カリウム40

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
カリウム40
Potassium-40-decay-scheme.svg
崩壊図
概要
名称、記号 カリウム40,40K
中性子 21
陽子 19
核種情報
天然存在比 0.0117 %
半減期 1.248 ×109y
同位体質量 39.963998475(206) [1] u
スピン角運動量 4-
余剰エネルギー -33535.205± 0.192 keV
結合エネルギー 8538.083± 0.005 (1核子当り) keV
EC+β+ (10.72%) 1.50469(19) MeV
β-(89.28%) 1.31107(11) MeV

カリウム40 (Potassium-40,40K) は天然カリウム中に存在するカリウムの同位体である。陽子数(19)および中性子数(21)共に奇数である奇奇核で、核種として不安定な放射性同位体である。半減期は12.48億年。

地球上における絶対量が多いことにより、地球上における主な自然放射線元の1つとなっており、また生体における最大の内部被爆要因ともなっている。

存在[編集]

カリウム40は天然カリウム中に0.0117 %の割合で存在する。自然界に存在するカリウム40はその殆どが恒星内の元素合成で生成されたものだが、ごく一部は上空大気中でアルゴン40が宇宙線と作用することにより生成される。約46億年前の地球創世時には現在の約12倍のカリウム40が存在していたとされる。

カリウム40の1グラム当り放射能強度は30.4 ベクレル(Bq)であり、その放射線エネルギーはトリウムウランのそれと比較して低いが、地球上においてカリウムが普遍的に存在するため、結果としてカリウム40に起因する放射線はトリウムおよびウランと共に自然放射線量の約1/3にも達する。

カリウムは地殻岩石中では主に長石の形で含まれ、特に花崗岩中に高濃度で存在する。岩石の放射発熱量はカリウム40・トリウム・ウランいずれもの含有率が高い花崗岩が高い値を示し、地熱の主因となっている。特にカリウム40およびウラン235半減期の関係で地質時代の過去において発熱量の主因となっていた[2]

地球のような岩石惑星にはカリウム40が多量に存在し、この放射性崩壊により生成した アルゴン40(40Ar) が大気中に多量に蓄積している。現在の地球大気中の希ガス元素のうちアルゴンの存在量が圧倒的に多く、また太陽大気中のアルゴンの同位体比が 36Ar : 84.2%, 38Ar : 15.8%, 40Ar : 0.026% であるのに対し[3]、地球大気中では 36Ar : 0.3365%, 38Ar : 0.0632%, 40Ar : 99.6003%と、40Ar が圧倒的に多くなっているのもこのためである[4]

放射性崩壊[編集]

カリウム40の放射性崩壊では、全体の89 %がベータ崩壊(β-崩壊)によりカルシウム40(40Ca)となる。その崩壊エネルギーは1.31107±0.00011 電子ボルト(MeV)である。

11%は電子(e-)捕獲によりアルゴン40(40Ar)になる。その崩壊エネルギーは1.50469±0.00019 MeVである。

さらに、極一部(0.001%)はβ+崩壊により陽電子(e+)を放出して、40Arになる。

岩石の年代測定[編集]

カリウム40の放射性同位体としての半減期が12.48億年であることを利用して、岩石の生成年代を推定することが可能である。マグマが凝固し岩石となった後、含まれていたカリウム40は放射性崩壊しカルシウム40およびアルゴン40を岩石中に生成する。このうちカルシウム40は安定同位体でかつ岩石中にもともと多量に存在するため崩壊により生成されたものとの区別が不可能であるが、他方の常温で気体であるアルゴン40の岩石中の封入比率を測定することによって、当該岩石の年代を見積もることができる。この方法は「カリウム-アルゴン法」と呼ばれる。

人体での内部被曝線量[編集]

カリウムは動植物の必須元素として体液や組織中に多量に存在することから、天然カリウム中のカリウム40に起因する放射線は内部被曝の最大要因となっている。食品中にもカリウムが多く含まれ、それに起因する白米1kg中の放射能は33Bq、同様に乾燥昆布では1600Bq/kg、納豆は200Bq/kg、豚ひれ肉は120Bq/kg、牛乳は45Bq/kgほどになる。また外洋の海水中において1リットルあたり12.1Bqが含まれる。

アルカリ金属であるカリウムはナトリウムと同様陽イオンの形で水中に存在しやすく、経口摂取により体内に取り込まれすみやかに全身に広がることとなる。飲食で人体中に取り込まれるカリウム40の放射能は1日あたり約50ベクレルであるが、通常の生活においては体内の蓄積量が平衡量まで達しているので、人体中の余分のカリウムが排出されるのに伴って同等の量が吸収される[5][6]。その生物学的半減期は30日とされる。人体が持つ放射能は、体重60kgの成人男子で約4000ベクレルであり[7]、これによる年間の内部被曝線量は、0.17ミリシーベルト(mSv)となる。

脚注[編集]

  1. ^ Nuclide Information 19-K-40”. 2010年9月3日閲覧。
  2. ^ 上田誠也、水谷仁 『岩波地球科学選書 地球』 岩波書店、1994年
  3. ^ E. Anders and N. Greverse, Abundances of the elements: Meteoritic and solar. Geochim. Cosmochim. Acta 53 (1989).
  4. ^ 松井義人、一国雅巳 訳 『メイスン 一般地球化学』 岩波書店、1970年
  5. ^ 預託実効線量の計算方法
  6. ^ http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-01-07
  7. ^ 高田純 『世界の放射線被曝地調査 自ら測定した渾身のレポート』 講談社 2002年 ISBN 4-06-257359-8 p.38.日本成人の平均値であり、著者自身(体重60kg以上)も測定した結果は4000ベクレルであったと記す。

関連項目[編集]