頭髪検査

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頭髪検査(とうはつけんさ)とは、校則で髪型について決めている学校で行われる頭髪検査[1]

日本における校則と頭髪検査

日本では特に1980年年代になって校内暴力やいじめの急増があったが、前後してそれらとは関係なく、中学校や高等学校などで髪型などの画一的な規制が行われるようになった[1]。制服や髪形などの画一的な規制に対しては、規制の効果と必要性という規制の効用(効用論)についての議論とその規制の実施を学校の裁量としてどの程度認めるかという裁量(裁量論)に関して議論がある[1]

検査方法

生徒の頭髪及び身体に触れる可能性があるということから基本的に男子の検査は男性の教員によって行われ、女子の検査は女性の教員によって行われる。登校時に教諭が立ち番を行い、頭髪に問題のある生徒をいったん帰宅させ、直させる、という指導を行う学校もある[2]

髪色の検査においては、比較して色合いを確認できる色見本が検査用に市販されており[3]、特定の色見本より髪が黒いことを検査時の基準として示す学校もある[4]

処分

校則に適合する状態になるよう、校内で強制措置が行われる場合もある。1989年には愛知県の高校で、頭髪検査後、猶予期間を設けずにその場で教諭が生徒の髪を切った事例が問題となり[5]、法務局が介入し同校での頭髪検査はしばらく見合わせられた[6]。2005年には長崎県で、生徒の髪を切った教諭を親が呼び出し、暴行を加えた例がある[7]

2008年には、奈良県の中学校で生徒が脱色した頭髪を生徒自身の同意のもとに教諭が校内で黒に染め直した措置が体罰にあたるとして、損害賠償を求める訴訟が大阪地裁で起こされたが、地裁・高裁とも学校の措置を妥当とし、最高裁は上告を棄却した[8][9]。2012年には髪の長さが長すぎるとして、校内で生徒自らにはさみで髪を切らせた例が報じられた[10]

頭髪をめぐる校則に関しては、2017年に大阪の府立高校の生徒が生まれつき髪が茶色なのに黒く染めるよう強要され不登校になったとして、府に対して慰謝料など計約220万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしている[11]

2019年3月、千葉県の県立高校で生徒指導の教諭らが生徒にごみ袋をかぶせて黒染めスプレーを吹きかけていた行為について、千葉県弁護士会は体罰に準ずる行為にあたるとして千葉県教育委員会や学校に警告書を出している[12]

中国における校則と頭髪検査

華商報の2009年の報道によると、西安市の高校で女子生徒はポニーテールにしなければならず、前髪を垂らす際には、眉毛が隠れない長さに切り揃えなければならないという校則が存在している[13]

また、四川省資陽市の中学校でフリンジや染髪、パーマなど15種類の髪型を校則で禁止している[14]

韓国における校則と頭髪検査

韓国では染髪、パーマ、髪の長さ、ヘアジェルやムースの禁止[15]などを指定している学校がある[16]

中学生、高校生の頭髪については、1960年代から過度な規制が行われていると問題視されており、1980年代に服装の自由化と同時に頭髪の自由化も実施されたが、依然としてヘアスタイルや長髪についての規定は存在していた[17]

2018年9月末、ソウル市のチョ・ヒヨン教育監が髪型は「生徒個人の自由」としてソウル市内の学校での髪型自由化を宣言した[16]。チョ・ヒヨン教育監の髪型自由化宣言に対し9月30日に全国の父兄団体連合は反対する声明を発表した[16]

2020年8月、国家人権委員会は全校生徒の頭髪をスポーツ刈りのみとした大邱市内の私立男子高校に対し、頭髪の規定を改正するように勧告している[18]

タイにおける校則と頭髪検査

タイでは中学生、高校生のヘアスタイルに対し、教育省がパーマは不可などの原則を定めており、各校が校則として髪の長さなど詳細を定めている[19]

1972年には公立学校の全ての男子生徒の髪の長さは5cm以内、女子生徒は首より長くなってはいけないと定められていた。1975年には教育省がこの規則を撤回し、長髪を可能と通達する[20]。2013年には、改めて同省が長髪可能と通達し、2020年5月と7月にも同省が再通達したにも関わらず、髪を刈る教師が後を絶たず、SNSを通じ発足した高校生グループ「Bad Student」には、髪を刈られた写真や映像が約300件ほど寄せられている。「Bad Student」は、髪型に関する校則の撤廃を求めて署名を集め、同省に対して提訴にも踏み切っている。この運動がタイ国内で話題になると2020年8月20日に同省は、学校が細かい校則を定めるという内容を取り消すように通達を行った。

ベトナムにおける校則と頭髪検査

ベトナム国内のいくつかの大学では、学校の風紀を守るためという理由で染髪禁止や清潔感のある髪型にしなければならないと定められている[21]

シンガポールにおける校則と頭髪検査

シンガポールの公立学校では、ヘアスタイルや長髪についての規定が存在している。注意されても髪型が改善していない場合には、他の生徒の前で散髪が行われる[22]

その他の頭髪検査

ここまでに挙げた検査とは趣旨が異なるが、頭髪にシラミがいないかを確認する検査が行われることがある。シラミ検出を目的とした検査は、実施時期も他の検査とは異なる。日本ではプール授業の始まる直前の時期にあたる6月に実施されることが多く、感染報告のピークも6月となっている[23]。このほか、地域でシラミ流行が確認された際に臨時に実施されたり、健康診断と同時に行われたりする場合もある。

脚注

  1. ^ a b c 若松養亮、杉田明宏. “中学・高校生の校則・検査・体罰に関する態度の研究”. 東北教育心理学研究. 2018年12月27日閲覧。
  2. ^ 3ゼロ運動の生徒指導
  3. ^ 社会人の頭髪検査!? 茶髪「色見本」導入続々 就職活動・明るすぎは「アウト」 企業や役所・「ふさわしさ」数値化
  4. ^ 追高通信』12月号、北海道追分高等学校教務部、2016年11月28日。
  5. ^ 『朝日新聞』1989年11月18日付夕刊13面。
  6. ^ 『朝日新聞』1989年12月1日付朝刊23面。
  7. ^ 『朝日新聞』2005年4月21日付朝刊27面(長崎)。
  8. ^ 「公立中学校の教員らが女子生徒の頭髪を黒色に染色した行為が体罰にあたるとして訴えられたケース」『季刊教育法』第177号、エイデル研究所、2013年、6-7ページ。
  9. ^ 瀬戸則夫「市立中染髪指導国賠訴訟事件判例解説」『季刊教育法』第177号、エイデル研究所、2013年、44-48ページ。
  10. ^ 『長崎新聞』2012年8月8日付27面。
  11. ^ 地毛茶色なのに「黒髪強要」で不登校…修学旅行も「参加認めない」大阪府立高の女子生徒が提訴”. 産経WEST. 2018年12月27日閲覧。
  12. ^ ごみ袋かぶせ髪に黒染めスプレー 千葉県立高に弁護士会警告 共同通信、2020年11月6日閲覧。
  13. ^ 中国各地の「驚くべき校則」一挙掲載 (2)--人民網日本語版--人民日報”. j.people.com.cn. 2021年1月11日閲覧。
  14. ^ 中国四川省の中学校、校則で15種類の髪型を禁止に=中国メディア (2019年12月6日)”. エキサイトニュース. 2021年1月11日閲覧。
  15. ^ 知りたい!韓国の中学校の服装に関する校則 - True Vine”. hanna.main.jp. 2021年1月11日閲覧。
  16. ^ a b c ソウル市が学生の髪型自由化を宣言で大激論。学生の髪色・髪型への同調圧力は日韓共通!?”. ハーバービジネスオンライン(扶桑社). 2018年12月27日閲覧。
  17. ^ 第569話 頭髪の自由化、全国でようやく進むか”. world.kbs.co.kr. 2021年1月11日閲覧。
  18. ^ 第569話 頭髪の自由化、全国でようやく進むか”. world.kbs.co.kr. 2021年1月11日閲覧。
  19. ^ 髪形違反にバリカン、教師にひれ伏し…タイ権威教育に高校生が反旗 |【西日本新聞ニュース】”. www.nishinippon.co.jp. 2021年1月11日閲覧。
  20. ^ 髪型規制に揺れるタイの公立学校”. dotworld|ドットワールド|現地から見た「世界の姿」を知るニュースサイト (2020年7月13日). 2021年1月11日閲覧。
  21. ^ 大学でジーンズ着用は風紀を乱す?校則に学生が猛反発[社会]”. VIETJOベトナムニュース. 2021年1月11日閲覧。
  22. ^ 「マイナス18℃以上であれば外で遊ぶ」世界のビックリ校則 - ニュース|BOOKSTAND”. BOOKSTAND. 2021年1月11日閲覧。
  23. ^ 『朝日新聞』2001年(平成13年)6月27日付東京本社朝刊25面。

関連項目