ガルーダ・インドネシア航空152便墜落事故
|
1988年11月に撮影された事故機 | |
| 事故の概要 | |
|---|---|
| 日付 | 1997年9月26日 |
| 概要 | パイロットエラーとATCエラーによるCFIT |
| 現場 |
北緯03度15分53秒 東経098度40分48秒 / 北緯3.26472度 東経98.68000度座標: 北緯03度15分53秒 東経098度40分48秒 / 北緯3.26472度 東経98.68000度 |
| 乗客数 | 222 |
| 乗員数 | 12 |
| 負傷者数 | 0 |
| 死者数 | 234(全員) |
| 生存者数 | 0 |
| 機種 | エアバスA300B4-220 |
| 運用者 |
|
| 機体記号 | PK-GAI |
| 出発地 |
|
| 目的地 |
|
ガルーダ・インドネシア航空152便墜落事故(ガルーダ・インドネシアこうくう152びんついらくじこ)は、1997年9月26日にインドネシア・メダンで発生した航空事故である[1][2]。
事故の概要
[編集]1997年9月26日、ガルーダ・インドネシア航空152便は、インドネシアのジャカルタを出発し、メダンに向かう定期便として運行されていた[1]。
離陸から着陸のために降下するまでは問題なく、メダンの管制官からメダン・ポロニア空港の滑走路05への進入を許可された。メダンではしばらく前から山火事の煙で視界が悪化していたため、パイロットは管制官に誘導を依頼した[3][4]。152便は3,000フィート (910 m)まで降下したところで方位240度へ左旋回するように指示を受け、13時28分には方位215度へ左旋回を続け2,000フィート (610 m)まで降下するように指示された[5]。13時30分に管制官は方位040度へ右旋回するよう指示を出した。しかし13時34分、152便はメダン・ポロニア空港から32km南にある標高1,500フィート (460 m)の森林地帯に右翼を下げた状態で墜落し、機体は大破して炎上し日本人6人を含む乗員乗客234名全員が死亡した[1][6][7][8][9][10]。

この事故は、2023年6月現在もインドネシア最悪の航空事故である。
乗客や著名人など
[編集]乗客の大半はインドネシア国籍であったが、そのほかに日本人6名、ドイツ人4名、台湾人3名、カナダ(ケベック州)出身者2名、イギリス人2名、アメリカ人2名、フランス人1名、マレーシア人1名、ベルギー人1名、オランダ人1名、イタリア人1名、スウェーデン人1名が搭乗していた[11]
| 国籍 | 乗客 | 乗員 | 計 |
|---|---|---|---|
| 198 | 12 | 210 | |
| 6 | 0 | 6 | |
| 4 | 0 | 4 | |
| 3 | 0 | 3 | |
| 2 | 0 | 2 | |
| 2 | 0 | 2 | |
| 2 | 0 | 2 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 0 | 1 | |
| 合計 | 222 | 12 | 234 |
犠牲になった著名人
[編集]この事故では、PT Inti Indorayon Utama の社長であるポラー・ヤント・タノト(Polar Yanto Tanoto)が犠牲となった[12]。また、SCTVのニュース番組「Liputan 6」の記者である フェルディナンドゥス・シウス(Ferdinandus Sius) および ヤンス・イスカンダル(Yance Iskandar)の2名も搭乗しており、死亡が確認されている[13]。
遺体の処理
[編集]事故現場から回収された48体の遺体は損傷が激しく、身元の特定が不可能だったため、メダンのポロニア空港近郊にある共同墓地に埋葬された。同墓地には、1979年のガルーダ・インドネシア航空フォッカーF28墜落事故の犠牲者61名も埋葬されている。残る186体の遺体は身元が確認され、遺族の希望により個別に埋葬された[14]
事故原因
[編集]直接的な事故原因は、管制官が右旋回を指示したにもかかわらず機長が左旋回を実施し、その後間違いに気が付き右旋回に戻したものの、この操作に対して管制官とパイロットとの間で意思疎通に時間がかかり、その間にパイロットが指示された最低降下高度である2,000フィートを大幅に下回る高度まで降下したことである[15][5]。
また、管制官が当初パイロットに指示を出す際「インドネシア152」でなく「メルパチ152」と誤ってコール[脚注 1]し、再度指示を出しなおす際に空港への進入経路をパイロットに明確に指示しなかったことで、通常使用する経路で進入すると思い込んだ機長が左旋回を行ったのではと推測されている[16]。
※太字は交信会話。斜体は母国語会話を英訳したもの
- 13:29:41:ATC(メダン): Indonesia 152 traffic clear. Descend to 2,000 feet.(インドネシア152、トラフィッククリア。2000フィートまで降下してください)
- 13:29:44:GA152(副操縦士): Descend to 2,000 feet. Indonesia 152.(2000フィートまで降下します。インドネシア152)
- 13:30:04:ATC(メダン): Indonesia 152 turn right heading 046. report established localizer.(インドネシア152、方位046度へ右旋回し、ローカライザーに乗ったら報告を)
- 13:30:08:GA152(副操縦士): Turn right heading
040 . Indonesia 152 check established.(方位040度へ右旋回。インドネシア152。完了したら報告する) - 13:30:13:GA152(機長): Flaps 8.(フラップを8に)
- 13:30:14:GA152(副操縦士): Speed check... flaps 8.(速度チェック…フラップを8)
- 13:30:20:GA152(機長): It's hot - yes? The cockpit is hot... Please have a look... The cockpit is hot!(暑いな…(エアコンの設定を)見てくれ…ここは暑い!)
(ここで機長は左旋回実施。副操縦士はエアコンの設定を行った後に機が左旋回していることに気が付く)
- 13:30:33:GA152(副操縦士): Turn... turn right!((左旋回ではなく)右旋回です!)
- 13:30:35:GA152(機長): Indonesia 152 confirm turning left or turning right heading 046?(インドネシア152です。確認ですが方位046度へは左旋回・右旋回のどちらですか?)
- 13:30:39:ATC(メダン): Turning right sir.(右旋回です)
- 13:30:40:GA152(副操縦士): Sorry Capt.(すいません、機長)
- 13:30:41:GA152(機長): Roger 152.(インドネシア152、了解)
- 13:30:43:GA152(副操縦士): Sorry Capt.(すいません、機長)
- 13:30:44:GA152(副操縦士): It's already cold.(エアコンを設定しました)
(GA152は右旋回に修正するが、それまで左旋回していたことをメダン管制がレーダーで確認)
- 13:30:51:ATC(メダン): 152 confirm you are making turning left now?(インドネシア152、確認ですが今左旋回中ですか?)
- 13:30:56:GA152(機長): We are... turning right now.(今は右旋回中です)
- 13:31:05:ATC(メダン): 152... OK. continue left turn now.(インドネシア152、了解。左旋回を継続してください)
- 13:31:09:GA152(機長): confirm turning left? We are starting turning right now.(左旋回ですか?今こちらは右旋回を始めていますが)
- 13:31:13:ATC(メダン): Aduh! OK, OK.(あ…、了解)
- 13:31:13:GA152(副操縦士): Just turn right Capt.(右旋回しています、機長)
(この混乱の間に高度が1500フィート近くまで降下していることに副操縦士が気が付く)
- 13:31:27:GA152(副操縦士): Err...descend!(ああっ…降下してます!)
- 13:31:29:GA152(機長): Eh...? Maaf...(え…すまん!)
- 13:31:31:ATC(メダン): Indonesia 152 continue turn right heading 015.(インドネシア152、では方位015度に右旋回を継続してください)
- 13:31:32:(機体が樹木と接触する音)
- 13:31:33:(警告音"PULL UP PULL UP"と両パイロットの叫び声)
- 13:31:34-13:31:36:(両パイロットの叫び声)
- 13:31:37:(CVR録音終了)
映像化
[編集]- メーデー!:航空機事故の真実と真相 第15シーズン第5話「Lethal Turn」[脚注 2]
脚注
[編集]- ^ 事故当日、この管制官は(同時にではないが)たまたま便数名が同じメルパチ152も担当しており、うっかり混同したものと思われる。
- ^ “メーデー!15:航空機事故の真実と真相”. ナショナルジオグラフィックチャンネル. 2017年8月15日閲覧。
出典
[編集]- ^ a b c 「速報・航空機事故:インドネシアでガルーダ航空機が墜落」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月26日。オリジナルの2000年12月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機事故:スマトラ島で墜落 6邦人搭乗か」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月26日。オリジナルの2000年12月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「東南アジア火災:広がる煙害 打つ手なし」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月27日。オリジナルの2000年12月16日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機事故:煙霧の視界不良 原因の一つとの見方が強まる」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月27日。オリジナルの2000年12月16日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ a b 「ガルーダ機墜落:原因は管制官の誘導ミスか--現地紙報道」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月29日。オリジナルの1999年11月11日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機事故:苛立ち隠せぬ家族 一体何がまた赤道直下で」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月26日。オリジナルの2000年12月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機事故:スマトラで墜落 6邦人搭乗か 確認急ぐ」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月26日。オリジナルの1999年11月4日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機墜落:邦人犠牲者3遺体を家族が確認」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月28日。オリジナルの1999年11月9日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機事故:邦人犠牲者5人の遺体を確認」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年9月29日。オリジナルの1999年9月10日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ 「ガルーダ機墜落:◯◯◯さんの遺骨が無言の帰国」『毎日新聞』毎日新聞社、1997年10月1日。オリジナルの2001年1月21日時点におけるアーカイブ。2025年5月9日閲覧。
- ^ “INDONESIA: INVESTIGATORS LOOK AT POSSIBLE EFFECT OF SMOG ON GARUDA AIRLINES AIRBUS CRASH”. www.itnsource.com. 2025年11月28日閲覧。
- ^ “WORLD - Indonesian plane crashes in smog area, 234 die”. www.hurriyetdailynews.com. 2025年11月28日閲覧。
- ^ Liputan6.com. “[VIDEO] 17 Tahun Liputan 6 SCTV, Tegar Dalam Suka Duka” (インドネシア語). liputan6.com 2025年11月28日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 数字を含む名前/author (カテゴリ) - ^ “CNN - Unidentified dead from Indonesia plane crash buried - Sept. 29, 1997”. www.cnn.com. 2025年11月29日閲覧。
- ^ “National Transportation Safety Committee - KNKT p. 45.”. NATIONAL TRANSPORTATION SAFETY COMMITTEE DEPARTMENT OF COMMUNICATIONS REPUBLIC OF INDONESIA. 2019年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月16日閲覧。
- ^ “National Transportation Safety Committee - KNKT p. 44.”. NATIONAL TRANSPORTATION SAFETY COMMITTEE DEPARTMENT OF COMMUNICATIONS REPUBLIC OF INDONESIA. 2019年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月16日閲覧。
- ^ “National Transportation Safety Committee - KNKT (Appendix B. Transcript of the CVR recording)”. NATIONAL TRANSPORTATION SAFETY COMMITTEE DEPARTMENT OF COMMUNICATIONS REPUBLIC OF INDONESIA. 2019年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月17日閲覧。