孔子平和賞

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孔子平和賞
各種表記
簡体字 孔子和平奖
英文 Confucius Peace Prize
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孔子平和賞(こうしへいわしょう)は、中華人民共和国の学者らが集められ組織された中国郷土文化保護協会(後に中国郷土文化保護部に改称)が2010年12月に創設した、平和に貢献した人物に対して、その功績を顕彰し授与される「孔子」の名を冠した[1]。2011年に香港の別団体である孔子国際平和研究センター(2011年10月設立)が継承した(後述)。

概要

ファイル:Voa chinese Confucius Peace Prize girl 9dec10.jpg
授賞式でトロフィーを受け取る連戦とは無関係の少女

劉暁波への2010年ノーベル平和賞授賞をめぐって反発する中国において、ノーベル平和賞に対抗して[2]、北京の大学教授らによって[2]ノーベル平和賞の授与式直前に独自に設けられた賞。中国郷土文化保護協会(孔子平和賞事務局)は、「公式な政府の組織ではないが、文化賞などを所管する文化省と密接に協力している」としている[3]。受賞者には賞金10万元(約120万円:発表当時)が贈られる[4]

ノーベル賞に対抗する中国版ノーベル賞については、ノーベル平和賞受賞者発表の翌月にあたる11月より、設立の可能性に関して噂が流れていたが[5]、12月8日その存在が具体的に報道された[3][6]。そして翌日の9日、第1回受賞者発表と授賞式が行われた[7]。受賞者発表と授賞式が、その賞の存在が明らかになった翌日というとても短い期間に行われた。授賞式当日、選評委員会の譚長流委員長は「長い間準備してきた」「(劉暁波という)三文字とは関係ない」と発言したが、孔子平和賞パンフレットにはノーベル賞を非難する文章が書かれている[8]

2011年9月17日に主催団体が上部機関への事前報告なく記者会見を行い、文化省に許可なく文化保護部と改称し[1]、また文化省の下部組織を勝手に名乗ったことが同省の管理規定に違反したとして選考自体の中止が9月28日に公告された[9]。主催団体も外郭団体の認定を取り消され[10]解散させられたため、郷土文化保護部による孔子平和賞は2010年の1回きりで終了した[1][11]

その後10月6日に中華社会文化発展基金会孔子世界平和賞の創設を発表するも、同日中に一切の活動を停止するとの発表を行う[12]。孔子平和賞、孔子世界平和賞のいずれも、孔子の名誉を汚すものだとして中国国内でも批判があったとされる[10][12]

しかしながら2011年11月15日に香港の別団体である孔子国際平和研究センターが孔子平和賞を継承[13][14]。第2回目となる2011年度の受賞者は2011年リビア内戦におけるリビア空爆に反対したとしてロシアのウラジミール・プーチン首相が選出され[15]、同年12月9日に授賞式が本人不在のまま開催されている。

受賞者

第1回受賞者として発表された人物は、台湾(中華民国)の中国国民党名誉主席(元中華民国副総統連戦。受賞理由は、連戦が中国と台湾の間の平和の架け橋となったことによる[2]。しかし連戦に受賞連絡はなく[11]、また受賞を拒絶したため、受賞トロフィーは受賞者とは関係ない少女が代理で受け取り[8]、茶番劇であるとも評された[8][11]。インターネット上での投票により決定したと発表されたが、開催したサイト名や投票期間は公表されていない[8]。候補者には、ビル・ゲイツネルソン・マンデラ、元アメリカ大統領ジミー・カーター、パレスチナ自治政府大統領マフムード・アッバースパンチェン・ラマ11世(ギェンツェン・ノルブ)ら8人が上っていたという[5]

第2回となる2011年は、中国郷土文化保護部が選考している段階でロシア連邦首相ウラジミール・プーチンら8人の名前が挙がり[11]、主催団体変更後はプーチンに加えパンチェン・ラマ11世マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ親民党主席の宋楚瑜、南アフリカ大統領のジェイコブ・ズマ、ドイツ連邦首相のアンゲラ・メルケル、前国際連合事務総長のコフィ・アナンら8人が候補に挙がっていた[13]。その後、プーチンの受賞が発表され、2011年12月9日に授賞式がとりおこなわれたが本人が欠席したため、ロシア人留学生が代わりにトロフィーを受け取った[15]

類似の賞

孔子平和賞のようなノーベル賞に対抗して設立された賞としては、「ドイツ芸術科学国家賞」がある。ナチス・ドイツに対して「言論の自由」を訴えた獄中のカール・フォン・オシエツキーが1935年にノーベル平和賞を受賞したとき、ナチス・ドイツはこれに対抗して独自のノーベル賞としてドイツ芸術科学国家賞を創設した[7]

また、ソビエト連邦も1949年にノーベル平和賞に対抗する独自の平和賞として、自国や他国の革命家や共産主義者を顕彰する目的でスターリン平和賞(後のレーニン平和賞)を創設している。

これらの賞と孔子平和賞の決定的な違いは、ドイツ芸術科学国家賞もレーニン平和賞も国家によって正式に創設された賞であり、前者は2年間で9人、後者は約41年間に極めて多数の受賞者を輩出しており、殆どは本人に直接受け渡しが行われ、本人から受賞を頑なに拒絶される事例も少なかったことである。これらの賞は創設国家の崩壊などにより今日では顕彰活動や賞の有効性が失われている。

脚注

  1. ^ a b c “ハシゴはずされたプーチン…中国・孔子平和賞、不可解な“消滅”” (日本語). サーチナ. (2011年9月29日). http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0929&f=national_0929_060.shtml 2011年9月30日閲覧。 
  2. ^ a b c 「孔子平和賞」に台湾・連戦氏=ノーベル賞に対抗-中国 時事ドットコム 2010/12/09-20:32
  3. ^ a b 中国、孔子平和賞設立か…ノーベル賞に対抗? YOMIURI ONLINE(2010年12月9日01時11分 読売新聞)
  4. ^ “Confucius Peace Prize: China To Award Nobel Rival”. The Huffington Post. (2010年12月8日). http://www.huffingtonpost.com/2010/12/08/confucius-peace-prize-china_n_793610.html 2010年12月9日閲覧。 
  5. ^ a b APNewsBreak: China to award prize to rival Nobel By TINI TRAN, Associated Press Tini Tran, Associated Press – Tue Dec 7, 1:09 pm ET Yahoo!News
  6. ^ China to hand out its own peace prize CNN 2010年12月8日(英語)
  7. ^ a b 中国、独自に「孔子平和賞」創設 ノーベル平和賞に対抗 asahi.com 2010年12月9日20時13分
  8. ^ a b c d ノーベル平和賞に対抗 “茶番劇”孔子平和賞に失笑 本家同様、受賞者不在 産経ニュース 2010.12.9 21:04
  9. ^ “孔子平和賞:今年は中止 ノーベル平和賞に対抗し創設も”. 毎日新聞. (2011年9月29日). http://mainichi.jp/select/world/news/20110929k0000m030124000c.html 2011年9月29日閲覧。 
  10. ^ a b “「孔子平和賞」中止…ノーベル平和賞の中国版”. 読売新聞. (2011年9月29日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110929-OYT1T01265.htm 2011年9月30日閲覧。 
  11. ^ a b c d “わずか1回で… 孔子平和賞中止”. 東京新聞. (2011年9月29日). http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011092902000019.html 2011年9月30日閲覧。 
  12. ^ a b “中国、「孔子世界平和賞」も中止 ノーベル賞対抗あっさり頓挫”. 産経新聞. (2011年10月7日). http://sankei.jp.msn.com/world/news/111007/chn11100709270000-n1.htm 2011年10月8日閲覧。 
  13. ^ a b “めげない「孔子平和賞」…プーチン首相への授与を発表=中国”. サーチナ. (2011年11月16日). http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1116&f=national_1116_109.shtml 2011年12月11日閲覧。 
  14. ^ “中国で「孔子平和賞」復活? プーチン首相に授賞決定” (日本語). 共同通信. (2011年11月15日). http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011111501000465.html 2011年12月10日閲覧。 
  15. ^ a b “プーチン氏に孔子平和賞 本人不在で授賞式”. 共同通信. (2011年12月9日). http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011120901002031.html 2011年12月10日閲覧。 

関連項目

外部リンク