夏の別れ (映画)

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夏の別れ
監督 井上眞介
脚本 中島丈博
製作 中島丈博
出演者 安藤一夫
萬田久子
麻生えりか
滝田栄
佐々木すみ江
井川比佐志
五十嵐めぐみ
平田昭彦
音楽 東元晃
撮影 小林達比古
編集 宮澤誠一
製作会社 中島丈博ぷろだくしょん
配給 東映セントラルフィルム
公開 日本の旗 1981年10月10日
上映時間 100分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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夏の別れ』(なつのわかれ)は、1981年10月10日に公開された日本映画。『津軽じょんがら節』や『祭りの準備』などの脚本で知られる脚本家中島丈博が興した中島丈博ぷろだくしょんの第一回製作作品[1]。配給は東映セントラルフィルム。監督は東映出身の井上眞介[2]。併映『とりたての輝き』の浅尾政行監督も東映で契約助監督の経験があり[2][3]、それまでの東映では考えられない東映出身の新人監督の二本立てを番線で公開する珍しいケースとなった[3]

ヨットに憧れる少年の胸を走りすぎていった鮮烈なひと夏の出来事を描く[4][5][6]

あらすじ[編集]

真夏の湘南海岸。一人の若者が海を見ていた。高校卒業後、さしたる目的もなく無気力な毎日を送る須田浩(安藤一夫)。突然、浩は沖合に浮かぶ豪華な帆船に向って泳ぎだす。彼がそこで見たものは、古代ギリシアアポロヴィーナスのような男女の開放的かつ健康的なセ〇クスだった。その素晴らしさは浩のセ〇クス観を一変させた。この一瞬から、浩は自分のヴィーナスを求めはじめた。そしてついにヴィーナスを見つけた。売れっ子の美しいファッションモデル・磯村響子(萬田久子)。しかし響子に相手にされない。浩は、待ち伏せ、強〇、家宅〇法侵入と、あらゆる手段を労して響子との一夜のベッドインまで持って行こうと画策する[4][5][7]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

  • 監督:井上眞介
  • 脚本:中島丈博
  • 製作:中島丈博・阿部雄二
  • プロデューサー:中村賢一
  • 製作補:莟宣次
  • 撮影:小林達比古
  • 美術:山下宏
  • 音楽プロデューサー:東元晃
  • 編集:宮澤誠一
  • 録音:矢野勝久
  • 照明:上村栄喜
  • 助監督:萩谷泰夫

製作[編集]

中島丈博は製作にあたり、「最近は暗い内容の青春映画が多いので、ヨットに憧れる少年を主人公に、誰にも覚えのある青春の痛みをノスタルジックに描くのが狙い」と話した[4]

ヌードも披露する萬田久子[8]、映画と同タイトルのアルバムを発売している[9][10]

同時上映[編集]

とりたての輝き

作品の評価[編集]

興行成績[編集]

1981年春の段階では、この年秋の東映ラインアップは、『獣たちの熱い眠り』(松田優作主演予定)、『野獣刑事』(菅原文太主演予定)、『鬼龍院花子の生涯』(仲代達矢ほか三大女優)と発表されていた[11]。『鬼龍院花子の生涯』が半年、『野獣刑事』が一年公開が延びた影響で、ストックが無くなり、思い切った新人監督の二本立てが組まれた[3]。しかし札幌東映では上映は一週間で打ち切られ、ジャッキー・チェンの旧作三本立てに変更されたといわれる[12]

作品評[編集]

  • 山根貞男は「まったくよくあるパターンだが、一味違う。主人公の少年の憧れが、年上の女・萬田久子に対する強引な行動力として描かれ、そのがむしゃらさが爽快。が、主人公の行動力が映画全体の若い力にまで結晶せず、結局、一味違う程度の青春映画に終わったことが実に惜しい」などと評した[6]
  • シティロード』は「若さだけが持つ無鉄砲さと、沸き上がるようなエネルギーに溢れ、久しぶりに気分のいい青春映画に出会ったって感じ。オーソドックスなストーリーではあるけれど、少年の変〇者紙一重の強引さには、青春映画ならではの説得力がある」などと評した[7]

脚注[編集]

  1. ^ 夏の別れ”. 日本映画製作者連盟. 2023年2月11日閲覧。
  2. ^ a b 酒井武史「日本映画はよみがえるかニューウェーブの旗手20氏に聞く(上)」『朝日ジャーナル』1982年7月23日号、朝日新聞社、35頁。 
  3. ^ a b c 「Show Bujiness 最前線 nov. 映画・演劇・音楽情報コーナー ニューウエイブの快挙!」『噂の眞相』1981年11月号、噂の眞相、68–69頁。 
  4. ^ a b c 「邦画紹介 夏の別れ」『映画情報』1981年4月号、国際情報社、36頁。 
  5. ^ a b 『ぴあシネマクラブ 邦画編 1998-1999』ぴあ、1998年、496頁。ISBN 4-89215-904-2 
  6. ^ a b 山根貞男「シネマ メッタ斬り 『夏の別れ』」『噂の眞相』1981年12月号、噂の眞相、76頁。 
  7. ^ a b 「シネマ最前線 青春には、無鉄砲さがよく似合う ー『夏の別れ』-」『シティロード』1981年10月号、エコー企画、23頁。 
  8. ^ ヌード、社長と不倫、10億円の株長者…萬田久子64歳、“波瀾万丈の私生活””. 文春オンライン. 文藝春秋 (2022年10月27日). 2023年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月11日閲覧。
  9. ^ “1981年10月公開の映画 夏の別れ のLPレコード‼️(笑) 片付けしてたら 出てきました萬田久子オフィシャルブログ - Ameba Blog
  10. ^ 女優が歌うシティポップ 〜 萬田久子、白石まるみ、田中好子、鷲尾いさ子、高橋ひとみ
  11. ^ “封切映画興行記録”. 週刊映画ニュース (全国映画館新聞社): p. 2. (1981年3月28日) 
  12. ^ 谷岡雅樹「連載『ガキ帝国・悪たれ戦争』を巡って第七回ダブル・ファンタジー~無数の無念の屍の上で」『シナリオ』2018年9月号、日本シナリオ作家協会、12–13頁。 

外部リンク[編集]