旧久米家住宅洋館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
旧久米家住宅洋館
旧久米家住宅洋館の位置(群馬県内)
旧久米家住宅洋館
情報
旧名称 旧徳川家迎賓館 → 岩佐多聞邸
設計者 不詳
構造形式 RC造スレート葺
階数 平屋建
竣工 1912年(大正元年)頃
2023年(令和5年)※移築
所在地 151-0064
群馬県沼田市上之町1159-4
テンプレートを表示

旧久米家住宅洋館(きゅうくめけじゅうたくようかん)は、群馬県沼田市上之町大正ロマンエリアにある建築物

移築前の名称は岩佐多聞邸(いわさたもんてい)。元紀州徳川家の代々木上原本邸内にあった迎賓館であったとされる[1][2][3]。もともと久米民之助が私邸の洋館として和館とともに建設した。

歴史[編集]

代々木上原時代[編集]

代々木上原にあった岩佐多聞邸

紀州徳川家の本邸は大正末期から昭和初期にかけ、代々木上原の地にあり「静和園」と呼ばれていた[4][注釈 1][注釈 2]。この本邸の敷地内に迎賓館として本建築は存在したようである[3]。その後、紀州徳川家の財政難もあり、この代々木上原の邸宅は1938年(昭和13年)ごろより五島慶太を通じて区割り分譲されたが、母屋と迎賓館は取り壊されずに残された[7][3][注釈 3][注釈 4]

太平洋戦争では内部が被災した[1][2]。戦後は進駐軍に接収されたのち、一般邸宅の岩佐多聞邸(いわさたもんてい)となったとされる。家主はこの元迎賓館を壊そうと試みたものの、あまりに頑丈な造りのため解体に20万円もかかると言われ、解体を断念したとされる[3]。のち、厨房などの増築を経て借家にされたが、本来の造りは16畳1室、8畳2室、6畳1室と洋室ばかりの構造であったとされる[3]

沼田市移築後[編集]

2020年(令和2年)9月、東京都渋谷区上原にあった岩佐多聞邸が解体された。その際、久米民之助の故郷である群馬県沼田市が岩佐多聞邸を取得し、2023年(令和5年)に沼田市上之町旧久米家住宅洋館(きゅうくめけじゅうたくようかん)として移築された。

建物概要[編集]

戦災で内部が焼失したこともあってか、屋根も新建材となり、外壁も大きく変えられるなど、改修が大きく、当初の様子を完全に窺うことはできない[12]。しかし、軒下部分や出窓などに、当時の意匠を見ることができる[12]

ギャラリー[編集]

代々木上原時代
沼田市移築後

所在地[編集]

代々木上原時代
沼田市移築後

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 陸地測量部の昭和初期の地図などでは、この場所に『徳川邸』の記述が確認できる[5][6]
  2. ^ この時期の紀州徳川家当主は、15代賴倫だが、1925年(大正14年)に代々木上原邸で死去。その後16代の頼貞が分譲で手放すまでこの邸宅を所有した[4]
  3. ^ 国土地理院の1936年ごろと1945年ごろの航空写真を比較すると、邸宅敷地が区割り分譲された様子が見て取れる[8][9]
  4. ^ 残された建築物のうち母屋については、その玄関が移築され、五島慶太が1938年に設置した東横商業女学校の校舎玄関として利用された[10]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 近代建築小委員会「東京都(その1)(『日本近代建築総覧(新版)』追補)」『建築雑誌』第1430巻、1998年11月20日、50-53頁、NAID 110003805457 
  • 川上悠介「渋谷区に残る洋風住宅について--悉皆調査から見えること」『すまいろん』第84巻、2007年10月20日、48-51頁。 
  • 東京都教育庁生涯学習部文化課 編『東京の近代洋風建築 :近代洋風建築(第2次)調査報告』東京都教育委員会、1991年。全国書誌番号:91043198 
  • 日本建築学会 編『総覧日本の建築 第3巻 (東京)』新建築社、1987年。全国書誌番号:88025916 
  • 紀州徳川家の迎賓館?”. AsahinaTakeshiHP. 朝日向猛 (2020年5月10日). 2020年8月3日閲覧。
  • 紀州徳川家の迎賓館? その2”. AsahinaTakeshiHP. 朝日向猛 (2020年8月2日). 2020年8月3日閲覧。
  • 五島慶太翁生誕130年記念誌「熱誠」”. 五島育英会. 2020年8月3日閲覧。
  • 「築100年超の岩佐邸 「土地の記憶」保存へ動く」『東京新聞』、2020年9月4日。
  • 久米旧邸宅(東京)を沼田へ」『上毛新聞』、2020年9月26日。
  • 「久米民之助 東京・渋谷の洋館 「大正ロマン」の一角に」『東京新聞』、2020年10月8日。
  • 「旧久米民之助邸移築で沼田市長 ゆかりの紀伊徳川家 表敬」『上毛新聞』、2020年10月10日。
  • 「旧久米民之助邸 沼田に」『毎日新聞』、2020年10月11日。
  • 「久米民之助邸 沼田移築へ」『読売新聞』、2020年10月16日。
  • 「「沼田の恩人」邸宅移築で帰郷」『朝日新聞』、2020年10月26日。
  • 「土木の技法 小さな洋館に凝縮」『朝日新聞』、2020年11月24日。
  • 「旧久米邸洋館保存整備事業ついて」『沼田市・沼田市教育委員会 通達』、2020年10月1日。
  • 2020年4月17日 沼田市主催 旧久米邸洋館 キックオフイベント NUMATA KUME DAY 配布資料
  • 2020年4月17日 沼田市主催 旧久米邸洋館 キックオフイベント NUMATA KUME DAY 現地展示パネル
  • 沼田市歴史資料館 展示パネル

外部リンク[編集]