Theranos

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
セラノス
Theranos
種類 非公開会社
本社所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
カリフォルニア州パロアルト
設立 2003年
業種 医療
事業内容 医療用検査、血液検査(免停処分中)
代表者 エリザベス・ホームズ(創業者兼CEO)
従業員数 約800人(2015年末時点)[1]
24名以下(2018年4月時点)[1]
外部リンク Theranos at the Wayback Machine (archived 2018-08-28)
特記事項:2018年9月解散[2]
テンプレートを表示

セラノス: Theranos)は、血液検査を手がけていたアメリカ合衆国カリフォルニア州の企業。2018年9月に解散を決定した[3]

概要[編集]

スタンフォード大学の化学工学科の2年生だったエリザベス・ホームズは、2003年に大学を中退、「少量の血液で200種類以上の血液検査を迅速かつ安価に出来る」というふれ込みで、医療ベンチャー企業『セラノス』を創業した[4]

2014年6月に約3億5千万ドル(約380億円)を調達したことでセラノスの時価総額は約800億ドル(約9000億円)になったとされ、株式の過半を所有するホームズは「自力でビリオネアになった最年少の女性」として話題になった[5]オラクルラリー・エリソンも投資しており、社外取締役にはジョージ・シュルツ国務長官を始め、ウィリアム・ペリー国防長官ヘンリー・キッシンジャー元国務長官等、錚々たる面々が揃っていた[5]Appleの影響を多分に受けた同社は徹底した秘密主義で、全ての決裁権はホームズが握っていた[6]

事業内容は、被験者の指先から採取した少量の血液を診断センターに輸送し、「エジソン」という自社開発の診断器を使って迅速に検査結果を出すというもので、1滴の血液で30種類の検査項目を実施できるという。大手ドラッグストア・チェーンであるウォルグリーンの、全米数十カ所の店舗に血液採取センターを設置していた[5]

しかし、2015年にウォール・ストリート・ジャーナルが、セラノスによる血液検査の信憑性に疑問を投げかける記事を掲載してから、投資家の評価は下がり[5]、さらにセラノスの年商が1億ドル(約110億円)に達していないことが、フォーブスの調査で明らかになった[7]

2016年夏に、医療保険当局によって臨床検査の免許を取り消され、2016年10月5日、3カ所の検査施設を閉鎖すると共に、従業員のおよそ40%に当たる340人を解雇すると発表した[8]

2017年、2年間にわたる臨床検査ラボの運営停止を受け入れて、連邦機関のメディケア&メディケイド・サービスセンター(CMS)と和解。今後は自社で検査ラボを運営するのではなく、小型検査機器「ミニラボ」を医師や病院に売るとしている[9]

2018年4月、従業員125人の内、新たに100人を解雇[1]

2018年6月、連邦検察は、創業者で最高経営責任者だったエリザベス・ホームズと、元ナンバー2でホームズと恋人関係にあった最高執行責任者のサニー・バルワニを、詐欺罪で起訴[10]

2018年9月、株主に対して会社の解散をメールで通知。残った資金は同日から数ヵ月以内に債権者に対して返済される予定[3]

2022年1月3日、カリフォルニア州サンノゼの裁判所の陪席は、エリザベス・ホームズに対し、投資家に対する詐欺罪と通信詐欺罪3件の計4件について有罪評決を出した[11]。11月18日、裁判所はホームズに禁錮11年3月の判決を言い渡した[12]

主な株主[編集]

2018年5月に開示された資料によると、セラノスが集めた投資総額は6億8630万ドル。この投資で100万ドル以上を失った人物は、最低でも10名に上るとしている[13]

名称 出資額 出資時期
ウォルトン家 1億5000万ドル 2014年
ルパート・マードック 1億2500万ドル 不明
ベッツィ・デヴォス 1億ドル 2013年 - 2015年
コックス家 1億ドル 不明
カルロス・スリム 3000万ドル 不明
オッペンハイマー家 2000万ドル 不明
ライリー・ベクトル 600万ドル 不明

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c John Carreyrou (2018年4月10日). “Theranos Lays Off Most of Its Remaining Workforce: Tuesday’s cuts take blood-testing firm’s head count to two dozen or fewer employees”. The Wall Street Journal. 2022年9月20日閲覧。
  2. ^ Theranos landing page”. 2018年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月19日閲覧。
  3. ^ a b Erin Winick (2018年9月6日). “疑惑のバイオベンチャー「セラノス」がついに解散へ”. ASCII.jpビジネス. 2022年9月20日閲覧。
  4. ^ 投資コミュニティから世間に富を再配分している(かもしれない)Theranos”. 2016年12月25日閲覧。
  5. ^ a b c d Theranosのその後”. 2016年12月25日閲覧。
  6. ^ ジョブズになり損ねた女:DNA検査の寵児、エリザベス・ホームズの墜落, http://wired.jp/special/2016/talented-miss-holmes/ 
  7. ^ 疑惑のユニコーン「セラノス」 1兆円の企業価値がゼロになった理由, http://forbesjapan.com/articles/detail/12367 
  8. ^ 「疑惑」のセラノス、検査施設を閉鎖へ 従業員4割を解雇, http://forbesjapan.com/articles/detail/13855 
  9. ^ 失墜したセラノスが見せる驚きのしぶとさ, http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061700004/050200194/ 
  10. ^ “連邦検察はセラノス創業者と元COOを詐欺罪で刑事訴追”. Onebox News. (2018年6月21日). http://oneboxnews.com/articles/criminal-prosecution-of-elizabeth-holmes-2018-6 
  11. ^ 米セラノスの元CEOに有罪評決、血液検査で投資家相手に詐欺”. BBC (2021年1月4日). 2022年1月5日閲覧。
  12. ^ “「次代のジョブズ」禁錮刑 米ベンチャー巡る詐欺事件”. 産経新聞. (2022年11月19日). https://www.sankei.com/article/20221119-XR2NJ42AVFOT7BKUVILHHAWF5Q/ 2022年11月19日閲覧。 
  13. ^ “セラノスに騙された世界でもっと最も裕福で著名な人々”. Onebox News. (2018年5月9日). http://oneboxnews.com/articles/millionaire-deceived-by-theranos-2018-5 

参考文献[編集]

  • ジョン・キャリールー 著、関美和、櫻井祐子 訳『BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相』集英社、2021年2月28日。ISBN 978-4-08-786126-6 

外部リンク[編集]