博士(医学)

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医学における博士(はくし、: Ph.D in Medicine, Doctor of Medical Science)は、医学に関した博士学位である。

日本においては、1991年(平成3年)に学位規則昭和28年文部省第9号)が改正される前には医学博士(いがくはくし)という名称で学位が授与されていた。改正後にはこの名称が変更され「博士(医学)」が授与されている。しかし、1991年以降の授与者でも名刺や選挙ポスターなどの掲示物には「医学博士」と記載することが一般的である。

大学院の医学系研究科で博士課程を修了し博士論文の審査に合格するか(課程博士)、もしくは博士論文を大学の定める公聴会に提出して合格する(論文博士)と「博士(医学)」が授与される。この日本の大学院医学研究科における「博士(医学)」は英文の修了証明書では、Ph.D.(Doctor of Philosophy)と表記する慣例となっている。類似する名称として後述するM.D.(Doctor of Medicine)があるが、これはいわゆる専門職博士の称号であり、学術的には修士号相当かそれ以下の称号(日本の場合学士相当)とされ、博士(医学)とはまったく別物の称号であることに注意を要する。

日本における状況

日本の大学で医学を履修する課程(医学部医学科など)は、6年制であり、医学を履修する課程を卒業した者には「学士(医学)」の学位が授与される。この「学士(医学)」を取得した者が、アメリカ合衆国におけるM.D.(Doctor of Medicine)相当とみなされる。すなわち本邦では医師国家試験合格後、医籍登録の完了したいわゆる医師とは異なり、医学部医学科卒業と同時に取得する。日本の学位でM.D.相当であるのはあくまで学士(医学)であり、博士(医学)は通例Ph.Dと英訳され、学士(医学)を持たず、博士(医学)のみではM.D.を名乗ることは出来ない。

これとは別に、医学分野で、学術的に新規性のある研究成果を博士論文にまとめ、大学の定める公聴会、もしくは審査会で合格したものがPh.Dである。医学博士になるためには、学術上の業績のみが要件となっており、医師免許の取得自体は必ずしも必要ではない。しかし伝統的に日本のほとんどの公立・大病院では部長職以上になるためには博士号取得を条件に挙げており、多くの医師が医局から離脱できない弊害をもたらしてきた。つまり医局から博士号をもらえなければ臨床医としてのキャリアに支障をきたすわけである。

現在では、医師免許を持たない者(主に医学部以外の理系学部卒業者)が医学系大学院で「博士(医学)」を取得する例が増加している。博士号は"学術的"に優れた業績を残した者に与えられるものであり、それは臨床医として優れていることを意味するものでは必ずしもない。そこで、臨床医の中では、学術的に認められる博士より、臨床技術的に認められる学会認定専門医などを取得することが重要視されるようになりつつあり、医師があまり積極的に博士(医学)を取ろうとしなくなってきている。このため、数十年後には博士(医学)の中で医師免許を持っている者と持っていない者の比率が逆転するのではないかとさえ言われている。

アメリカ合衆国における状況

海外の研究者で、「M.D. , Ph.D.」と記載されているのは、メディカルスクールに在学中、Ph.D.コースのある大学院課程を修了した者のことを指す。尚、メディカルスクールに入学する前や卒業した後に「PhD」を取ることも可能であるが、その場合、「M.D., PhD」を取得するまでの期間が、前記の課程よりも長くなる。

「M.D.」「Ph.D.」のそれぞれの意味は、次の通りである。

M.D.
ラテン語 Medicinæ Doctor、英語 Doctor of Medicine (D.M.と略されることもある)
Ph.D.
ラテン語 Philosophiæ Doctor、英語 Doctor of Philosophy、日本には相当する学位がない

アメリカ合衆国では、4年制大学を卒業した後に、大学院の4年制医学課程(日本における専門職大学院の課程)を修了して「M.D.」(または「D.O.」,「D.C.」)が授与され、さらに学術系の大学院の課程を修了して「Ph.D.」を名乗る。通常、「M.D., PhD」プログラムの学生は、メディカルスクールの基礎医学課程を2年で終え、2ー4年かけて博士論文を書き上げ、その後残りの臨床医学課程を1.5ー2年で終わらせて卒業となる。尚、大抵の「M.D., PhD」プログラムは、全課程を通じて全額奨学金に加え生活費が支給される。入学には大学での好成績とMCATの高スコアに加え、研究や病院ボランティア等のある程度の社会経験が必須とされ、合格率は非常に低く、合格者の平均年齢は毎年20代半ばである。 日本でほとんどの臨床医が結果的には博士号取得を目指すのに対しアメリカ合衆国では医師がPhDも取得することは非常に稀であるが、この背景には大学医学部で教職につくのに日本では博士取得がほぼ義務であるのに対しアメリカでは必要ないことも関係している。

なお、アメリカ合衆国において唯一 ケースウエスタンリザーブ大学 (Case Western Reserve University) は、例外の課程を持つ。

なお、「D.O.」の意味は、次の通りである。

D.O.
英語 Doctor of Osteopathic Medicine (オステオパシー医学の医師[アメリカではM.D.と並ぶ正規の医師である。])

「D.C.」はDoctor of Chiropracticのことであり、米国におけるPrimary health care providerの1つである。MD、DOとは異なり保存的療法による治療が主であり、薬の処方や外科的手法によらない。

関連項目