音響監督
音響監督(おんきょうかんとく)とは、主にアニメーションやゲームなどの作品において音声面の演出を行うスタッフのこと。便宜上、外画と総称する外国語映画、海外ドラマ、海外アニメーション等の日本語吹き替え版の演出家についても本記事で言及する。別名で「録音監督」「音響演出」と呼ばれる。
日本独自の職種であり、アメリカでは似たような役職に「サウンドスーパーバイザー」「ミュージックスーパーバイザー」などがある。
音響監督の始まり
虫プロダクションがテレビアニメ『鉄腕アトム』を開始した際、過密スケジュールにより音響演出が時間的に不可能だったため内部に音響演出スタッフを別に置いたのが始まりとされる[1]。
その後の虫プロ系や、人材的に虫プロの系譜を汲む制作会社の中にはアフレコなどを完全に音響監督に任せ、アニメ側の演出家が全く立ち会わないこともあった。それ以外では監督、演出家、ときには脚本家、原作者も立ち会うのが一般的となっている。
仕事内容
アニメーションの場合
まず原作者、プロデューサー、監督と相談し、適宜オーディションを行いながら声優のキャスティングを行う。脇役については音響監督にある程度の権限があるため[2]、才能を見込んだ若手声優を番組レギュラーに起用して育てるといったこともある。
レコーディングの際は、BGMをどのタイミングで流すか、あるいはどんな効果音を使うかなど作品が盛り上がるよう音響を演出し、必要に応じて声優に対し演技指導を行うこともある[3]。この演出作業は音響監督だけでなく、アニメの監督や演出家・音響効果[4]と話し合いながら共同で行うことが多い。
また音響制作費の予算管理も行い、制作会社から提示された金額で録音スタジオ使用料、音楽・効果音の制作費などを管理する。
東映アニメーションの場合は「キャスティング (演技事務)」「選曲」に分かれ、各話絵コンテ・演出担当者が音響監督も兼ねるのが通例である[5]。そのため、シリーズとしての統一感をもたらすためミキサーが各話演出に助言して、事実上ミキサーが音響監督的な役割を果たしている[6]。なお、2014年からは東映アニメーションでも音響監督を取り扱うようになった。
一部のアニメーション監督は、自ら音響監督若しくはアフレコ演出も兼任する場合がある。また音響監督の仕事のうち収録の際に声優への演技指導のみを行う、アフレコ演出も存在する。[7]。
外画吹き替えの場合
前述の通り外画の日本語吹き替え版制作において、アニメーションの音響監督に相当するスタッフは演出である。現場などではディレクターと呼ぶことも多い。
まず翻訳家が訳した原本の誤訳チェックや場面に応じて適当な表現に直すなどの作業を行い、翻訳家等のスタッフとともに台本を完成させる。
収録時にはアニメーションと同じく演技指導を行う。収録後は音響効果らスタッフと共に日本語の台詞と原音の音楽と効果音を合わせるダビング作業をし、その後場面に応じたエフェクトをつける作業を行う。例えば電話の声やスピーカーから流れる声ならそれらしくエフェクトをかけるといった具合である。
外画吹き替えの場合、一般的にはオーディションを行わず演出と日本語版制作会社やテレビ局などのプロデューサーが相談のうえでキャスティングを決定する場合が多い。
音響監督のキャリア
音響監督のキャリアはさまざまであるが、先輩に弟子入りしアシスタントを経て昇進・独立するか、アフレコ現場での経験を数多く積み舞台演出の経験も持つ声優が音響監督に進出することが多い(特にスタジオディーン作品では声優の起用が多く見受けられる)。
音響監督・アニメ制作会社と声優・声優プロダクションなどの間には人脈が形成されやすく、音響監督によっては過去作品の実績から特定の声優を起用しがちな傾向がある。ただし監督・プロデューサー・原作者や製作委員会の意向である場合もあり、すべてがそうであるとは限らない。
主な演出・音響監督
外画吹き替えの演出を中心に手がけるスタッフ、アニメーション等の音響監督を中心に手がけるスタッフ、および両方に携わるスタッフがいるが区別していない。なお、特に外画吹き替えの演出家に関しては網羅できていない。
- 明田川進
- 明田川仁 ※親子二代で音響監督業を務める
- 飯田里樹
- 飯塚康一
- 井澤基
- 岩浪美和
- 浦上慶子
- 蝦名恭範 (えびなやすのり)
- 大熊昭
- 大森貴弘 ※本業は演出・監督業だが、音響演出を担当もしくは兼任することがある。
- 鍛治谷功
- 加藤敏
- 亀山俊樹
- 菊田浩巳
- 木村絵理子
- 小泉紀介
- 小林克良
- 佐藤順一
- 斯波重治
- 嶋澤みどり
- 清水勝則
- 高桑一
- 高寺たけし (高寺雄)
- 高橋剛
- 高橋秀雄
- 田島荘三
- たなかかずや (田中一也)
- 田中章喜
- 田中英行
- 鶴岡陽太
- 長崎行男
- なかのとおる (中野徹)
- はたしょう二
- ハマノカズゾウ
- 早瀬博雪
- 原口昇
- 平光琢也
- 藤野貞義
- 藤山房伸 (藤山房延)
- 本田保則
- 水本完
- 三間雅文
- 三好慶一郎
- 向山宏志
- 本山哲
- 百瀬慶一
- 山田知明 (山田智明)
- 山田陽
- 吉田知弘
- 四辻たかお ※本業は演出・監督業だが、国際映画社の作品では音響監督も担当することもあった。
- 若林和弘 (林和弘)
- 渡辺淳
- 浅梨なおこ
- 市来満
- 浦上靖之
- 榎本崇宏
- 太田克己
- 甲斐樹美子
- 春日正伸
- 春日一伸 ※親子二代で外画吹き替えの演出に携わる
- 神尾千春
- 小松亘弘
- 佐藤敏夫
- 清水洋史
- 鈴木祐子
- 滝沢おさむ
- 伊達康将 (伊達渉)
- 土屋雅紀
- 壺井正
- 福永莞爾
- 藤田亜紀子
- 松岡裕紀
- 松川陸
- 八瑞宮瑞穂
- 蕨南勝之
声優兼業者
- 井上和彦
- カシワクラツトム※現在音響監督業を始める以前から演じていた作品(『ちびまる子ちゃん』など)以外はほとんど出演していない
- 肝付兼太
- 郷田ほづみ
- 塩屋翼
- 四反田マイケル(天田真人)
- 関優子(宮村優子)
- 千葉繁
- 辻谷耕史
- 中嶋聡彦
- 西村朋紘
- 藤原啓治
- 三ツ矢雄二 ※アフレコ演出
故人
- あずさ欣平 ※声優も兼業
- 浦上靖夫 ※浦上慶子・浦上靖之の実父
- 左近允洋
- 高桑慎一郎 ※高桑一の実父
- 田代敦己
- 千葉耕市 ※声優も兼業
- 長浜忠夫 ※本業は演出・監督業
- 松浦典良
- 水鳥鐵夫 ※声優も兼業
- 山崎あきら
- 山田悦司 ※山田知明(山田智明)の実父
日本人以外の人物
アメリカ
- チャーリー・アドラー
- デヴィッド・ウォルシュ
- リチャード・エプカー
- クリスティーヌ・オートン
- トニー・オリバー
- リア・クラーク
- スティーブ・クレイマー
- 坂本佳栄子
- ステファニー・シェー
- エリック・P・シャーマン
- マイケル・シンターニクラス
- ダグ・ストーン
- カーク・ソーントン
- マイケル・ソリッチ
- ウォーリー・バー
- マーク・ハンドラー
- ピーター・フェルナンデス
- クリスピン・フリーマン
- スーザン・ブルー(カナダでも活動)
- スコット・ページ=パグター
- メアリー・エリザベス・マクグリン
- マイケル・マコノヒー
- カール・メイセック
- モニカ・ライアル
- レックス・ラング
- ウェンディー・リー
- サム・リーゲル
- アンドレア・ロマーノ
- エズラ・ワイズ
- トム・ワイナー
カナダ
- マイケル・ドノヴァン(アメリカでも活動)
- ダグ・パーカー