郵便認証司

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郵便認証司(ゆうびんにんしょうし)とは、内容証明特別送達とする書留郵便物の認証業務を行うために必要となる国家資格である。

概要

2007年10月1日に実施された郵政民営化により、従来は「公務員」であった郵便職員がすべて会社員になった。しかし、内容証明・特別送達郵便物の認証はそれぞれ法律によって公務員のみに限られていたことから、従来からの信用性を確保するため、「郵便認証司」という国家資格を新たに設けることとなった。なお、この資格の所持者と内容証明、特別送達の配達担当者には、みなし公務員規定がある。

郵便法第58条各号により、内容証明の取扱いに係る認証[1]をすること及び特別送達の取扱いに係る認証[2]をすることを職務とする。

郵便認証司は、郵便法第59条の規定により、認証事務に関し必要な知識及び能力を有する日本郵便株式会社の使用人の中から、日本郵便の推薦に基づいて総務大臣が任命する。任命された者は社員証に赤色の文字で「郵便認証司」と記載された金色のステッカーが貼り付けされる。推薦に際して、試験などは実施されず、経歴・研修の受講歴などから推薦者名簿に登載される。実際には業務に必要とされる社員に対して、日本郵便の各郵便局による判断で必要に応じて推薦者名簿に登載される。推薦対象者は、日本郵便の郵便局長、民営化以前の特定郵便局長、普通郵便局長、郵便部長、集配部長、総括課長、課長、課長代理、主任や一般社員などであるとされる。契約社員は含まれない。また、同法第60条に欠格条項があり、次に該当する者は郵便認証司になることができず、現になっている者が次に該当すれば、同法第61条の規定により失職する。

  1. 成年被後見人又は被保佐人
  2. 郵便法、郵便切手類販売所等に関する法律、簡易郵便局法、お年玉付郵便葉書等に関する法律、郵便物運送委託法、郵便切手類模造等取締法又は民間事業者による信書の送達に関する法律に違反し、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
  4. 国家公務員法又は地方公務員法の規定により懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
  5. 第66条(監督命令違反のほか、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った)の規定により懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者

認証に於いて、窓口で引受の取り扱いを行う社員が認証司であっても、自分で認証することはできない。必ず、他の認証司の資格を持つ社員に認証されないと、その内容証明は確定日付がある証書とならず、債権譲渡の際の第三者対抗要件を具備できなくなる。また、課長職以上の管理者は郵便認証司の資格を保持していても認証業務を行なうことは原則として皆無である。これは、課長代理職以下の認証業務の確認の際に職印を押印する必要があり書類上の重複を避けるためである。

この資格を設ける際、名称をめぐって当時の竹中平蔵郵政民営化担当大臣と、麻生太郎総務大臣の両者が対立した。竹中が率いる郵政民営化準備室は「郵便認証士」にする方向で準備を進めてきたのに対し、麻生は特定郵便局長らに配慮して「郵便司」にするよう提案した。その後、両者の案をどちらも取り入れた「郵便認証司」となった。

郵便法施行規則別記様式第一による印章

取扱いの誤りについて

民営化直後の2007年10月24日、郵便事業は多数の認証すべき郵便物において取扱いの誤りがあったことを公表した。このことに関し、総務省より善後策を講ずることおよび再発防止の対策を取るよう指導された。

内容証明においては、証明文の漏れ・認証司の印章漏れ(私印を用いた等)・保管用謄本への認証司の署名又は記名押印の漏れ、特別送達においては、送達報告書への認証文の記載漏れ・認証司の所属事業所の記載誤りなどがあった[3]

脚注

  1. ^ 総務省令で定めるところにより、当該取扱いをする郵便物の内容である文書の内容を証明するために必要な手続が適正に行われたことを確認し、当該郵便物の内容である文書に当該郵便物が差し出された年月日を記載することをいう。
  2. ^ 総務省令で定めるところにより、当該取扱いをする郵便物が民事訴訟法に定める方法により適正に送達されたこと及びその送達に関する事項が書面に適正に記載されていることを確認し、その旨を当該書面に記載し、これに署名し、又は記名押印することをいう。
  3. ^ 内容証明等の郵便物に関する取扱いの誤りについて 郵便事業プレスリリースより。