悲しき熱帯 (レヴィ・ストロース)
『悲しき熱帯』(かなしきねったい、仏語原題:Tristes tropiques)は1955年にフランスで刊行された文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの著書である。1930年代のブラジルでの旅の記録をまとめた紀行文だが、その文章にちりばめられた思想、特に優れた未開社会の分析と、ヨーロッパ中心主義に対する批判により後に本書はセンセーショナルな評価を受け、文化人類学、また構造主義におけるバイブルのひとつとなる。また人文科学にも大きな影響を与えた。
また、優れた記録文学としても受容され、20世紀を代表する文学作品のひとつとしてあげられることも多い。フランスの権威ある文学賞のひとつであるゴンクール賞を選考するアカデミー・ゴンクールは「フィクションでないために『悲しき熱帯』を受賞の対象外とされたのは、非常に残念である」との声明を出している[1]。また1999年にテレビ番組で行われたアンケートでは、「フランス人の選ぶ20世紀の名作50」の20位に選ばれている[2]。
構成
- 第1部 旅の終り
- 第2部 旅の断章
- 第3部 新世界
- 第4部 土地と人間
- 第5部 カデュヴェオ族
- 第6部 ボロロ族
- 第7部 ナンビクワラ族
- 第8部 トゥピ=カワイブ族
- 第9部 回帰
邦訳
邦訳は各全2巻で、川田順造訳(中央公論新社のち中公クラシックス)と室淳介訳(邦題「悲しき南回帰線」、講談社学術文庫)がある。
注釈
- ^ クロード・レヴィ=ストロースが100歳の誕生日(在日フランス大使館)
- ^ フレデリック・ベグベデ『文学の墓場〜20世紀文学の最終目録〜』(中村佳子訳、角川書店、2003年)