萌え絵

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萌え絵の手法で表現されたウィキペたん。メイド服を着ている。

萌え絵(もええ)とは、日本の漫画アニメゲームなどに特有ののことである[1]。「見る者に『萌え』を感じさせる絵」などと説明される[2]

萌え絵の対象となるのは、おおよそ10代の少女である[1]。特徴としては、顔の大きさに対して目が大きいこと、口が小さいことが挙げられる[1]メイド服などの付加的な萌え属性が加わる場合もある[1]

書籍『現代視覚文化研究』に記事を寄せたライターの有村悠によれば、1990年代のイラストでは影やハイライトを多く描き込むことにより、疑似的に立体感を持たせた作品が主流であった[3]。しかし、2000年代初頭の萌え絵は影を減らすなどより簡素な絵柄へと変貌し、光を意識して立体的に見せる手法が用いられるようになったと分析している[3]。そのような新しい絵柄が生まれた当時、彩色方法は様々であったが、描画用のソフトウェアやツールの技術向上に伴い、フルデジタルの制作環境でアナログ的な描画表現を再現した作品が多く現れるようになったとも解説している[3]。一方、安斎昌幸によれば、萌え絵には共通のセオリーが存在するものの、単なる過去のイラストの焼き直しでは流行せず、常に新たな要素を取り込むことが必要とされるという[4]。こうした萌え絵の流行の変化は、コミックマーケットで見ることができる[4]初音ミクの成功の理由は、萌え絵のセオリーを踏まえたことにあるとする説もある[4][注釈 1]

萌え絵は健全からアダルトまで用いられるが、絵柄的な問題点も挙げられている。萌え絵は企業や地域のマスコットキャラクターやメディアに起用されることもあるが、不適切な場面で一定の要素(子供の目に触れる場面で不適切な身体パーツ、ポーズ、表情、服装などが取り入れられているなど)が含まれると駅乃みちか碧志摩メグキズナアイなどのように一部から批判をされる可能性があるため、状況に応じて絵柄的な配慮や起用キャラクターの選別が必要とされる[7][8][9]

また、2018年10月30日に放送された情報番組「スッキリ」では「萌え絵」化する絵本について触れられ、「萌え絵」から的なイメージを連想し、抵抗感を持つ人もいるのではないかとも紹介された[10]。絵本の出版元である河出書房新社は問い合わせに対して「子ども自身が飛びつく絵を」と発注しており、「萌え絵を描いてください」と依頼していないと回答している[11]。児童文学評論家の赤木かん子さんは絵本・児童書の「萌え絵」論争について「子どもの中には『好きな萌え絵』と『イヤな萌え絵』の区別が歴然とある」と語り、「萌え絵の違いを理解できず、男性向けアニメの絵柄と、そうでないものを一緒くたにしているのだと思います」と反論している。[12]

なお、萌え絵を書くイラストレーターは「絵師」と呼ばれることがある[13]。また、萌え絵が書かれた絵馬のことを「痛絵馬」と呼ぶ[2]

脚注

出典

  1. ^ a b c d 田川隆博「オタク分析の方向性」『名古屋文理大学紀要』9号、名古屋文理大学、2009年、p.76。
  2. ^ a b 佐藤善之「オタク絵馬とは何か 宮城縣護國神社の絵馬調査結果とその分析」『CATS叢書』4号、北海道大学観光学高等研究センター・鷲宮町商工会、2010年、pp.115-116。
  3. ^ a b c 有村悠「オタクの10年 当世美少女イラスト事情」『現代視覚文化研究 Vol.4』三才ブックス、2010年4月19日、70-71頁。ISBN 978-4-86199-251-3 
  4. ^ a b c 安斎昌幸ぼくの萌える仕事(メディアアート紀行)」『映像情報メディア』66号、映像情報メディア学会、2012年、pp.58-59。
  5. ^ 初音ミクはなぜこんなに人気なの? 心理学者がその秘密を分析!”. マイナビニュース (2012年6月10日). 2019年2月22日閲覧。
  6. ^ 「初音ミク」世界的人気の理由とは?キーワードは「共感」【NDC17】”. Appliv Games. 2019年2月22日閲覧。
  7. ^ 東京メトロの萌えキャラ「駅乃みちか」 1人だけ気まずそう?”. ジェイ・キャスト. 2019年2月22日閲覧。
  8. ^ 木村正人. “「ロリコン、性差別」「海の文化バカにするな」サミット開催地・志摩で海女の萌えキャラ大炎上”. Yahoo!ニュース 個人. 2019年2月22日閲覧。
  9. ^ 山本一郎. “NHK「キズナアイ」騒動、バーチャルユーチューバーや萌え絵柄は番組のパーソナリティとして適切か”. Yahoo!ニュース 個人. 2019年2月22日閲覧。
  10. ^ 性的なイメージを連想?「萌え絵」化する絵本に抵抗示す人も”. ナリナリドットコム. 2019年2月26日閲覧。
  11. ^ 絵本の「萌え絵論争」に出版社が苦慮 発注の背景を明かす”. BIGLOBEニュース. 2019年2月26日閲覧。
  12. ^ 大人は、子どもの好きな萌え絵とイヤな萌え絵を区別できない|サイゾーウーマン(2ページ目)”. サイゾーウーマン. 2019年2月26日閲覧。
  13. ^ 芸術としての「萌え絵」の求心力 アキバ「絵師100人展」に人々が集まる魅力”. 産経新聞 (2015年5月2日). 2017年2月1日閲覧。

注釈

  1. ^ 諸説があり内藤誼人の分析では「自己プロデュースできるアイドル」という点がファンの心をつかんだとしており[5]クリプトン・フューチャー・メディアの熊谷裕介氏の分析では「共感」を理由としている[6]

関連項目