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GREY

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GREY』(グレイ)は、たがみよしひさによる日本漫画作品、およびそれを原作としたアニメーション映画

概要

月刊少年キャプテン』(徳間書店1985年2月号(創刊号)から1986年9月号まで連載された。連載終了後は、同誌の1986年10月号から1986年12月号にかけて本作を基にした4コマギャグ漫画わたしがGREYだ!!』も連載された。1986年にはアニメ映画化もされている。単行本は少年キャプテンコミックス全3巻、少年キャプテンコミックスデラックス全2巻。後にぶんか社から全2巻のコミック文庫が刊行されている。

たがみよしひさのSF漫画の代表作の1つで、独特の世界観で人気を博した。なお、本作は他のたがみの作品と違いキャラクターは8頭身のみで描かれている。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


あらすじ

時は遠い未来。人々は「市民」(シチズン)の称号を得て「市」(シティ)で暮らす権利を得るために「戦士」(トループス)となって戦い続けていた。その中で、人々から「死神」と恐れられている戦士がいた。その男の名はグレイ。わずか13回の戦闘でF級からC級戦士になった男である。

ある時グレイは、自身の恩人・レッドが、地下組織(レジスタント)の攻撃を受けたのを知る。レッドの生死もわからぬまま、先の戦闘でともに生き残った戦士・ノーヴァとともに地下組織・シダラへ向かうグレイ。しかし、シダラで出合った地下組織の男・リーからレッドは地下組織に入り、もうひとつの地下組織・ナゴシに向かったという情報を得る。リーと共にナゴシを目指すグレイとノーヴァ。ナゴシへと向かう途中でリーとノーヴァを失うが、それでも数々の戦闘を切りぬけていく中で、グレイは機械人・ロバートと出会い、地下組織が生まれた理由と市中央管制脳(ビッグ・ママ)の野望を知る。こうして、ナゴシとビッグ・ママを潰すためにグレイは戦線へ向かうのであった。

登場人物

本節で使用されている専門用語については後述する。

グレイ
本作の主人公。町303所属のC級戦士(物語序盤でB級戦士に昇格)。民だった頃は戦士に因縁をつけられて殴られても反抗する素振りすら見せない無気力の塊のような男だったが、恋人だったリップが戦士になって最初の戦闘で死亡すると、リップが愛用したヘルメットをかぶり、戦士となった。戦士となってわずか13回の戦闘でC級となったこと、また13回の戦闘のうち9回でグレイを除いて部隊が全滅していることから、他の戦士たちからは「死神」と呼ばれている。本人曰く『ろくな装備がもらえないため』、武器の修理や即興での改造が得意。戦闘能力も人並み以上にあり、銃火器から大型戦闘兵器に至るまで、特に学習することなく使いこなす順応性の高さを見せる。序盤では生き残るためなら自分が不条理と判断した命令は無視し、仲間を犠牲にしてまで自分が生き残ることを優先させていたが、物語中盤ではそういった面を見せることはなくなり、ぶっきらぼうながらも仲間を思いやる発言が目立つようになった。ナゴシに潜入した際に左腕を失い致命傷を負うが、機械人化手術によってナゴシの最新軍事テクノロジーの粋を結集した機械人として復活。全ての元凶たる市中央管制脳(ビッグ・ママ)の打倒を目指す。
リップ
グレイのかつての恋人。市民になるためにグレイと別れ戦士になるが、初めて参加した戦闘であっけなく死亡した。リップの死亡を知ったグレイは、自らも戦士となる。
レッド
リップの上司で、09283分隊の隊長。C級戦士で、B級戦士に昇格した際に戦士ではなく検査官となった。グレイにとっても一時期上官だった男で、分隊に所属していた際に何度も助けられ、生き残るための戦闘術を教えられた恩人であった。検査官としての活動中に乗車していた労働車(ワーカー)が地下組織の戦車ロケットランチャーの直撃を受けて生死不明となるが、後に機械人として復活し、地下組織の一員となってグレイの前に現れた。機械人になったと同時に洗脳を受けており、グレイをナゴシに懐柔しようとしたが、最後はグレイに倒された。
クリケット
検査官としてのレッドの相棒。レッドの労働車に同乗していたが、地下組織の戦車のロケットランチャーの直撃を受けて死亡する。
ホーク
16422分隊の隊長。C級戦士。戦場での愛車はKV-2。隊長としてグレイにに命令するが無視される。後にティムと共に直撃を受けて死亡した。
ノーヴァ
16422分隊の隊員のひとり。初登場時はF級戦士で、後にE級へランクアップした。親友のテュレスを「助かる見込みがない」と容赦なく射殺したグレイを最初は憎んでいたが、戦いの中でグレイの真意を知ってからは、物語中盤までグレイと行動を共にした。16422分隊の中では最初の戦闘でグレイを除き唯一生き残ったが、後にリーと共にナゴシの偵察機の不意打ちを受けて死亡する。
スカイ
16422分隊の隊員のひとり。D級戦士。戦闘用に改造されたオートバイを操る。およそ60名の敵を前に全滅させると強気な面を見せる。作戦を無視して味方を危険に晒すグレイに敵意を抱いていたが、16422分隊の中では最も早く死亡した。
ティム
16422分隊の隊員のひとり。D級戦士。ホークのKV-2に同乗していたが、ホークと共に直撃を受けて死亡する。
レオ
16422分隊の隊員のひとり。D級戦士。ホークのKV-2に同乗していたが、撃破された際に重傷を負う。その後もグレイたちと行動を共にしていたが、自分が作戦終了まで持たない事を悟るとグレイとノーヴァを生かすために自らが囮となり、1人で敵陣に突撃を仕掛けて死亡した。
テュレス
16422分隊の隊員のひとり。E級戦士。ホークのKV-2に同乗していたひとりで、ノーヴァとは戦士になる前からの親友だった。KV-2が撃破された際に瀕死の重傷を負いノーヴァに心配されていたが、最後は「それ以上苦しませるな」と言い放つグレイに射殺された。
コモン・ロペ
町303の中央管制脳(リトル・ママ)のディレクターを務める機械人。町303のみならず、他の町にもディレクターとして配置されている。
シュア
町のリトル・ママ管理下の人型機械。受付機能を持ち、各種申請をリトル・ママに取り次ぐ。人型機械としてはノーヴァに不振がられるほど「人間臭い部分」がある。他の町にも同じ受付機械が配置されている。
リー
地下組織「シダラ」に所属する男。関係的にはグレイたちの敵でありながら、シダラで先頭に巻きこまれたグレイとノーヴァを助け、行動を共にした。試作型の阿吽(オーム)を修理して動作可能にするなど、メカニックには強い。既婚者。ノーヴァに気のある素振りも見せていたが、最後はノーヴァと共にナゴシの偵察機の不意打ちを受けて死亡する。
ロバート・J・デミトリー
まだ世界中に人間があふれていた時代に生まれた500歳の機械人。さまざまな知識を持ち、グレイに市と地下組織が誕生した経緯を話した。それぞれの町に配置されたディレクター・コモン・ロペは彼のコピーであり、さらにリトル・ママの監視役として「シュア」を配置した。ビッグ・ママを作ったのも彼である。体は上半身のみで自身で歩くことはできず、グレイに運ばれながら行動を共にした。自身では移動できないが、機械と接続することにより、その機械を操作することが可能。ナゴシへの潜入の際に囮となって体を失うが、意識をナゴシの守護機械の狛犬(アイオン)に移し、最後はナゴシを道連れに自爆した。
シダラ
地下組織「シダラ」の宮司。元は町424のB級戦士で、滅びた町424に代わる町の再建を指揮し、町ができると宮司となった。彼が作った町は「シダラ」と呼ばれ、それは後に地下組織の名前ともなった。実は戦場から帰還した翌日に暴走したリトル・ママに殺されており、脳死寸前のシダラの脳からその記憶を全て取り出し、インプットした電子脳を人型に埋め込んだ人型機械であるが、本人は人型機械だということは知らず、自分を機械人だと思っている。初登場時はグレイと対立していたが羅阿羅に制止され、その後共闘して市の浮遊戦艦の撃墜に向かうが、浮遊戦艦の熱矢(ヒートアロー)を受けて死亡した。
羅阿羅(らあら)
地下組織「ナゴシ」を組織する人物。ビッグ・ママ粉砕のため、シダラに地下組織を組織させ、自らも地下組織を組織した。見た目は普通の女性だが、実は暴走したリトル・ママに殺されたシダラの恋人・羅阿羅に町424の受付機械「シュア」の中枢部を移植して蘇った機械人で、頭と胸に機械を含んでいる。半死半生のグレイに、ナゴシの最新テクノロジーを用いた機械人化手術を指示した。物語の終盤、グレイと行動を共にして市へ突入、重傷を負いながらも最後はビッグ・ママに至る障害を排除するために自爆して、グレイにビッグ・ママへの道を開いた。

用語解説

市(シティ)
充分な食糧や住居、敵の侵略からも保証される市民たちの住処。
市民(シチズン)
市で暮らすために必要な称号。戦士となり、級(クラス)Aになると市民権を申請する資格ができる。
戦士(トループス)
市民になるために戦う人間。級Fからスタートし、Aまでランクがある。他の町の戦士と戦い、1000クレジットで級が1段階上がる。ただし、1戦闘270時間につき50クレジット、敵戦士を1人倒しても30クレジットしか上がらないため、1段階上げるのにも数多くの戦闘をすることになる。グレイたちのように戦区(エリア)に派遣されて他の町の部隊と戦闘行為を行う攻撃隊(オフェンス)と、町の外敵からの防衛と町内部の治安維持を担当する守備隊(ディフェンス)に大別される。
民(ピープル)
戦士でも市民でもない、町に住む最下級の人間。
検査官(インスペクター)
非武装地帯と呼ばれる中立地まで戦闘を行う部隊を運び、戦闘終了後に生存者を回収する職業。町にある工場(ファクトリイ)で生産・整備される兵器の管理も行う。戦士とは別に、死亡する心配もなく市民になれる職業で、戦闘に晒される危険がない反面、A級になるには時間がかかる。B級になってようやく任官資格が認められ、5年の任期を経て市民になる資格となる。
町(タウン)
戦士たちの拠点。いわば戦士たちのグループであり、そのグループ同士での争いが行われている。「町」の下に1から3桁の数字(タウンナンバア)を付けて表記され、この数字によって人口や戦力が異なる。
地下組織(レジスタント)
戦士たちとは別に、生き残った戦士を兵器や食糧欲しさに殺す組織とされているが、実際は番号制に反発し、市の打倒を目論む組織。一部の地下組織は並の町をはるかに凌駕する規模と戦闘能力、テクノロジーを有する。「シダラ」や「ナゴシ」がこれにあたる。
シダラ
グレイとノーヴァがレッドの行方を追って最初に潜入した地下組織。かつて町424と呼ばれていた町で、暴走したリトル・ママによって滅びたが、人型機械となったシダラの指揮のもとで町を再建、そのまま地下組織となった。外見は神社である。
ナゴシ
羅阿羅が作った地下組織。地下組織としては非常に大規模である。空中に浮かぶ移動要塞であり、その外見は菩薩を彷彿とさせるもの。市が警戒するほどの重武装と驚異的な軍事テクノロジーを持っており、必殺兵器「クラッグ・ショット」は一撃で大規模部隊を殲滅させる威力を持つ。
機械人(ハーフ)
文字通り、体の一部が機械でできている人間。機械人化手術をうけることにより、死亡・もしくは致命傷を負った人間を復活させることもできる。物語終盤のグレイ、ナゴシに与したときのレッド、羅阿羅が該当する。
人型機械、人型(ドール)
機械人と異なり、生身の部分がまったくない純粋な機械。物語中ではシダラが該当する。また、物語中ではシダラのように自立稼動するもの以外にも、人間が搭乗して操作する一部の戦闘機械がこのように呼称される。
隊長(コマンダー)
戦士の分隊のリーダー的存在。地下組織の場合は宮司(グウジ)と呼ばれている。
中央管制脳(リトル・ママ)
それぞれの町に存在する市中央管制脳(ビッグ・ママ)の端末。町の中で戦士たちを戦闘に出す役目を持ち、町中の機械を制御している。
市中央管制脳(ビッグ・ママ)
計算機(コンピューター)が「意識」を持ち始めた時代に、ロバート・J・デミトリーにより最初に誕生した計算機で、かつては「TOY(トーイ)」と呼ばれた。本作の黒幕的存在で、人間が滅亡を希望していると考え、市民になる権利として階級制(クラスナンバア)を敷き、町同士の戦争を起こした張本人である。最終回でグレイと対面、自らを「完璧」「真理」「絶対」さらには「神」であると豪語し、自らの考えに反対するグレイを襲うが、グレイの問い掛けでシステムに変調をきたし、最後はグレイの一撃によって破壊された。

登場メカニック

物語当初は地上戦がメインであり、登場する兵器も第二次世界大戦時から現代にかけて製造された戦車や自走砲が主であったが、中盤辺りからはさまざまな近未来兵器が登場するようになった。

関連書誌

単行本

その他

  • 『GREY ILLUSTRATIONS』(1987年1月10日発行、徳間書店)
  • 『GREY ベスト・コレクション』(1987年2月25日発行、徳間書店)

映画版

GREY デジタル・ターゲット』と題して、1986年12月にアニメ映画が公開された。同時上映は『強殖装甲ガイバー』。1987年にはVHSLDVHDがリリース。DVDは海外でのみリリースされた。

内容は「APPROACH」という9つの章で分かれている。原作の最後のビッグ・ママとの決戦のシーンがないのは、監督である出崎哲が、戦いの描写が中心となることを避けるという意向によるもの[1]。その他、原作では途中で死亡するノーヴァが最後まで生き残り、リップに次ぐグレイの恋人となるなど原作との違いが多く、あまり高評価は得られずに終わった。

スタッフ

  • 原作:たがみよしひさ
  • 製作:山下辰巳
  • 企画:和田豊、尾形英夫、佐藤俊彦
  • プロデューサー:坂本誠一
  • 脚本:平野靖士、小出一巳、出崎哲
  • 脚本監修:今泉俊昭
  • 監督:出崎哲
  • 演出:冨永恒雄
  • キャラクター・デザイン:四分一節子
  • メカニックデザイン:前島健一、鈴木伸一
  • 作画監督:小林ゆかり
  • 撮影:菅谷信行
  • 美術監督:勝又激
  • 音響監督:清水勝則
  • 音楽:淡海悟郎
  • 主題歌:『LOVE IS HEART-星座の子供たち-』(歌:杉本誘里
  • 制作協力:マジックバス
  • 制作:葦プロダクション
  • 協力:徳間書店
  • 製作:徳間ジャパン
  • 配給:東映クラシックフィルム

キャスト

脚注

  1. ^ 『劇場アニメ70年史』 p122 徳間書店

外部リンク