塔 (タロット)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。CommonsDelinker (会話 | 投稿記録) による 2012年3月29日 (木) 17:46個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (Mattbuck によってCommonsから削除された Major_16.jpg を除去。理由: commons:Commons:Deletion requests/All images in Category:Rider-Waite tarot deck.)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

(とう、The Tower)は、タロット大アルカナに属するカードの1枚。カード番号は「16」。

カードの概要

フランス語の名称「La Maison de Dieu」やスペイン語の「La Casa de Dios」はいずれも「神の家」を意味する。注解者によっては、フランス語の「La Maison Dieu」(同様に神の家)は「La Maison de Feu」(火の家=火事の家)の記載ミスとの指摘もあるが、後述の通り現在では「神の家」に基づく解釈が進んでいる。

アーサー・エドワード・ウェイトタロット図解における解説では「悲嘆・災難・不名誉・転落」を意味するとされる。また、カバラに於けるヘブライ文字神秘的解釈と関連付けた解釈では、ヘブライ文字ペー(פ)を介して西洋占星術上では「火星」と結び付けられ、生命の樹に於けるネツァクとホドのセフィラを結合する経に関連付けられている。
なお、このカードは現時点の一般的な解釈において、正位置・逆位置のいずれにおいてもネガティブな意味合いを持つ唯一のカードでもある。

絵の意味

マルセイユ版タロットの塔

両版とも、バベルの塔を模した建造物が崩壊する様子が描かれている。マルセイユ版の「塔」には、炎のような物体が建物の屋根部分を吹き飛ばし、二人の人物が、一人は逆さまに、もう一人は上半身が建物から出ている状態で描かれている。

古代メソポタミアにおける塔という建造物は、天と地をつなぎ、神々が地上に降り立つ道筋を提供する宗教的な目的で扱われていた。また軍事的な防衛・観察・牢獄・退却に使用する要塞として扱われ、現在においても政治・経済・教育・文化などの様々なプロパガンダは塔を媒体として行われている。しかし、この「塔」に描かれる建造物は人間と対比してわかるようにとても小さく、およそ天まで達し、との交信を図るような存在とは思えない。また、人物の一人が建物から出てきているように見えることから、この建物は二人の人物の私有物であり、彼らが作ったものと解釈される。彼らは建物に王冠を模した屋根を取り付けていたと見られ、自分達の作り出したものを絶対無二の存在とし、他のいかなる存在も認めていなかったことを象徴している。

「塔」では、まさに今、建物の王冠が取り払われた様子が書き出されている。王冠を吹き飛ばす奇妙な物体は稲妻とされている。稲妻は古来より「神から放出される聖なる力」の象徴として、しばしば“神の怒り”などと表現されるが、この「塔」の物体は一般的なギザギザ状ではなく、どちらかといえば炎のように丸みを帯びた描かれ方をしている。これは、雷でも炎でも無く「神から放出される聖なる力」そのものを表している。即ち、二人の人物が、自らの作り出した強固な自意識の殻に閉じこもっていた状態から、何らかの外的要因によって開放された状態へと移り行く場面を描き表した様子と解釈される。このことから、近年ではこの建物を「神の家」と解釈する説が一般的になりつつある。神の家とは、即ちキリスト教を信奉する人々が礼拝に使用する教会を指した俗称である。つまり、「神から放出される聖なる力」を、“神の怒り”ではなく“神の慈悲”による救済であると解釈し、人間的な宗教組織、即ち「塔」に囚われる人々を神が解放し、「塔」の頂に王冠、即ち絶対とする権力(神)は存在せず、「塔」の外に広がる広大な平野の果て、更には背景に描かれる球体、即ち世界地球宇宙に至るそのもっと上に存在していることを象徴している、と解釈される。

正位置の意味
崩壊、災害、悲劇。
逆位置の意味
緊迫、突然のアクシデント、誤解。

参考文献

  • サリー・ニコルズ『ユングとタロット』ISBN 4-7835-1183-7
  • フィリップ・カモワン『秘伝カモワン・タロット 解説書』ISBN 4-0540-1522-0
  • 井上 教子『タロット解釈実践事典―大宇宙の神秘と小宇宙の密儀』ISBN 4-3360-4259-4

関連項目

外部リンク