コラージュ
コラージュ(仏: 英: collage)とは現代絵画の技法の1つで、フランス語の「糊付け」を意味する言葉である。
通常の描画法によってではなく、ありとあらゆる性質とロジックのばらばらの素材(新聞の切り抜き、壁紙、書類、雑多な物体など)を組み合わせることで、例えば壁画のような造形作品を構成する芸術的な創作技法である。作品としての統一性は漸進的な並置を通して形成される。コラージュは絵画と彫刻の境界を消滅させることを可能にした。
絵画におけるコラージュはキュビスム時代にパブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックらが始めたパピエ・コレに端を発するといわれている。主観的構成の意図を持たない「意想外の組み合わせ」としてのコラージュは1919年にマックス・エルンストが発案した。主に新聞、布切れなどや針金、ビーズなどの絵具以外の物を色々と組み合わせて画面に貼り付けることにより特殊効果を生み出すことが出来る。後に様々な方向で工夫されて発展し、現在に至る。
先駆者
ジョルジュ・ブラックとパブロ・ピカソが1912-1913年に彼らのコンポジションに現実世界の要素をそのまま(釘、ボタン、ガラス片、新聞の切り抜き…)導入して最初期のコラージュもしくはパピエ・コレ(『籐椅子のある静物画』)を制作し、これはテクスチャを強調し、新しい造形空間を創造する結果となった。
発達
1941年まで、コラージュは異なった芸術運動の原則に従ってさまざまな創造技法を発達させた。
キュビスムによる革新の時期、ブラックとピカソは重なりあい追加される平面を作り出すことで絵画の空間を再構成することを可能にするコラージュの手法に訴えることで、より分かりやすいコンポジションへと回帰したのを見て取ることができる。
1918年から1931年にかけてはダダイストやシュールレアリストたちはコラージュを通じて(虚構や非現実的な事柄のために)現実世界の支配から距離を置き、人間を解放することへの意志を表明した。彼らはさまざまな方法で実にさまざまな素材を操った:1918年にはラウル・ハウスマン、ハンナ・ヘッヒ、ジョン・ハートフィールドが切り取った写真を使って政治ニュースに細工をした。1919年にはマックス・エルンストが古い版画からコラージュを作り幻想的な諸小説として再構成した。
ダダイストやシュールレアリストの秩序破壊的な活動がある一方で、1914年から1941年にかけてより落ち着いた、とりわけ装飾的な方向へと向いたコラージュの実践も発達した。アンリ・マティスは、たとえばヴァンスのロザリオ教会のステンドグラスなどの大きなガッシュ画を切断して下絵とした。
1941年以降は、ほとんどの画家がコラージュを実践するようになり、公衆も数多くの展覧会で目にした結果この技法に慣れたことで一種の凡庸化が見られるようになった。しかしながら何人かの芸術家は突出している。たとえばジャン・デュビュッフェはイマージュの官能性とコンポジションのダイナミズムを強調するためにコラージュを活用し、イジー・コラーシュ(fr:Jiri Kolar)は利用される手法によってコラージュを的確に分類してコラージュを理論化し、ベルナール・レキショは(食べ物や動物など)同一のイマージュを集積・反復することによって不快感を引き起こした[1]。
1992年にはフランスでコラージュ芸術家たちの初のヨーロッパ機関が設立された。当初は「Collectif Amer」、後には「Artcolle」と称している。コラージュ芸術のための500回以上の展覧会を開催し、1993年からは現代コラージュサロンをパリで毎年開催している。また初のコラージュ専門の美術館の創設にも関わった。設立者のピエール・ジャン・ヴァレにはコラージュの歴史と技法に関する数多くの著作があり、今日では現代コラージュ芸術において無視できない人物となっている[2]。
今日では、コラージュは広く使用される技法となり、世界中の美術館や展覧会でコラージュによる作品が見られるようになっている。
コラージュは芸術作品として知られているが、大学病院などでは心理療法の内の芸術療法として用いられている。日本カウンセリング学会会員、認定心理士の飯田真弓はコラージュを用いた新たな心理療法として“エコラージュ”を商標登録した。飯田真弓はその後産業カウンセラーの資格も取得。2012年【内閣府 地域社会雇用創造事業 社会起業インキュベーション事業】支援対象者に選定され一般社団法人国際エコラージュ協会を設立。代表理事に就任した。 “エコラージュ”はいらなくなった雑誌・チラシ・パンフレット・写真などを材料として用いることから環境を表す“エコ”と“コラージュ”を組み合わせて飯田真弓が作った造語である。従来のコラージュ療法は貼り付けるピースをあらかじめセラピスト側が用意するボックス法と、作品を作るクライアント自らがピースを選んで持ちより作品を作り上げるマガジンピクチャー法があるが“エコラージュ”では後者のマガジンピクチャー法を採用している。誰でも簡単に楽しみながら深層心理にアクセスすることが出来、潜在意識を顕在化、今まで気づかなかった自分自身のことを知ることが出来て腑に落ちるセラピーである。2009年7月、朝日放送「おはよう朝日です」“ジャルジャルクエスト”のコーナーでは“もうちょっと行かんとはんにゃ抜かれへんで!”とジャルジャルを一喝。司会の宮根誠司と板東英二、コメンテーターの井上公造も“これは面白い!”とコメントした。2009年9月にはNHKニュースおはよう関西で“今関西で人気のメンタルヘルス研修”として紹介され、その後、新聞・テレビ・雑誌などで多数紹介されている。企業のメンタルヘルス研修や、モチベーションアップ研修、コミュニケーション研修、親子のコミュニケーション講座、また、喪失体験者のグリーフケアとしても効果があり、内発的動機づけのツールとしてその可能性が注目されている。
審美的な革命
コラージュは古典的な現実世界の描写に嫌疑をかけ、芸術の実践そのものを革新した。芸術と人生を結びつけるためのイマージュの製造では使用される素材――使い古され傷んだオブジェを特別扱いするクルト・シュヴィッタースによれば「納戸やゴミ山に散らかったあらゆるガラクタ」――を通じて今や現実世界は作品の構成要素となった。「人生にも、人間にも、家具にも、感情にも完璧にきれいなものなど存在しないのだから」。
コラージュの諸形態
写真におけるコラージュ
フォトモンタージュを参照のこと。
フローラル・コラージュ
コラージュが発展する経過で生まれてきたものでコラージュ作品のうち、特に花・草などの植物素材から制作するものを言う。アンリ・マティスがはじめた。
文学的コラージュ
同一もしくは類似のテーマの画像を集めて、絵巻形式にした作品をCollage novelと呼ぶ。形式としてはグラフィックノベルに近い。ダダイストでシュールレアリストでもあったマックス・エルンストの作品が有名である。
音楽におけるコラージュ
「音楽の引用」ともいわれる。他人の作品などの動機やテーマなどを出して自己の作品との関係を強化する為に用いる。大家としてはベルント・アロイス・ツィンマーマンがその典型である。
ギャラリー
サムネイルをクリックすると拡大画像を表示します。 |
-
Majid Farahaniによるコラージュ
-
La Jalousie, フアン・グリスによるコラージュ(1914)
-
画像のコラージュ
脚注
参考文献
- Florian Rodari, Le collage, papiers collés, papiers déchirés, papiers découpés, éditions Skira, 1988.
- Françoise Mannin, Le collage, éditions Fleurus, 1996.
- Pierre-Jean Varet, L'art du collage à l'aube du XXIème siècle, éditions Artcolle, 2006.
- Pierre-Jean Varet, Les techniques de l'art du collage à l'aube du XXIème siècle, éditions Artcolle, 2008.
- Pierre-Jean Varet, La liberté est un art - Biographie de Jiri Kolar, éditions Artcolle, 2009.
- Pierre-Jean Varet, Sylvia Netcheva, ou l'art retrouvé du collage, éditions Artcolle, 2009.
- Bertrand Athouel , Les cahiers des colles , éditions Artcolle, 2009.