シャベル

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大地に突き立てられた剣スコップ

シャベルは、土砂、石炭、砂利、等の粗い粉状の素材を持ち上げて移動させるための道具である。

概要

シャベルは英語では shovel で、日本語ではショベルとも表記される。漢字では円匙と書き、えんし、またはえんぴ(本来は誤読だが軍隊・自衛隊を中心に呼ばれる)と読む。スコップは本来同義語であるが、使い分けている場合が多い(後述)。方言シャボロと呼ぶ地方もある。なお、スコップとはオランダ語schop (schep) からきた語である。

通常、シャベルは柄と、柄の先端に取り付けられたスプーン状の幅広の刃からなる。日本では刃と反対側には取っ手が付いた製品が多いが、外国では長い棒状のままの柄がつくものも多く見られる。使用する時は取っ手と柄の根本(刃のついている方)付近を握って両手で扱う。日本ではシャベルの用途は土木作業用が主で、刃がスペード型の物を俗に剣(剣先)スコップ、方型のものを角(角型)スコップもしくは平スコップ、また現場では略してケンスコ・カクスコと呼ぶこともある。石の多い堅い土には食い込みやすいケンスコ、砂地や軟らかい土質には角スコを使うなど土質により使い分ける。 シャベルという語は、同様の目的を持つ大型の土木機械(油圧ショベル)においても使用されている。

種類

シャベルは使用目的に最適化された多くの種類がある。

石炭用シャベル
幅広で平らな刃を持ち、石炭がこぼれ落ちないように刃の両脇が曲げられている。Dの字状(柄から二又に分かれた取っ手に横棒)の取っ手が付いている。
雪かき用シャベル
刃はアルミニウムプラスティック製の軽量で、非常に幅広で湾曲している。取っ手として柄に横棒が取り付けられている。を押し、持ち上げるように設計されている。
スペード
スペード (Spade) は土掘り用のシャベルで、刃はゆるく湾曲しており両脇は無い。刃の先端は尖っているが、反対側は平たく成形されている。刃を地面に突き刺して土をすくう。この時刃の平たい部分に足を掛け、体重を載せる事で刃を地面に深く差しこむことができる。Spadeの日本語訳としては踏み鋤が当てられるが、こちらは農具である。
園芸用こて
塹壕用シャベル
塹壕用シャベルは折りたたみ可能な軍用シャベルである。刃の形状はスペードに似ている。塹壕用シャベルの一義的な任務は塹壕を掘ったり整備したりすることであるが、塹壕戦においては敵兵との不意の遭遇も多くその際にシャベルは有用な武器になることから殺傷力を高めるために縁がノコギリ歯になっているものがあった。
園芸用こて
片手で持つ小型のシャベルで、苗の植え替えなど園芸用途に用いるもの。移植ごてとも呼ぶ。英語では trowel という。

シャベルとスコップ

JIS規格では足をかける部分があるものをショベル、無い物をスコップと記されている。[1]

東日本地域では、人力で掘るために足をかける部分のあるものがスコップと言い、代表的なものが剣先スコップ・角スコップである。

また、重機等に取り付けられた大型の物をショベルと呼ぶ。

一般には大きさによってシャベルとスコップを使い分けており、西日本では大型のものをシャベル、小型のものをスコップと呼ぶ。逆におもに東日本では大型のものをスコップ、小型のものをシャベルと呼ぶ人が多い。[要出典][2]

円匙

旧陸軍ではシャベルを円匙と呼称した。この語の正確な読みは「えん」であるが、いつの頃からか「えん」という読みが使用されるようになった。この用法はそのまま自衛隊に引き継がれており「円ピ」と呼んでいる。もともとシャベルを円匙と表記するのは日本語に固執した旧陸軍くらいだったので(しかし旧海軍に於いても設営隊等では「円匙」と呼ばれる事は多々あった)、正しい読みが使用される機会は少なく、現在では特に軍事関係に詳しい人々や登山者を中心に多くの人がエンピの読みを使用している。

軍隊でのシャベル

戦場においてシャベルは、自分の命を守るための塹壕を掘る道具であり、自らの排泄行為のために地面に穴を掘るための道具(排泄物の臭気を巻き散らさない事は戦場の住環境を守るためだけでは無く、敵側に気配を察知されないためでもある)であり、ときには白兵戦の際の打突武器として有用である、特に塹壕戦では白兵戦武器の中で最も活躍した立派な武器として認知されている。このため歩兵の個人携行物となっているほか、多くの軍用車両の装備品の一つとしてシャベルが採用されている。これらは車内に納められ(もしくは戦車等で見られる、車体にツルハシジャッキ等とセットでクランプ留めにされた状態で)、車両がスタックした場合に車輪周辺の穴掘り等に活用される。

旧陸軍では土木工事用の大きなシャベルを大円匙(だいえんぴ)、携行用を小円匙(しょうえんぴ)と呼び分けていた。歩兵の個人携行物の一つである小円匙は、柄の中ほどと、刃の上側(柄の取りつけ部付近)に穴があけられており、ここにロープを通して肩に担えるようになっていた。取っ手は無いが柄の先端が丸く成形されている。折りたたむことはできないが、柄は外すことができ、携行時は二つに分離して背嚢に下げる。なお昭和13年(1938年)制定の九八式円匙は防弾鋼鈑で作られ、刃の中央に覗き穴があけられていて、簡易な防盾として使用できるようになっていた。

米陸軍では、第二次世界大戦中の1943年にM1943 Entrenching Tool(直訳すると「1943年型塹壕堀り工具」)を採用している。M1943は柄と刃の取りつけ部分が回転して折りたたみができる設計で、携行に優れるだけで無く、刃が柄と90度の角度で固定できるので、(くわ)のように使うことができた。取っ手はない。同様の構造のものが、現在でも各国で軍用あるいは民生用として製造されている。

ソビエト軍では砲身部分を柄として、スペード形の底板を刃として組み替えて使うことにより迫撃砲をシャベルとしても使うことができる、という変わった兵器が装備されていた。

脚注

  1. ^ JIS規格詳細図面
  2. ^ シャベルとスコップ、どちらが大きい?[出典無効]

関連項目