RIM-67 (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
RIM-67 スタンダード ER
種類 艦隊防空ミサイル
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
性能諸元
ミサイル直径 0.343m
ミサイル全長 7.98 m
ミサイル全幅 1.57 m
ミサイル重量 1,341 kg
弾頭 62kg (爆風破片効果式)
信管 近接信管
射程 185km
射高 24,400m
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 セミアクティブ・レーダー・ホーミング
飛翔速度 マッハ3.5
テンプレートを表示

RIM-67 スタンダード英語: RIM-67 Standard)は、アメリカ合衆国レイセオン社が開発した艦対空ミサイルスタンダードミサイルの長射程型(Extended Range、ER)にあたる。

RIM-67 SM-1ER[編集]

アメリカ海軍は、第二次世界大戦末期より、全く新しい艦隊防空火力として艦対空ミサイル(SAM)の開発に着手していた。戦後も、ジェット機の発達に伴う経空脅威の増大を受けて開発は拡大され、1956年にはテリア、1959年にタロス、そして1962年にはターターが艦隊配備された。これらは3Tと通称され、タロスはミサイル巡洋艦、テリアはミサイルフリゲート(DLG/DLGN)、そしてターターはミサイル駆逐艦(DDG)に搭載されて広く配備された[1]

その間も経空脅威の増大は続いており、3Tでは早晩対処できなくなる恐れが指摘された。このことから、これらの在来型防空艦の配備と並行して、1958年からは、早くも3Tの次の世代の防空システムとしてタイフォン・システムの開発が開始された[1]。タイフォンMR(旧称"スーパー・ターター")搭載のDDGは1961年度から[2]、またタイフォンLR(旧称"スーパー・タロス")搭載のDLGないしDLGNは1963年度から建造される予定とされていた[3]

しかしタイフォンの開発は、要求性能の高さに対する技術水準の低さ、統合システムの開発への経験不足により難渋し、1963年にキャンセルされた[1]。これにより、アメリカ海軍の防空艦整備に重大な間隙が生じたことから、タイフォンのキャンセルで浮いた予算の多くが、3Tの改良計画に振り分けられた[4]。全般的な改良計画のひとつとしてテリアとターターへの半導体技術の導入が進められていたが、もともとテリアから派生するかたちでターターが開発されたことから、両者には共通する部分が多かった。このことから、テリアとターターの改良計画は完全に合流することになり、両者を共通の基本設計のミサイルによって更新するため開発されたのが、本ミサイルである[3]。開発計画は1963年10月に正式に提案され、1967年度より調達が開始された[5]。 このうち、RIM-67A SM-1ERはテリアの後継であり、基本的には、RIM-66 SM-1MRを原型としてブースターを付した設計となっている。また弾体に内蔵されたロケットエンジン(サステナー)も変更されており、サステナーとしてはMk.30、ブースターとしてはMk.12が搭載された。射程は40海里 (74 km)とされていたが、1971年の実射演習では70海里 (130 km)の射程を記録している[5]

RIM-67 SM-2ER[編集]

SM-2シリーズは、SM-1シリーズをもとにプログラマブルなオートパイロットを導入し、指令誘導に対応した改良型である。ミサイルは、母艦からの指令誘導を受けつつ目標近傍まで飛翔したのち、セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)誘導によって突入する。すなわち、SARH誘導のためのレーダービームの照射は、ミサイルの航程の終末部分だけでよくなっており、同時に複数の目標に対処できるようになった。なお、これはアメリカの戦術ミサイルとして初めて慣性航法装置を導入したものであった[6]

RIM-67 SM-2ER

SM-2シリーズの長射程型としては、まずSM-1ERをもとにしてSM-2MRと同様の設計変更を加えたものが開発された。制式番号はSM-1ERのものを踏襲しており、SM-2MRブロックI(RIM-66C/D)に対応するものとしてRIM-67Bが制式化された。またRIM-66G/H/Jに対応するブロックIIはRIM-67Cとされており、Mk.70ブースターが搭載された。RIM-66K/L/Mに対応するブロックIIIはRIM-67Dとされ、サステナーをMk.30 mod.4に更新するとともに、新開発の近接信管(TDD Mk.45 mod.8)を搭載した。SM-2MRが基本的にイージス艦用で、後にターター艦にもバックフィットされていったのに対して、これらはいずれもテリア・システム搭載艦でのみ運用された[7]。 その後、イージス艦のためにMk.41 VLSに対応した長射程型も開発されることになり、RIM-67Eと称されるという噂もあったが、実際にはRIM-156として、別のシリーズになった[8]

採用国と搭載艦艇[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c 藤木 2006.
  2. ^ Friedman 2004, pp. 310–311.
  3. ^ a b Friedman 2004, pp. 219–225.
  4. ^ Friedman 2004, p. 316.
  5. ^ a b Friedman 1997, pp. 414–416.
  6. ^ Friedman 1997, pp. 416–417.
  7. ^ Parsch 2004.
  8. ^ Parsch 2007b.

参考文献[編集]

  • Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 9781557502681 
  • Friedman, Norman (2004), U.S. Destroyers: An Illustrated Design History, Revised Edition, Naval Institute Press, ISBN 978-1557504425 
  • Parsch, Andreas (2004年). “Directory of U.S. Military Rockets and Missiles - RIM-67” (英語). 2017年10月20日閲覧。
  • Parsch, Andreas (2007b). “Directory of U.S. Military Rockets and Missiles - RIM-156” (英語). 2017年10月20日閲覧。
  • 藤木平八郎「イージス・システム開発の歩み (特集・イージス艦発達史)」『世界の艦船』第667号、海人社、69-75頁、2006年12月。 NAID 40015140492 

関連項目[編集]

ウィキメディア・コモンズには、RIM-67 スタンダードERに関するカテゴリがあります。