諸磯の隆起海岸
諸磯の隆起海岸(もろいそのりゅうきかいがん)は、神奈川県三浦市にある隆起海岸。
過去に起きた地震の証拠が集中して存在していて貴重なため、1928年3月24日に国の天然記念物に指定された[1]。
地形
諸磯の隆起海岸は神奈川県の三浦半島に位置している。
地質
三浦半島の地層は上位から相模層群・三浦層群・葉山層群で構成されている。三浦層群は岩相の違いから地域ごとに三崎層・初声層・逗子層・池子層と呼ばれており、諸磯の隆起海岸周辺は三崎層が多く分布している。三崎層は約1200万年前から450万年前までの間に、水深2000メートルから3000メートルの深海に堆積した地層のことである。この層は主に泥岩層と凝灰質砂岩層、凝灰岩層からなる。
地震の証拠
諸磯の隆起海岸に存在する地震の証拠として、穿孔貝(せんこうがい)による無数の小穴が挙げられる。穿孔貝は波打ち際の地面や岩石に穴をあけて生息する二枚貝で、諸磯の隆起海岸にはこの小穴により4段の層が形成され、過去に4回の地震が起きたことが推測できる。地震学者の今村明恒によると過去3回までの地震は、それぞれ大正12年(1923年)の関東大震災、元禄16年(1703年)の大地震、弘仁9年(818年)の大地震であることが判明した。隆起の原因となった最古の地震を今村は西暦33年に起きたと解釈しているが、日本地震学会が確認している日本最古の地震は允恭天皇5年7月14日[2](416年8月23日)に遠飛鳥宮付近で起きたものである。
穿孔貝
穿孔貝は波打ち際の岩石等に穴をあけて生息し、他の貝の殻に穴をあけて餌としている二枚貝である。穿孔貝の種類としては、スズガイ、ニオガイ、カモメガイ、イシマテガイなどがある。
地震
現在確認されている、諸磯の隆起海岸を形成したとされる地震は以下の通りである。
年月日 | 元号 | 震央 | M |
---|---|---|---|
818年 | 弘仁 | 9年関東諸国 | 7.5 |
1703年12月31日 | 元禄16年 | 伊豆東方沖 | 7.9–8.2 |
1923年 | 9月 1日大正12年 | 相模湾中央(関東大震災) | 7.9 |
位置情報
周辺
- 二町谷の漣痕 - 近隣に所在する神奈川県指定の天然記念物
- 海外町のスランプ構造
脚注
- ^ 文化庁「文化遺産オンライン」
- ^ 日本書紀による。
参考文献
- 奥村清『新版神奈川県地学のガイド』コロナ社、2003年。101-113頁
- 貝塚爽平ほか編『日本の地形4 関東・伊豆小笠原』財団法人東京大学出版会、2000年。136-149頁
- 鈴木尉元「今村明恒の地震学」『地球科学』59巻、2005年。329-334頁
- 日本の地質編集委員会編『日本の地質3 関東地方』共立出版株式会社、1986年。88-90頁
- 羽部忠重『原色日本貝類図鑑』保育社、1961年。
関連項目
外部リンク
- 諸磯の隆起海岸 - 国指定文化財等データベース(文化庁)
- 社団法人日本地震学会
- 三浦市観光案内
座標: 北緯35度9分5.0秒 東経139度37分23.0秒 / 北緯35.151389度 東経139.623056度