GROUSE ARROW

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
GROUSE ARROW
基本情報
船種 ばら積み貨物船
船籍 バハマ
所有者 La Tour Blance Shipping Corpolation.[1]
建造所 三井造船玉野造船所
航行区域 遠洋区域
船級 DnV
IMO番号 8918215
MMSI番号 308077000
経歴
竣工 1991年7月[1]
現況 現役
要目
総トン数 44,398トン[1]
載貨重量 42,276トン[1]
全長 185.2m[1]
垂線間長 175m[1]
30m[1]
深さ 18.2m[1]
喫水 12.2m(夏季満載喫水)[1]
主機関 三井B&W 5 S60MC型 1基[1]
最大速力 17.45ノット(試運転時)[1]
乗組員 30名[1]
テンプレートを表示

GROUSE ARROW(グラウス アロー)は、1991年に竣工したばら積み貨物船である。新聞巻取紙など濡損を嫌う貨物を考慮し、ホールド(貨物艙)上部の全面を鋼構造の屋根で覆った、世界初の全天候型ばら積み貨物船として建造された。

構造[編集]

「トータリーエンクローズドタイプ・バルクキャリア」と称する、全天候型荷役可能な構造を持つ船舶である[2]。上甲板全面は全長150m、幅30m、高さ13mの鋼構造の屋根で覆われ、内部には横隔壁のない大スパンの構造になっている[1]。屋根の構造は燃費やコストを考慮すると薄い方がいいが、荷役用クレーンを安定して稼働させるためには十分な強度が求められ、材質の選択や強度の計算が要求された[3]。ホールドは第1~第6まであり、そのうち第2~第5艙は左右舷に分かれている。各艙は内部が平滑な箱型の形状を持つ[1]。ハッチはなく、そのためハッチコーミングより上部まで貨物を積みつけることが可能である。反面、ハッチがないことから区画ごとの湿度管理ができないため、全区画の湿度を制御する除湿装置や、機関室内の暖気の利用などの工夫が行われている[4]。天井に設置された2基のクレーンはいずれも第1~第6まで全艙の荷役が可能で、船外への積み下ろしは第2・第5艙の左舷に設けたサイドポートから行う。雨天時には扉の裏側に格納された防水カーテンで、積み荷を濡らさず荷役することが可能である[5]。荷役は船内のクレーンでしか行えず、船外への積み下ろしはサイドポートを介してしか行うことができないため、クレーンには高い信頼性と迅速性が求められた[1]。荷役効率を高めるため、クレーンには半自動運転システムが搭載されている[4]。機関部は後部にあり、居住区の一部はホールド中央の上部に配置される[1]

本船は岡山県玉野市三井造船玉野造船所で1991年(平成3年)に竣工し、ノルウェーの船会社に引き渡された[3]。1992年3月に竣工し、La Tour Rouge Shipping Corpolationに引き渡された同型の2番船「MOZU ARROW」とともに、日本を含む東アジアカナダ西海岸の間でペーパーロールやパルプベール、アルミニウムインゴット[1]鉄鋼コイル[4]などを輸送する。

本船の独創的な構造は、船主からの提案に基づく。本船と「MOZU ARROW」を含め、同型船は3隻建造されたが、それ以降は建造されることはなかったようである[3]

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 三井造船船舶海洋基本設計部世界初の全天候型撤積運搬船“GROUSE ARROW”&“MOZU ARROW”の概要」(PDF)『船の科学』第15巻第1号、船舶技術協会、1992年5月10日、38-43頁、2020年9月12日閲覧 
  • 三井造船「世界初の全天候型パラ積運搬船"グラウスアロー号"」『Techno marine 日本造船学会誌』第751巻、日本造船学会、1992年、63頁、ISSN 0916-8699NAID 1100038690892020年9月13日閲覧 
  • 吉識 恒夫『造船技術の進展―世界を制した専用船―』成山堂書店、2007年10月8日。ISBN 978-4-425-30321-2 

外部リンク[編集]