オオアルマジロ

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オオアルマジロ
オオアルマジロ
オオアルマジロ Priodontes maximus
保全状況評価[1][2][3]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 被甲目 Cingulata
: Chlamyphoridae
亜科 : Tolypeutinae
: オオアルマジロ属
Priodontes F. Cuvier, 1825[4][5][6]
: オオアルマジロ P. maximus
学名
Priodontes maximus (Kerr, 1792)[4][5]
シノニム

Dasypus maximus Kerr, 1792
Dasypus giganteus
E. Geoffroy Saint-Hilaire, 1803
Dasypus gigas G. Cuvier, 1817

和名
オオアルマジロ[7]
英名
Giant armadillo[3][5][6][8]

分布域

オオアルマジロPriodontes maximus)は、被甲目Chlamyphoridae科(旧アルマジロ科から分割)オオアルマジロ属に分類される哺乳類。本種のみでオオアルマジロ属を構成する。

分布[編集]

アルゼンチン北東部、エクアドルガイアナコロンビア南部、スリナムパラグアイブラジル仏領ギアナベネズエラペルー[3]ウルグアイでは絶滅[3]

模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)はカイエンヌ(仏領ギアナ)[4]

形態[編集]

体長75 - 100センチメートル[6][7]。尾長50 - 55センチメートル[7]体重18.7 - 32.3キログラム[6]。飼育下では体重80キログラムに達した例もある[4]。現生のアルマジロ類では最大種[4]。種小名maximusは「非常に大きい、最大の」の意。全身は体毛が変化した鱗状の板(鱗甲板)で覆われる[7]。頭部の鱗甲板(頭甲)は卵型[7]。頭甲と肩部の鱗甲板(肩甲)は頸帯で繋がる[7]。肩甲と腰の鱗甲板(腰甲)の間にある帯状の鱗甲板(帯甲)は11 - 13本で[4][6]、甲全体を動かすことができる[7]。尾の鱗甲板はほぼ均一な大きさで、不規則な横帯状に並ぶ[7]。鱗甲板の色彩は淡褐色や黒褐色で、頭部や尾の下縁は黄白色で境目は明瞭[7]

耳介は小型で[4]、卵型[7]。歯は100本に達し、陸生哺乳類で最も多い[4]。指趾は5本[7]。前肢の爪は大型で特に第3指の爪は20.3センチメートルに達する[4][6]。染色体数は2n=50[4]

出産直後の幼獣は体重113グラム[6][8]。乳頭の数は1対[7]

生態[編集]

標高500メートル以下の地域に生息する[3][8]森林やその周辺にあるサバンナなどに生息し、水辺を好む[7]。少なくとも平均452.5ヘクタールの行動圏内で生活する[6]夜行性[7]。本来は昼行性だったが、乱獲により人間を恐れて夜行性になったとする説もある[7]。平均で幅41.3センチメートル、高さ30.8センチメートルの巣穴を掘って生活する[4]。ブラジルでは巣穴の68 %が草原に、28 % が低木林、3 %が森林にあったとする報告例がある[6][7]。後肢だけで直立し[7]、自分よりも高い1メートルの壁を乗り越えることもできる[4]。動きは俊敏[7]。危険を感じると穴を掘って隠れる[7]

主にアリ類やシロアリを食べるが、甲虫類・ゴキブリ類などの他の昆虫、クモ、サソリ、多足類、小型のヘビ、動物の死骸なども食べる[4]。マットグロッソ州での糞の内容物調査では56.8 %をアリ類が、36.8 %をシロアリ類が占めていたという報告例もある[4]。まれに植物質を食べることもあり胃の内容物から種子が見つかったり、果実を食べた報告例もある[4]。前肢で蟻塚や地面を掘り起こし、中にいる獲物を食べる[7]

繁殖様式は胎生。妊娠期間は約4か月[3][6][7]。授乳期間は4 - 6週間[6][7][8]。生後9 - 12か月で性成熟する[6][7][8]。一方でこれらの数値は広く引用されているものの新生児の体重も含め1983年のMerrettによる単一の報告例によるものであり、他の文献や報告例で実証はされておらず不正確な可能性もあるという反論もある[4]。1回に1 - 2頭(主に1頭)の幼獣を産む[3][4][6][7][8]。長寿例としては1972年にブラジルで捕獲され、1975年にオランダの動物園で飼育開始、1988年にサンアントニオ動物園で死亡した個体の例(飼育期間12年7か月、推定16年)がある[4]

人間との関係[編集]

ブラジルのアマゾン川流域やパラグアイでは食用とされることもある[7]。甲や尾・爪などが、揺り籠や鍋などに利用されることもある[3]

森林伐採・宅地開発・農地開発・道路建設などによる生息地の破壊、食用の乱獲などにより生息数は激減している[3][7]。1980年代に生息数が約50%減少したことが示唆されている[6][7]。1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]

出典[編集]

  1. ^ Appendices I, II and III<https://cites.org/eng>(Accessed 23/10/2017)
  2. ^ a b UNEP (2017). Priodontes maximus. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 23/10/2017)
  3. ^ a b c d e f g h i Anacleto, T.C.S., Miranda, F., Medri, I., Cuellar, E., Abba, A.M. & Superina, M. 2014. Priodontes maximus. The IUCN Red List of Threatened Species 2014: e.T18144A47442343. doi:10.2305/IUCN.UK.2014-1.RLTS.T18144A47442343.en, Downloaded on 23 October 2017.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Tracy S. Carter, Mariella Superina, David M. Leslie, Jr., Priodontes maximus (Cingulata: Chlamyphoridae), Mammalian Species Volume 48, Number 932, American Society of Mammalogists, 2016, Pages 21-34.
  5. ^ a b c Alfred L. Gardner, "Order Cingulata," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 94-99.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n Ronald M. Nowak, "Giant Armadillo," Walker’s Mammals of the World, Sixth Edition, The Johns Hopkins University Press, 1999, pp. 161-162.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 小原秀雄 「オオアルマジロ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ2 アマゾン』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2001年、40、109頁。
  8. ^ a b c d e f Armitage, D. 2004. "Priodontes maximus" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed October 29, 2015 at http://animaldiversity.org/accounts/Priodontes_maximus/

関連項目[編集]