にがり

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にがり(苦汁、滷汁)とは、海水からとれる塩化マグネシウムを主成分とする食品添加物。海水からを作る際にできる余剰なミネラル分を多く含む粉末または液体であり、主に伝統的製法において、豆乳豆腐に変える凝固剤として使用される。

概要[編集]

海水に含まれている塩類は、塩化ナトリウムが大部分を占める。海水から食塩を生成する場合、塩化ナトリウムが先に結晶化するので、これをかき集めるなどして物理的に取り除いたのちに残る液体が苦汁である。にがりの成分は、塩化マグネシウムが中心である。ほかにナトリウムカリウムを含む。味は、主にマグネシウムイオンにより、文字通り苦い。

組成[編集]

イオン交換膜によって得られる物の1リットルあたりの大まかな組成は、以下のとおりである[1]

  • 比重 1.264(30℃)
  • 塩化マグネシウム 188.4g
  • 塩化カリウム 56.4g
  • 食塩 74.7g
  • 塩化カルシウム 64.5g
  • 臭素 10.6g
  • 硫酸マグネシウム 微量

用途[編集]

食品[編集]

食品衛生法では、にがりは「粗製海水塩化マグネシウム」という名称で既存添加物名簿に収載されている。法律では食品に添加物を使用した際は基本的に名簿にある物質名で表記をすることになっているが、粗製海水マグネシウムは豆腐の凝固剤として使用した場合のみ「にがり」と表記してもよいことになっている。豆腐を凝固させる場合、他にも焼石膏グルコノデルタラクトンなども凝固剤として使用されているが、にがりを用いる方がしっかりとした豆腐ができやすい[独自研究?]

にがりは、煮物料理のアク取りに使われる。

その他[編集]

硫酸マグネシウム塩化カリウム、臭素等の原料とされる[2][1]

製法[編集]

天日採塩法で塩を得る場合、完全に水分を蒸発させると出来上がった塩にマグネシウム分が多く残って苦味が出てしまう。塩化マグネシウムは塩化ナトリウムより溶解度が高いので、塩化ナトリウムが析出した後で、かつマグネシウム分がすべて結晶化してしまう前のタイミングで塩を収穫する。収穫した塩は湿っているので、これを高床にした小屋に運び込むとマグネシウム分に富んだ水分がにがりとして床下にしたたり落ちる[3]。日本では1972年にイオン交換膜法による製塩に切り替わるまで煎熬採塩法が広く行われていたが、この場合は鹹水を煮詰めて析出した塩を採った残りの液体としてにがりが得られる[4]。なお、出来上がった塩にもマグネシウム分が含まれているので、これをカマスなどに詰めて置いておくとにがりがしたたり落ちてくる[5](塩化マグネシウムは塩化ナトリウムよりも水への溶解度が高く、潮解性があるので、吸湿して溶け出してくる)。にがり成分をしたたり出させる工程を「枯らし」といい[3][5]、塩を2年、3年など長期間に渡って枯らした塩は珍重された[5]

今日では伝統的製法を謳う食塩でも「枯らし」を行うものはほとんど無い。多くの製品は海水を加熱して煮詰めることで結晶化させ、遠心分離でにがり分を除去している。現在のにがりは、煮詰めて塩の結晶を除いた残りの液体と、遠心分離機で分離される液体を混ぜ、濃度を調整して製造するものが多い[要出典]

海水加熱法では硫酸イオンが残り、カルシウム硫酸カルシウムとして凝固してしまう。この場合のにがりの成分は、マグネシウム、ナトリウム、カリウムの順の陽イオン含有量となる。イオン交換膜法では、硫酸イオンが除去され、カルシウムイオンが残留する[要出典]。にがりの成分は、製法やメーカーで大きく異なる実態がある[6]

健康問題[編集]

2004年5月30日に放映された発掘!あるある大事典で「にがりダイエット」が放映されてから、日本ではにがりはダイエット効果のあるものとして話題になっていたが、科学的根拠は明確でなく、飲み過ぎると下痢やミネラルの吸収阻害、高マグネシウム血症などの悪影響が出る場合があり[7]、過剰摂取は大変危険である。実際に、2004年に神奈川県の知的障害者入居施設で、職員が誤ってにがりの原液400mlを飲ませたところ血管が詰まり、女性入所者が死亡する事件が起きた。[8][9]

海水を濃縮した本にがりの液は大変苦く、そのまま一滴なめるだけでも苦痛で吐き気を生じることもあるので注意すること。にがりを飲用したい場合、水やジュース、味噌汁などに100ミリリットル当たり一滴程度であればほとんどにがりの味は感じない[独自研究?]。なお、「第6次改定日本人の栄養所要量について」によると、マグネシウムの所要量は約320mg/日、マグネシウムの許容上限摂取量は約700mg/日、である[10]

参考文献[編集]

  1. ^ a b 小松勝, 西川周, 小島茂樹、「ブロムを中心とした「にがり工業」の現状と将来」『日本海水学会誌』 1980年 34巻 4号 p.217-232, doi:10.11457/swsj1965.34.217, 日本海水学会
  2. ^ “Production of pure potassium salts directly from sea bittern employing tartaric acid as a benign and recyclable K+ precipitant”. RSC Advances (65). (12 August 2014). doi:10.1039/C4RA04360J. http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2014/RA/C4RA04360J#!divAbstract 2015年11月4日閲覧。. 
  3. ^ a b 「カンホアの塩」の天日製法 - 2:結晶、収穫、石臼挽き(Step 4~7)”. カンホアの塩. 2021年1月3日閲覧。
  4. ^ にがり”. 珠洲製塩. 2021年1月3日閲覧。
  5. ^ a b c 誤解していませんか、塩のこと”. 伯方塩業. 2021年1月3日閲覧。
  6. ^ “にがり”の成分や表示等についてテストしました(大阪府消費生活センター)
  7. ^ 構築グループ「「にがり」と「痩身効果」について」。独立行政法人 国立健康・栄養研究所。2004年10月13日。
  8. ^ 朝日新聞 2004.03.30 朝刊 社会 39頁 「 にがり原液、飲まされ危篤 神奈川県立障害者施設 」
  9. ^ 朝日新聞 2004.04.19 朝刊 社会 34頁 「 にがり原液飲み、危篤の女性死亡 神奈川・障害者施設 」
  10. ^ 第6次改定日本人の栄養所要量について

関連項目[編集]

外部リンク[編集]