アールト大学

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旧工科大学メインビルディング

アールト大学英語: Aalto University, フィンランド語: Aalto-yliopisto, スウェーデン語: Aalto-universitetet) は、フィンランドのヘルシンキに大部分の拠点を持つ大学。フィンランドにあった3つの大学が合併して出来た。もともとの大学名はそれぞれ、ヘルシンキ工科大学(1849年創立)、ヘルシンキ経済大学(1904年創立)、ヘルシンキ美術大学(1871年創立)である。科学、ビジネス、美術の各コミュニティが密接に連携することで、学際的な教育と研究を実現しようとしている。2010年、フィンランド政府はイノベーションを基礎に置く大学を創る取り組みに着手し、3つの大学を1つにまとめあげた。イノベーションを引き起こすフィンランドの大学として、モデルの役割を担わせようとしたのである[1]

アールト大学は6つの学部からなり、19,000人の学生と5,000人の教職員から構成されている。規模としてはフィンランドで3番目に大きな大学である。6つの学部はどれも各領域で高い評価を得ている。メインキャンパスはエスポーのオタニエミにあり、工学部はここに設けられている。ヘルシンキには2つの学部があり、それぞれ、ビジネス学部がトゥーロに、美術・デザイン・建築学部がアラビアンランタに位置する(美術・デザイン・建築学部は、2016年にオタニエミに移転予定)。加えて、ヘルシンキの外のミッケリ、ポリ、ヴァーサにもいくつかのユニットがある。

アールト大学は、フィンランド政府による新たな高等教育の公開実験の場でもある。アールト・デザイン・ファクトリー、AppCampus、ADD LAB、アールト・ベンチャー・プログラムは、大学の使命である学際的な学習へのラディカルな移行を後押ししており、ヘルシンキをスタートアップ企業の中心地として盛り上げるための重要な貢献を果たしてきた。Aaltoes(Aalto Entrepreneurship Society、アールト起業家協会)は、学生により運営されるヨーロッパ最大の起業家コミュニティであり、スタートアップとしてサウナ促進プログラムを組織し、2010年以降に3,600万米ドル以上のファンドを集めた。

大学名はフィンランドの著名な建築家・デザイナーであるアルヴァ・アールトから取っている。彼は、かつてのヘルシンキ工科大学の卒業生であり、メインキャンパスであるオタニエミキャンパスの大部分のデザインも手がけた。

沿革[編集]

2004年、フィンランド金融省のアンネ・ブルニラが主導するワークグループは、次のように結論づけた。つまり、フィンランドには大学やその他の高等教育機関が多すぎるので、整理・統合すべきであると。この決定を受け、当時ヘルシンキ美術大学の学長であったユルヨ・ソタマーは、2005年の学長就任演説にて、既存の大学を合併し、アアルト大学を創設するという提案を行った。そうすれば、ユニークかつ学際的な大学が誕生し、革新的な考えを生み出すことができるようになるとソタマーは考えたのである。

フィンランド教育省はこの構想に注目し、金融省のトップであるライモ・サイラスに声をかけ、大学合併の可能性を探る調査官に任命した。サイラスのグループは、合併はフィンランドのアカデミズムと経済にとって有益であると報告した。この調査結果をもとに、フィンランド政府は2007年11月11日、合併プロジェクトを進めることを決定した。

2008年5月29日、新しい大学の名前はフィンランドの建築家アルヴァ・アールトにちなんだものにすると政府は発表した。技術、経済、アートという3領域にわたるアールトの功績を讃えてのことである。2008年6月25日、当時のフィンランド教育大臣サリ・サルコマーは、フィンランドの産業界と専門機関の代表者とともに、ヘルシンキにてアアルト大学憲章に署名した。2008年12月19日、理事会はトゥーラ・テーリ教授をアアルト大学初代学長に選出した。

アアルト大学は2010年1月1日に開学した。大学が基金を集められるようにするため、創立過程において、フィンランドの大学関連法規は改正された。寄付金集めは現在も続いており、目標値は個人寄付だけで2億ユーロを達成することである。個人寄付の総額の2.5倍、最大5億ユーロがフィンランド政府により補強される。なので、資金調達プロジェクトの目標額は合計7億ユーロとなる[2]

ヘルシンキ工科大学[編集]

教授と一緒に測量する学生たち。ヘルシンキ工科大学初期の様子。

アアルト大学創立時に出来た4つの理工系学部は、もともとヘルシンキ工科大学(TKK)にあった学部であった。1849年に、ニコライ1世によって創立された大学である。大学の地位を得たのは1908年であった。1966年、工科大学はヘルシンキの下町ヒエタラハティから、現在のオタニエミキャンパスに移転した。新しいキャンパスは、アルヴァ・アールトがデザインしたものだ。アアルト大学の創設時には、工科大学は約250人の教員と約15,000人の学生を抱えていた。つまり、アアルト大学の構成部分として、ヘルシンキ工科大学は最大の要素となっている。

2011年、かつての工科大学(新たにアアルト大学理工学部と呼ばれるようになった)は4つの学部に分割され、合併前の学科構成に対応するように再編された。現在の学部構成は、化学技術学部(CHEM)、電気工学部(ELEC)、工学部(ENG)、理学部(SCI)である。

ヘルシンキ経済大学[編集]

ヘルシンキ経済大学(HSE)は、1904年にビジネス界の手によりヘルシンキで創立された。1911年には大学の地位を得た。それ以降、私立大学として運営されていたが、1974年からはフィンランド政府が大学の予算を管理するようになった。

合併後、大学名はアアルト大学経済学部になったが、現在はアアルト大学ビジネス学部(Aalto BIZ)へと改名している。

ヘルシンキ美術大学[編集]

レオ・ミシュランはヘルシンキ美術大学の初期学長の一人。

ヘルシンキ美術大学は、北欧最大規模の美術大学であった。1871年に創立された。視聴覚メディアの国立研究開発センターであるメディアセンター・ルームも大学内に設置されていた。学士、修士、博士課程を持っていた。

ヘルシンキ美術大学は、民間セクターを通じた研究プロジェクトの企画と産業コラボレーションを盛んに推進していた。ユルヨ・ソタマーのリーダーシップのもと、フィンランドのイノベーションネットワークにデザインを統合する動きが活発であった。

大学合併により、大学の名前はアアルト大学美術学部へと変わった。2012年には、もともとヘルシンキ工科大学の一部であった建築学部の移転・合併に伴い、アアルト大学美術・デザイン・建築学部(Aalto ARTS)に改名した。

2011年以降の学部学科構成[編集]

  • アールト大学工学部 (Aalto-yliopiston insinööritieteiden korkeakoulu, Aalto University School of Engineering, Aalto ENG)
    • エネルギー技術学科 (Energiatekniikan laitos, Department of Energy Technology)
    • 機械工学科 (Koneenrakennustekniikan laitos, Department of Engineering Design and Production)
    • 測量土地利用計画学科 (Maankäyttötieteiden laitos, Department of Surveying and Planning)
    • 構造建築工学科 (Rakenne- ja rakennustuotantotekniikan laitos, Department of Structural Engineering and Building Technology)
    • 応用力学科 (Sovelletun mekaniikan laitos, Department of Applied Mechanics)
    • 土木環境工学科 (Yhdyskunta- ja ympäristötekniikan laitos, Department of Civil and Environmental Engineering)
    • Lahtiセンター (Lahden keskus (Lahti), TKK Lahti Center)
    • エネルギー技術研究所 (Energiatekniikan instituutti, Center for Energy Technology (CET))
    • 建築技術研究所 (Talotekniikan instituutti, Institute of Building Services Technology)
  • アールト大学経済学部 (Aalto-yliopiston kauppakorkeakoulu, Aalto University School of Business, Aalto BIZ)
    • 経営・国際ビジネス学科 (Johtamisen ja kansainvälisen liiketoiminnan laitos, Department of Management and International Business)
    • 会計学科 (Laskentatoimen laitos, Department of Accounting)
    • マーケティング学科 (Markkinoinnin laitos, Department of Marketing)
    • 金融学科 (Rahoituksen laitos, Department of Finance)
    • 経済学科 (Taloustieteen laitos, Department of Economics)
    • 情報サービス経済学科 (Tieto- ja palvelutalouden laitos, Department of Information and Service Economy)
    • コミュニケーション学科 (Viestinnän laitos, Department of Communication)
    • 国際市場研究所CEMAT (Kansainvälisten markkinoiden tutkimuskeskus CEMAT, Center for Markets in Transition CEMAT)
    • 知識イノベーション研究所 (Tiedon ja innovaatioiden tutkimuskeskus CKIR, Center for Knowledge and Innovation Research CKIR)
    • 小企業センター (Pienyrityskeskus, Small Business Center)
  • アールト大学化学技術学部 (Aalto-yliopiston kemian tekniikan korkeakoulu, Aalto University Chemical Technology, Aalto CHEM)
    • バイオテクノロジー化学技術学科 (Biotekniikan ja kemian tekniikan laitos, Department of Biotechnology and Chemical Technology)
    • 化学科 (Kemian laitos, Department of Chemistry)
    • 材料科学工学科 (Materiaalitekniikan laitos, Department of Materials Science and Engineering)
    • 森林製品工学科 (Puunjalostustekniikan laitos, Department of Forest Products Technology)
    • 新材料センターUMK (Uusien materiaalien keskus UMK, UMK Center for New Materials)
  • アールト大学理学部 (Aalto-yliopiston perustieteiden korkeakoulu, Aalto University School of Science, Aalto SCI)
    • バイオメディカル計算科学工学科 (Lääketieteellisen tekniikan ja laskennallisen tieteen laitos, Department of Biomedical Engineering and Computational Science)
    • 数学システム解析学科 (Matematiikan ja systeemianalyysin laitos, Department of Mathematics and Systems Analysis)
    • メディア工学科 (Mediatekniikan laitos, Department of Media Technology)
    • 応用物理学科 (Teknillisen fysiikan laitos, Department of Applied Physics)
    • 情報計算機科学科 (Tietojenkäsittelytieteen laitos, Department of Information and Computer Science)
    • 計算機科学工学科 (Tietotekniikan laitos, Department of Computer Science and Engineering)
    • 生産管理工学科 (Tuotantotalouden laitos, Department of Industrial Engineering and Management)
    • 語学センター (Kielikeskus, Language Centre)
    • 低温ラボラトリー (Kylmälaboratorio, Low Temperature Laboratory)
    • HIIT情報技術研究所 (Tietotekniikan tutkimuslaitos HIIT, Helsinki Institute for Information Technology)
    • BITビジネスイノベーションテクノロジー研究所 (Business, Innovation and Technology -tutkimuskeskus BIT)
  • アールト大学電気工学部 (Aalto-yliopiston sähkötekniikan korkeakoulu, Aalto University School of Electrical Engineering, Aalto ELEC)
    • オートメーションシステム工学科 (Automaatio- ja systeemitekniikan laitos, Department of Automation and Systems Technology)
    • 電子工学科 (Elektroniikan laitos, Department of Electronics)
    • マイクロ・ナノテクノロジー学科 (Mikro- ja nanotekniikan laitos, Department of Micro and Nanosciences)
    • ラジオ科学工学科 (Radiotieteen ja -tekniikan laitos, Department of Radio Science and Engineering)
    • 信号処理音響学科 (Signaalinkäsittelyn ja akustiikan laitos, Department of Signal Processing and Acoustics)
    • 電気工学科 (Sähkötekniikan laitos, Department of Electrical Engineering)
    • 通信ネットワーク学科 (Tietoliikenne- ja tietoverkkotekniikan laitos, Department of Communications and Networking)
    • Metsähoviラジオ観測所 (Metsähovin radiotutkimusasema, Metsähovi Radio Observatory)
    • Micronovaマイクロ・ナノテクノロジー研究所 (Mikro- ja nanoteknologian keskus Micronova, Micronova, Centre for Micro and Nanotechnology)
  • アールト大学芸術デザイン建築学部 (Aalto-yliopiston taiteiden ja suunnittelun korkeakoulu, Aalto University School of Arts, Design and Architecture, Aalto ARTS)
    • デザイン学科 (Muotoilun laitos, Department of Design)
    • 建築学科 (Arkkitehtuurin laitos, Department of Architecture)
    • 舞台美術映像制作学科 (Elokuvataiteen ja lavastustaiteen laitos, Department of Film, Television and Scenography)
    • メディア学科 (Median laitos, Department of Media)
    • 芸術学科 (Taiteen laitos, Department of Art)
  • アールト企業家センター (Aalto Center for Entrepreneurship)
    • アールトベンチャーガレージ (Aalto Venture Garage)
  • アールト大学図書館 (Aalto-yliopiston kirjasto, Aalto University Library)
  • アールト大学職能開発 (Aalto University Professional Development)
  • ファクトリー (Factories, 学際的な共同体)
    • デザインファクトリー (Design Factory)
    • メディアファクトリー (Media Factory)
    • サービスファクトリー (Service Factory)
  • ヘルシンキ物理学研究所 (Fysiikan tutkimuslaitos, Helsinki Institute of Physics)

脚注[編集]

外部リンク[編集]