、高さは20-50cmになる。根出葉はかなり大きく、径4-10cmの腎心形になり、3全裂して側裂片がさらに2深裂し、先は3浅裂する。縁に粗い鋸歯があり、葉柄は長さ10-30cmになる。茎の頂部に2個1対の大きな葉状の総苞片が無柄でつき、3全裂して茎をかこむ。6片になる総苞片の裂片は倒披針形になり、先は3浅裂し、縁に鋭い鋸歯がある[2][3][4]。
花期は5-7月。6片の葉状の総苞片の間から長さ3-6cmになる花柄を3個だし、先端に小散形花序をつける。小散形花序の基部に小総苞片がつき、線状披針形-線状倒披針形で5-7個あり、長さ1-2cm、小散形花序より長く、全縁で平開する。花は暗紫色になり、1-3個の両性花と15-20個の雄花からなり、小花柄は長さ1-2mmかほとんど無柄で丸く密生し、扁球形になる。花弁は5個あり内側に巻く。萼片は5個あり、卵状披針形になり上を向く。果実は短円錐形になり、長さ3-4mm、先端が鉤状に曲がった硬い刺毛をつける。染色体数は2n=16[2][3][4][5]。
分布と生育環境
[編集]日本では、本州の岩手県と長野県に隔離分布し、山地の草地などにまれに生育する[2][3][4]。世界では、朝鮮半島、中国大陸(東北部)、モンゴル、ウスリー、アムールに分布する[3][4]。
名前の由来
[編集]和名クロバナウマノミツバは、「黒花馬の三葉」の意[2][3]、花弁が黒味を帯びていることによる[3]。種としてはドイツ人の植物学者であるフリードリッヒ・カール・シュミット (1859) によって記載されていたが、盛岡高等農林学校の澤田兼吉ら (1907) によって岩手県姫神山で採集され、日本新産とされ、澤田兼吉[注釈 1]によって和名「くろばなうまのみつば」が『植物学雑誌』に掲載された[5]。
種小名(種形容語)rubriflora は、「赤い花の」の意味[8]。
種の保全状況評価
[編集]国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、岩手県がBランク、長野県が準絶滅危惧 (NT)となっている[9]。
ギャラリー
[編集]-
茎の頂部に1対の大きな葉状の総苞片が無柄でつき、3全裂して茎をかこむ。総苞片の間から花柄を3個だし、先端に小散形花序をつける。
-
花は暗紫色になる。小散形花序の基部に小総苞片がつき、線状披針形で5-7個あり、小散形花序より長く、全縁で平開する。
-
小花柄は長さ1-2mmかほとんど無柄で丸く密生し、扁球形になる。花弁は5個あり内側に巻く。
-
萼片は5個あり、卵状披針形になり上を向く。
-
花茎の周辺にある根出葉はかなり大きく、腎心形になり、3全裂して側裂片がさらに2深裂し、先は3浅裂する。縁に粗い鋸歯があり、葉柄は長い。5月上旬。
近縁種
[編集]本種と近縁の種に、フキヤミツバ Sanicula tuberculata Maxim. (1867)[10]がある。本州の東海地方以西、四国、九州、朝鮮半島南部に分布する。根出葉は径1.5-4cmの五角形状腎円形で3全裂し、側裂片がさらに2深裂し、葉柄は長さ5-12cmになる。花茎状の茎は高さ8-20cmになる。茎の頂部に1対の葉状の総苞片が対生し、各片がさらに2-3深裂する。総苞片は根出葉よりはやや小さい。対生する総苞片から2-3個の小散形花序をだし、10数個の緑色の小さな花をつける。小総苞片は数個あり、狭披針形で、長さ4-10mmになり、平開する。果実は太く短く、長さ4.5mm、先端が鉤状にならい太い刺毛をつける。花期は4-5月。染色体数は2n=8。和名の由来は「吹屋三葉」で、最初の発見地が、岡山県川上郡成羽町(現、高梁市)吹屋であったことによる。まれな植物で、国(環境省)の絶滅危惧II類(VU)に評価されている[2][4][11][12]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ クロバナウマノミツバ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.464
- ^ a b c d e f g h 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1241
- ^ a b c d e f 鈴木浩司 (2017)『改訂新版 日本の野生植物5』「セリ科」p.386
- ^ a b c 澤田兼吉「盛岡地方採集所見」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第21巻第247号、東京植物学会、1907年、220-221頁、doi:10.15281/jplantres1887.21.247_220。
- ^ 植物標本室、岩手大学ミュージアム
- ^ 司書官でもあった菌学者、澤田兼吉が著した本、Discomycetes ets.
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1511
- ^ クロバナウマノミツバ、日本のレッドデータ検索システム、2024年9月1日閲覧
- ^ フキヤミツバ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1242
- ^ 『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』p.7
参考文献
[編集]- 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』、1984年、保育社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 澤田兼吉「盛岡地方採集所見」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第21巻第247号、東京植物学会、1907年、220-221頁、doi:10.15281/jplantres1887.21.247_220。