活火山

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活火山(かつかざん、かっかざん、英語:active volcano)とは、「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」である(日本火山噴火予知連絡会気象庁による定義)。この定義による2012年現在の日本の活火山数は110である。

日本の活火山

分類

火山噴火予知連絡会、活動度による分類[1]。 但し、気象庁では「今後の噴火の可能性や社会的な影響が考慮されていない」として利用していない。

ランク 説明 該当火山数 火山名
A  100年活動度
または1万年活動度が特に高い活火山
13 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、浅間山、伊豆大島、三宅島、伊豆鳥島、阿蘇山、雲仙岳、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
B  100年活動度
または1万年活動度が高い活火山
36 知床硫黄山、羅臼岳、摩周、雌阿寒岳、恵山、渡島大島、岩木山、十和田、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、鳥海山、栗駒山、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、榛名山、草津白根山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、新島、神津島、西之島、硫黄島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、霧島山、口永良部島、中之島、硫黄鳥島
C  100年活動度
および1万年活動度がともに低い活火山
38 アトサヌプリ、丸山、大雪山、利尻山、恵庭岳、倶多楽、羊蹄山、ニセコ、恐山、八甲田山、八幡平、鳴子、肘折、沼沢、燧ヶ岳、高原山、日光白根山、赤城山、横岳、妙高山、弥陀ヶ原、アカンダナ山、乗鞍岳、白山、利島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、三瓶山、阿武火山群、由布岳、福江火山群、米丸・住吉池、池田・山川、開聞岳、口之島
対象外  データが不足しているためランク分け対象外となっている火山(北方領土海底火山など) 23 ベヨネース列岩、須美寿島、孀婦岩、海形海山、海徳海山、噴火浅根、北福徳堆、福徳岡ノ場、南日吉海山、日光海山、若尊、西表島北北東海底火山、茂世路岳、散布山、指臼岳、小田萌山、択捉焼山、択捉阿登佐岳、ベルタルベ山、ルルイ岳、爺爺岳、羅臼山、泊山

※対象は日本国内の火山に限る。

常時観測対象の火山

2009年(平成21年)6月火山噴火予知連絡会によって、今後100年程度の中長期的な噴火の可能性及び、社会的影響を踏まえ、火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山として下表の47火山が選定された。 これらの火山には、気象庁や防災科学技術研究所火山基盤観測網、大学などの機関が地表地震計、ボアホール型地中地震計[2]、傾斜計、空振計、GPS観測装置、遠望カメラなどの観測施設を整備している[3]、しかし観測適地であっても、国立公園法森林法温泉法等に基づく制約を受けるほか、観測施設建設のための掘削機や重機搬入が困難で有ったり、地すべり地帯で有るため最適な観測機器の設置を断念する場合がある[3]

2016年、八甲田山十和田弥陀ケ原(立山)の3火山を追加予定である[4][5]
十和田は火砕流が、八甲田は噴出物が、それぞれ六ヶ所村核燃料再処理工場の敷地に到達しているため、火山噴火予知連絡会が常時観測対象火山に加えるように言っている[6][7][8]
火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山[9][10]
選定理由 火山数 火山名
1. 近年、噴火活動を繰り返している火山
  • 過去数十年程度の間、頻繁に噴火している
  • 100年以内の間隔でマグマ噴火を繰り返している
23 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、伊豆大島、三宅島、硫黄島、阿蘇山、霧島山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島
2. 過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている火山
  • 地震活動:過去100年程度の山体浅部の地震活動(マグマの動きに関連したものなど)
  • 地殻変動:過去10年程度のマグマ貫入等に伴う地殻変動
  • 噴気活動
  • 地熱活動:過去100年程度の活発な噴気活動、地熱活動
18 アトサヌプリ、大雪山、恵山、岩手山、栗駒山、蔵王山、安達太良山、磐梯山、日光白根山、乗鞍岳、白山、箱根山、伊豆東部火山群、新島、神津島、八丈島、鶴見岳・伽藍岳、九重山
3. 現在異常はみられないが過去の噴火履歴等からみて噴火の可能性が考えられる 4 岩木山鳥海山、富士山、雲仙岳
4. 予測困難な突発的な小噴火の発生時に火口付近で被害が生じる可能性が考えられる 2 倶多楽青ヶ島

特に活動が活発で、噴火が経済活動に与える影響が大きな火山(有珠山、岩手山、那須岳、浅間山、富士山、伊豆大島、三宅島、小笠原硫黄島、阿蘇山、霧島山)は、防災科学技術研究所の火山活動観測網 VIVA によっても[11]連続観測が行われている。

重点観測火山 (2014年時点)

近年、噴火活動を繰り返している火山23火山のうち16火山で観測機器を充実し常時観測を実施。

  • 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、十勝岳、岩手山、草津白根山、浅間山、泉尾渡島、三宅島、富士山、阿蘇山、雲仙岳、口之永良部島、諏訪之瀬島、霧島山、桜島
  • 追加指定[12]:雌阿寒岳、十和田、蔵王山、吾妻山、那須岳、弥陀ヶ原、焼岳、御岳山、九重山 (9火山)

日本における定義の変遷

「活火山」の定義

1960年代以前

  • 1918年 - 『震災豫防調査會報告[13]』で、現在活動している火山を活火山、活動を休んでいる火山を休火山、活動を止めてしまった火山を死火山としていた。具体的には、常に噴気活動があったり頻繁に噴火する火山(日本での例:桜島浅間山など)を活火山、噴火記録はあるが現在は活動していない火山(同:富士山など)を休火山、有史以降の噴火記録がないものの、地質や噴火の痕跡などから火山と判断できる山(同:乗鞍岳など)を死火山としていた。
  • 1952年3月 - 『火山観測法(初版)』(気象庁、1952)に「日本における活休火山一覧図」と「噴火年代表」が収録。45火山を記載。休火山と活火山は、区別されていない。

1960年代

噴火や噴気活動の間隔は火山によってまちまちであることなどから、活火山と休火山を分けることが困難なため、気象庁は、過去10世紀程度までに噴火記録のある火山や噴気・地熱活動がある63火山を活火山とした。

  • 1968年(昭和43年)10月 - 発行された火山観測指針(気象庁職員のための火山観測マニュアル)には、噴火記録のない御嶽山 、噴火記録のある富士山も活火山リストに掲載されている。また、常時観測対象17火山(雌阿寒岳・十勝岳・樽前山・有珠山・北海道駒ヶ岳・吾妻山・安達太良山・磐梯山・那須岳・浅間山・伊豆大島・三宅島・伊豆鳥島・阿蘇山・雲仙岳・霧島山・桜島)を指定[14]

1970年代

噴火記録の有無の扱いは、「歴史時代に人が目撃し記録されていたかどうか」であり、一般に休火山や死火山と考えられていた火山が相次いで活動をし、休火山、死火山の分類区分が無意味であることが一般的にも認知された。

  • 1974年 - 火山噴火予知連が、国の活火山の活動状況,噴火史のとりまとめを開始。
  • 1975年10月 - 「噴火の記録がある火山,または噴気活動が活発な火山」 77火山。『日本活火山要覧』(気象庁 1975)刊行。

1980年代

  • 1984年 - 各活火山の基礎資料をまとめた『日本活火山総覧』(気象庁編 1984)刊行。

1990年代

噴火記録の有無の扱いは、地質学的な証拠に基づく「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」。

  • 1991年 - 火山噴火予知連絡会が「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」、83活火山のリストを発表。

2000年代

研究が進むにつれて、2000年以上の休止期間をおいて噴火する火山もあることが明らかとなり、国際的には1万年以内に噴火した火山を活火山とするのが主流となってきた。

  • 2003年 - 火山噴火予知連絡会は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と再定義し、気象庁もその定義を踏襲することになった。この定義による日本国内の活火山は当初、108火山であった。後に追加され、110火山。活火山をこのように定義すると、頻繁に噴火する火山から数千年の休止期をおく火山まで幅が大きくなるので、火山噴火予知連絡会は同時に、社会的影響度を評価することなく火山学的に評価された火山活動度により、ランクA・ランクB・ランクC(Aが活動度が高い)の新しい3区分の活火山の分類(ランク分け)を定義した。
  • 2007年 - ランク分けは社会的影響度を考慮しないものであるため、火山の活動による危険性に直接は結び付かない。そこで気象庁は、2007年12月1日から、火山活動による災害の危険性に応じ、国内すべての活火山について噴火警報噴火予報を発表するようになった。活動度レベルを廃止し同時に活動度の高い火山には5段階の噴火警戒レベルを導入し[15]、噴火警報・予報で発表することとした(噴火警戒レベルと、上記のランク分けは関連するものではない。たとえば、2011年1月から活発な噴火活動を始めた新燃岳を含む霧島山のランクは、富士山と同じBである)。
噴火警戒レベル
レベル 内容
レベル5 (極めて大規模な噴火活動等) 広域で警戒が必要
レベル4 (中-大規模噴火活動等) 火口から離れた地域にも影響の可能性があり、警戒が必要
レベル3 (小-中規模噴火活動等) 火山活動に十分注意する必要がある
レベル2 (やや活発な火山活動) 火山活動の状態を見守っていく必要がある
レベル1 (静穏な火山活動) 噴火の兆候はない
レベル0 長期間火山の活動の兆候がない

2010年代

  • 2011年6月 - 新たなデータにより3火山を追加。3火山のうち既存の活火山である樽前山に含まれた風不死岳を除いて計110火山となった[16]

活動度評価

活火山の活動度評価の変遷(産業技術総合研究所 地質調査総合センター資料より引用)[17]
機関と時期 定義 火山数
測地学審議会 1998年8月から ◎ 活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山 13
○ 活動的火山及び潜在的爆発活力を有する火山 24、海底火山を除く
気象庁 2003年1月から[18]
A,B,C のランク分け
ただし、火山学的に評価された過去の活動度。
海底火山及び北方領土を除く
A 100年活動度、または1万年活動度が特に高い活火山 13
B 100年活動度、または1万年活動度が高い活火山 36
C 100年活動度、および1万年活動度がともに低い活火山 36
気象庁 2009年6月から[19]
ランク分けにかわる示標として47火山を選定
1 近年、噴火活動を繰り返している火山
  • 過去数十年程度の間、頻繁に噴火している
  • 100 年以内の間隔でマグマ噴火を繰り返している
23
2 過去100 年程度以内に火山活動の高まりが認められている火山
  • 過去100 年程度の山体浅部の地震活動
  • 過去10 年程度のマグマ貫入等に伴う地殻変動
  • 過去100 年程度の活発な噴気活動、地熱活動
18
3 現在異常はみられないが過去の噴火履歴等からみて
噴火の可能性が考えられる火山
4
4 予測困難な突発的な小噴火の発生時に火口付近で
被害が生じる可能性が考えられる火山
2

ギャラリー

キラウエア火山マグマ 阿蘇山西火口・活火山ランクA 桜島・活火山ランクA 御嶽山 (長野県)・活火山ランクB

脚注

  1. ^ 最近一万年間の火山活動に基づく火山活動度指数による日本の活火山のランク分けについて 林豊・宇平幸一 気象庁 験震時報71巻 pp.59-78
  2. ^ ボアホール型火山観測施設整備における調査孔掘削の意義 齋藤公一滝・本多誠一郎・宮村淳一・小久保一哉・斎藤誠 験震時報第76巻 pp.133-159
  3. ^ a b 全国47 火山への火山観測施設の整備 気象庁地震火山部火山課 験震時報第77巻 pp.241-309
  4. ^ 御嶽山噴火1年 常時観測対象の50火山 登山者向け対策に遅れ毎日新聞2015年9月24日 東京朝刊
  5. ^ 立山三山(富士ノ折立、大汝山、雄山)の別名
  6. ^ 十和田湖底を調査へ マグマ活動の知見収集2015年02月24日河北新報
  7. ^ 他には川内原発が、姶良カルデラなどの巨大噴火にさらされる危険を指摘されている。1万年に一度程度の低確率だが、いつ噴火するのか全く予想できない。
  8. ^ 川内原発周辺の火山とカルデラ時事通信2015年8月11日
  9. ^ 詳細は「中長期的な噴火の可能性の評価について」 平成21年6月、火山噴火予知連絡会 火山活動評価検討会報告 (PDF)
  10. ^ 「御嶽山の噴火災害を踏まえた活火山の観測体制の強化に関する緊急提言」の概要 平成26年12月1日 気象庁 (PDF)
  11. ^ 火山活動可視情報化システム(VIsualization system for Volcanic Activity) 防災科学技術研究所
  12. ^ 重点観測の火山 25に拡大へ NHKオンライン 2014.11.20
  13. ^ 大森房吉「第十三章 休火山、活火山ノ分布(日本噴火志 下編)」『震災豫防調査會報告』第87巻、震災豫防調査會、1918年9月20日、95-105頁、NAID 110006606131 
  14. ^ 火山業務の沿革”. 気象庁. 2015年11月15日閲覧。
  15. ^ 噴火警戒レベルの説明”. 気象庁. 2015年11月15日閲覧。
  16. ^ 火山噴火予知連絡会による新たな活火山の選定について”. 気象庁 (2011年6月7日). 2015年11月15日閲覧。
  17. ^ 活火山の活動度評価の変遷
  18. ^ 活火山の選定および火山活動度 気象庁 (PDF)
  19. ^ 火山防災のための監視・観測体制の充実等の必要がある火山 気象庁 (PDF)

参考文献

関連項目

外部リンク