冷たい方程式

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冷たい方程式』(つめたいほうていしき、原題 The Cold Equations)は、トム・ゴドウィンによって1954年に「アスタウンディング・サイエンスフィクション」に発表された短編SF小説である。SF小説史上もっとも注目に値する作品のひとつと見なされている[1]。 本作を表題作とする短編集も刊行されている。

あらすじ[編集]

惑星・ウォードンを調査していたグループの1つで致死性の疫病が発生した。物語は、惑星に血清を届ける小型宇宙船の中で起こる。

この宇宙船には、燃料も酸素も、最小限の量しか積まれていない。発進後、宇宙船のパイロットは船内に隠れていた密航者を発見する。規則に従うならば、密航者はエアロックから真空の船外へ放り出されなければならない。しかし密航者は、惑星で調査の任に携わっている兄(疫病には罹患していない)に会う為に密航した、18歳の少女であった。彼女は罰金を払う程度の罰で済むと思っていたのだ。

パイロットは、燃料はぎりぎりしか積まれておらず、彼女がいるままでは安全に惑星に着陸出来ないばかりではなく、血清を待つ6人の命までも死に至らしめることになることを説明する。パイロットは彼女を宇宙船の外へ放棄するのを遅らせるために最善を尽くした。その間に彼女は、両親とウォードンにいる兄へ手紙を書き、兄と無線で会話を交わす。無線が途切れた後、彼女は船外へ放棄されるために、自らエアロックの中へ入った。

概要[編集]

発表後半世紀を経てもなお『冷たい方程式』はSFの古典的な名作として認知されている。トム・ゴドウィンが執筆した時期がデビューから間もなかったため米英では元ネタ探しも盛んになり、コミック雑誌「Weird Science」1952年5・6月合併号に掲載された『A Weighty Decision』(ウォーリー・ウッド画、アル・フェルドスティーン脚色)が元ネタとして認められている。また、アスタウンディング誌の編集長ジョン・W・キャンベルが3度に渡りゴドウィンの原稿を書きなおさせたことも明らかになっており、キャンベルが作者であるとする意見もある。

影響[編集]

SF作家であり批評家のジェームス・ガンは「ハードコアSFのための試金石的小説である」と評した。

1970年には、SF作家協会により1929年から1964年までに発表された最も重要なSF小説15編に選ばれた。2003年に発行されたゴドウィンの名作集が発行された際に付けられた題名は『冷たい方程式とその他』であった。日本においてもハヤカワ文庫に短編集の表題作として収録されている。

ただし本作への賛意は必ずしも普遍的なものではなかった。多くの人が、この悲劇的な結末が必然であるように見えるための状況が人工的に作られ過ぎていると批評した。例えば、

  • 発見された密航者は船外へ放棄する規則であるとされているが、なぜ飛行前の点検で密航者を見つけられなかったのか?
  • 少女の代わりに他の重量物を放棄することはできなかったのか?
  • そもそも省スペースを目指すなら全自動無人機にするほうが適切であり、密航者が入り込めるスペース自体が存在しないのではないか?

などである。

また評論家ガリイ・ウェストファールはこの前提が「エラーに対して十分なマージンのないシステム」によるもので、物理学としては良いが工学としては酷い話だと述べている。

また、本作へのオマージュないしパロディとして、同じような極限的状況から別の解決法を導き出す作品も多数書かれており、「方程式もの」と呼ばれている。

書誌情報[編集]

日本語訳[編集]

短編集[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 詳細は『SFマガジン・ベスト1 冷たい方程式』(ハヤカワ文庫、1980年)巻末の伊藤典夫による解説を参照

関連項目[編集]