自動車の整備

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

自動車[注 1]の整備は、整備・点検を通じて、その安全と性能を保つことを目的とする。交通上の安全を守り、公害を引き起こさないために、整備を職業とする者だけでなく、自動車を取り扱う者すべてに、整備・点検は、法的にも求められている[2]

概要[編集]

自動車は人間社会に密着しており、巨大な質量の塊が身近を高速で走行するものであるから、その機能を万全なものにしておくことは、交通にまつわる安全の大きな前提となる。自動車整備はこれに応えるものであり、整備を怠れば不調、故障、引いては大きな事故へとつながっていく。また、自動車の運転は肉体的・精神的な調子に左右されるものであるが、そもそも自動車自体の整備が万全でないと、運転者は常にその両面で不安にさらされることになり、安全性は大きく損なわれてしまう。十分に整備された自動車を操る醍醐味は、整備不良の車と比べ大きく優っており、快適性の面からも整備が推奨される。[3]

自動車は様々な機械部品から成り立っていて、わずかでも使用すればそれに伴う劣化や摩耗により性能の低下が生じていく。これらが進めば、自動車の不調、故障、引いては大きな交通事故へと繋がるため、所有者には自身による点検、専門業者の力を借りた整備が求められている。[注 2]

「自動車の整備技術は勘に頼る所が多い」とも言われるが、電子技術などが進歩した今日ではそれが通用する所は少なく、その整備は、自動車の原理を理解し、計測機器を用いた科学的調査を基本とし、加えて自動車に対する愛情と整備に対する心構えを持って行うことが必要である。[4]

点検[編集]

整備不足から来る危険を避け、また排気される有害な煙や騒音を発生させて他人に迷惑をかけるのを防止する為に、運行前の日常点検が励行されており、また定期点検が義務付けられている。[注 2]

日常点検[編集]

走行距離や運行時の状態などから判断して適切な時期に点検を行わねばならない[5]

自家用自動車では以下の項目を点検する。

優先確認
  • 前回の運行において異状が認められた箇所
    • 異状を認めた箇所を優先して点検し、運行に支障がないか確認する。
車周り
  • タイヤ
    • タイヤの空気圧は適当か。
    • 亀裂や損傷、異状な摩耗がないか。
    • 溝の深さは十分あるか。
  • 灯火装置及び方向指示器
    • 点灯又は点滅が正しく行われるか。
    • 汚れや損傷がないか。
  • ナンバープレートなど、車外に取り付けられているものがしっかり固定されているか。[6]
運転席
  • 原動機
    • 速やかに始動するか。
    • 始動時やアイドリング時に異音がないか。
    • 低速・加速の状態が適当か。
  • ブレーキ
    • ブレーキ・ペダルの踏みしろが適当で、ブレーキのききが十分か。[注 3]
    • 駐車ブレーキ・レバーの引きしろが適当か。[注 4]
  • ウインド・ウォッシャ及びワイパー
    • ウインド・ウォッシャがちゃんと噴射されるか。
    • ワイパーを動かしてみてちゃんと拭き取られるか。
  • 表示機器
    • 各種表示が正常に働くか。[6]
エンジンルーム
  • バッテリ
    • 液量が規定の範囲内か、車両を揺らすなどして確認する。
  • 原動機
    • エンジン・オイルの量が適当か。
  • ラジエーター
    • 冷却水の量が適当か。
  • ウインド・ウォッシャ
    • ウインド・ウォッシャの液量が適当か。

事業用自動車や自家用であっても貨物自動車の場合はさらに詳細な点検が必要となる。

[7] [5] [8]

定期点検[編集]

日常点検は外から見た簡易なものであるため、それとは別に専門の資格を備えた整備士による分解点検が適時求められる[9]

日本では事業用の自動車、自家用の大型自動車、ならびに中型・大型・普通貨物自動車のレンタカーは三ヶ月ごとに、自家用普通自動車のレンタカーは六ヶ月ごとに、自家用普通自動車については一年ごとの定期点検が義務付けられている。

道路運送車両法に基づく自動車検査登録制度(いわゆる"車検")の検査に際して行う場合が多いが、この検査は安全性を保証するものではないので、整備点検自体は普段から行うことが求められている[10]

道具[編集]

日本では、自動車の使用者は車庫に以下の器具を備えることが義務付けられている[11]

測定用器具[編集]

作業用器具・工具[編集]

手工具[編集]

※<>内は、有していることが望ましいもの。

整備店[編集]

整備を依託するには、その車の知識を豊富に持つ製造業者が認定した自動車ディーラーで行うことがもっとも望ましい。 [12]

日本では国家資格として自動車整備士が設けられており、業として自動車分解整備事業を行うには運輸局長の認証を得る必要がある。

関連作品[編集]

  • 『Car Mechanic Simulator 2014』- 自動車整備のゲーム/シミュレータ作品。

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ この記事では20世紀後半から21世紀初頭において「自動車」として一般的に指される、発動機の動力で車輪を回転し、軌条によらずに道路上を走る車[1]の整備について概説する。
  2. ^ a b 日本では道路運送車両法に基く自動車点検基準で、自動車の整備基準や点検の義務が定められている。
  3. ^ 踏みごたえが柔らかい時は、ブレーキ液の液漏れや、空気の混入の可能性がある。
  4. ^ いっぱいに引いた(踏んだ)時に、ちゃんと効いているか。
  5. ^ タイヤの溝の深さの測定器。
  6. ^ プラグ・レンチについては、ディーゼル自動車のみの車庫には適用しない。

出典[編集]

  1. ^ (1)広辞苑によると、「ガソリン・軽油などを燃料とする発動機を装置し、その動力によって車輪を回転し、軌条によらずに道路上を走る車。蓄電池により電動機で動くものもある。」、(2)(3)は道路運送車両法・道路交通法の定義で「原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で、軌条または架線を用いないもの」、(4)は日本工業規格によると「自動車とは、原動機とかじ取り装置を備え、それらを用いて乗車して地上を走行できる車両」『自動車整備の基礎〈1 基礎編〉』 p1
  2. ^ 日本であれば道路運送車両法
  3. ^ 『自動車整備の基礎〈1 基礎編〉』 p19
  4. ^ 『自動車整備の基礎〈1 基礎編〉』 p20
  5. ^ a b 『わかる 身につく 交通教本』 pp48-50
  6. ^ a b Vehicle maintenance, safety and security - GOV.UK
  7. ^ 国土交通省 「自動車点検基準」- 別表第二 (自家用乗用自動車等の日常点検基準) (第一条関係)
  8. ^ 『自動車整備の基礎〈1 基礎編〉』 p21
  9. ^ 『自動車整備の基礎〈1 基礎編〉』 p22
  10. ^ 「自動車の検査は、安全・環境の面について国が定める基準に適合しているかどうかを一定期間ごとに確認するものであり、次の検査までの安全性等を保証するものではありません。したがって、使用者は、日常点検整備や定期点検整備を確実に実施するとともに、使用状況に応じて適切に保守管理を行う必要があります。」『自動車検査証』の裏面
  11. ^ 『自動車点検基準』第六条
  12. ^ 『はしる まがる とまる』 pp158-159

参考文献[編集]

  • 全日本交通安全協会 『わかる 身につく 交通教本』 2013年4月1日
  • 国土交通省 「自動車点検基準」 昭和二十六年八月十日運輸省令第七十号 最終改正:平成一九年三月一四日国土交通省令第一一号
  • 入戸野 健一, 吉沢 憲一, 渡辺 宣男, 松下 祐輔, 吉成 正雄 『自動車整備の基礎〈1 基礎編〉』 東京電機大学出版局 1990年9月20日 ISBN-13: 978-4501411602
  • 古川 修 『ダイナミック図解 自動車のしくみパーフェクト事典』 ナツメ社 2013年11月8日 ISBN-13: 978-4816355028
  • ポール・フレール 『はしる まがる とまる』 二玄社 2004年8月26日 ISBN-13: 978-4544040937

関連項目[編集]

外部リンク[編集]