にがり

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にがり(苦汁、滷汁)とは、海水からとれる塩化マグネシウムを主成分とする食品添加物。海水からを作る際にできる余剰なミネラル分を多く含む粉末または液体であり、主に伝統的製法において、豆乳豆腐に変える凝固剤として使用される。

概要[編集]

海水に含まれている塩類は、塩化ナトリウムが大部分を占める。海水から食塩を生成する場合、塩化ナトリウムが先に結晶化するので、これをかき集めるなどして物理的に取り除いた後に残る液体が苦汁である。苦汁の成分は、塩化マグネシウムが中心である。ほかにナトリウムカリウムを含む。味は、主にマグネシウムイオンにより、文字通り苦い。代表的な製法である海水加熱法では後述するようににがりにカルシウムはほとんど含まれない。

歴史[編集]

日本では、古くは1654年中国より隠元隆琦が日本に製法を伝えたとされ、江戸時代にはすでに苦汁を専門的に扱う商売があった。中でも、あさき屋(現、吉川商事)などは、現在まで続く苦汁業の老舗として有名である。

用途[編集]

食品衛生法では、にがりは「粗製海水塩化マグネシウム」という名称で既存添加物名簿に収載されている。法律では食品に添加物を使用した際は基本的に名簿にある物質名で表記をすることになっているが、粗製海水マグネシウムは豆腐の凝固剤として使用した場合のみ「にがり」と表記してもよいことになっている。豆腐を凝固させる場合、他にも焼石膏グルコノデルタラクトンなども凝固剤として使用されているが、にがりを用いる方がしっかりとした豆腐ができやすい。

にがりは、他にも煮物料理のアク取りにも使われる。

また、2004年5月30日に放映された発掘!あるある大事典で「にがりダイエット」が放映されてから、日本ではにがりはダイエット効果のあるものとして話題になっていたが、科学的根拠は明確でなく、飲み過ぎると下痢やミネラルの吸収阻害、高マグネシウム血症などの悪影響が出る場合があり[1]、過剰摂取は大変危険である。実際に、2004年に神奈川県の知的障害者更生施設で、職員が誤ってにがりの原液400mlを飲ませたところ血管が詰まり、女性入所者が死亡する事件が起きた。[2][3]

なお、「第6次改定日本人の栄養所要量について」によると、マグネシウムの所要量は約320mg/日、マグネシウムの許容上限摂取量は約700mg/日、である[4]

製法[編集]

江戸時代以降、次の方法でにがりを得た。海水から得られた塩をカマスに詰め、縁の下ですのこに載せて夏の間寝かしておくと、湿気の多い季節のため、塩の中に含まれる塩化マグネシウムなどが空気中の水分を吸って潮解する。さらに吸湿がすすむと、液体としてしたたり出てくるものがにがりである。このにがり成分をしたたり出させる工程を「枯らし」という。よく枯らした食塩は、味がまろやかになり、「甘塩」として高価で取引されたという。

今日では伝統的製法を謳う食塩でも「枯らし」を行うものはほとんど無い。多くの製品は海水を加熱して煮詰めることで結晶化させ、遠心分離でにがり分を除去している。現在のにがりは、煮詰めて塩の結晶を除いた残りの液体と、遠心分離機で分離される液体を混ぜ、濃度を調整して製造するものが多い。

海水加熱法では硫酸イオンが残り、カルシウム硫酸カルシウムとして凝固してしまう。この場合のにがりの成分は、マグネシウム、ナトリウム、カリウムの順の陽イオン含有量となる。イオン交換膜法では、硫酸イオンが除去され、カルシウムイオンが残留する。にがりの成分は、製法やメーカーで大きく異なる実態がある[5]

参考文献[編集]

  1. ^ 構築グループ「「にがり」と「痩身効果」について」。独立行政法人 国立健康・栄養研究所。2004年10月13日。
  2. ^ 朝日新聞 2004.03.30 朝刊 社会 39頁 「 にがり原液、飲まされ危篤 神奈川県立障害者施設 」
  3. ^ 朝日新聞 2004.04.19 朝刊 社会 34頁 「 にがり原液飲み、危篤の女性死亡 神奈川・障害者施設 」
  4. ^ 第6次改定日本人の栄養所要量について
  5. ^ “にがり”の成分や表示等についてテストしました(大阪府消費生活センター)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]