冨田勝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
冨田 勝
国籍 日本の旗 日本
生誕 1957年12月28日(56歳)
東京都
業績
専門分野 生命科学(分子生物学バイオインフォマティクスメタボローム解析・システムバイオロジー等)、計算機科学(機械学習自動翻訳等)
プロジェクト 21世紀COEプログラム・生命科学分野、システム生物学による生命機能の理解と制御。
テンプレートを表示

冨田 勝(とみた まさる、1957年12月28日 - )は、日本の生命科学者、計算機科学者。慶應義塾大学環境情報学部教授、慶應義塾大学医学部兼担教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所所長。ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(株)創業者・取締役。Ph.D.(情報科学)、工学博士、医学博士。父は作曲家の冨田勲

言語処理や人工知能を専門としていたが、後に生命科学に転じ、細胞シミュレーションソフトウェアE-Cellや、CE-MSによる新規のメタボローム測定法等を発表。システムバイオロジー研究・メタボローム解析の分野で第一人者となった。

NHK教育テレビサイエンスアイ』のレギュラーコメンテーターを務めていた。カーネギーメロン大学准教授時代はアサヒスーパードライのテレビCMに出演していた。

人物[編集]

1957年、作曲家である冨田勲と明子(歌手本間千代子の姉)の長男として生まれる。慶應義塾大学医学部名誉教授であり医学部長を務めた冨田恒男、および同大学医学部客員教授冨田稔は親族である。

学生時代

慶應義塾幼稚舎に入学し、普通部高等学校を経て、同大学工学部数理工学科へ進学。大学在学中に「Apple漢字システム」を作成し、パソコンで漢字出力できる世界初のシステムを開発した学生として話題を集めた。慶應義塾大学卒業後、カーネギーメロン大学コンピューター科学部へ進学。ノーベル賞受賞者であるDr. ハーバート・サイモンの指導を受け、機械学習に関する研究に従事した。学位論文のテーマであるGLR法(後に冨田法ともよばれる)に関する研究成果は[1]、米国立科学財団大統領奨励賞の受賞対象となり、レーガン大統領より表彰されている。また、通常5年以上かかる同大学の大学院コースを4年で早期修了するなど、優秀な成績を収めている。

生命科学への転身

1990年、相磯秀夫前慶應義塾大学環境情報学部長より新キャンパスへの誘いを受け帰国し、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの教員となった。この当時より、コンピューター科学者が何年かけても実現できないような高度な知能システムを、たったひとつの細胞から作り出してしまう「生命のメカニズム」に興味を持ちはじめる[2]。分子生物学を一から勉強することを決意し、教員の立場でありながら慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程に入学(1994年)し、当時同大学の医学部教授を務めていた清水信義の指導を受け、医学博士を取得した。日本において現役の教員が学生として再入学するのは前例のないことであり、様々な苦労があったとのちに語っている[3]。研究者が複数の専門分野を持つこと(ダブルメジャー)の重要性を説いている[4]

現在の研究

1997年、細胞の系全体としての振る舞いを解析するための汎用細胞シミュレーションソフトウェア「E-Cell」を発表[5]。"細胞シミュレーションのパイオニア的研究"として、日本IBM科学賞などを受賞している[6]。その流れの中で、2001年には "IT主導のバイオサイエンス" という理念を掲げ、細胞シミュレーションを主軸とした大規模な生物実験施設を擁する慶應義塾大学先端生命科学研究所の創設に携わり、所長に就任した。その後、メタボロームプロテオームトランスクリプトームを始めとするマルチオミクス研究に注力し、特にメタボローム解析の分野においては、キャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)を用いた新規の測定法を開発するなど、先駆的な研究成果を上げている。また、国際メタボローム学会の理事を務め、第一回会議を日本に招致するなど、本分野の火付け役となってきた[7]。これらの功績が高く評価され、2009年には同学会より功労賞を授与されている。日本人では唯一の受賞であった。

教育への取り組み

高等教育に対して独自の理念を持っており、"学生に早い段階で先端研究に触れてもらうことは、基礎知識、基礎技術習得のモチベーションを上げ、高い教育効果がある" という考えに基づき[8]、大学の研究室に学部一年生から所属することを推奨している。また、環境情報学部長時代には、同学部の特徴的な入試形態の一つであるAO入試制度の抜本的な改革などにも取り組んでいる[9]。その他、大学の研究機関に高校生の研究助手を採用するなど、斬新なプログラムも積極的に導入している[10]。さらに、全国の高校生が大学の研究所に泊まり込んで先端研究を体験できる「慶應サマーバイオキャンプ」なども企画/運営している[11]

スポーツ

高校時代は馬術部に所属し、国体2回出場、関東大会個人総合準優勝の成績を残している。スキーでは検定一級を取得している。また渡米中は、タッチフットボールに熱中したことを自著に綴っている[12]。日本にタッチフットボールのルールを持ち帰った人物の一人でもあり、1992年に日本タッチ・アンド・フラッグフットボール協会(JTFA)を設立し、監事を務めていた。鳩山由紀夫首相が同協会の会長を務めていた時期もあり、タッチフットを介した二人の交遊が記録されている[13]

経歴[編集]

受賞[編集]

  • 1988年 米国立科学財団大統領奨励賞(Presidential Young Investigators Award from National Science Foundation)
  • 1996年 第三回情報教育協会賞(財団法人私立大学情報教育協会)
  • 1997年 Twentieth Century Achievement Award (American Biographical Institute, USA)
  • 1997年 The Best-Poster-of-the-Conference Award (The Fifth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology)
  • 1998年 Gold Star Award (International Biographical Centre, England)
  • 1998年 義塾賞「生命情報科学におけるパイオニア的研究」(学校法人慶應義塾
  • 1999年 ゴールドメダル賞「遺伝子情報の統合的解析への新手法」(読売新聞後援東京テクノフォーラム21)
  • 2002年 IBM Japan Science Prize (IBM科学賞)
  • 2003年 Shared University Research Award (米国IBM社)
  • 2004年 産学官連携推進会議・科学技術政策担当大臣賞「メタボローム解析技術の開発と実用化」
  • 2007年 文部科学大臣表彰科学技術賞
  • 2009年 国際メタボローム学会功労賞
  • 2009年 福澤賞「バイオテクノロジーとITの融合、および医療・食品・環境・エネルギー分野における先駆的な研究成果」(学校法人慶應義塾

著編書[編集]

  • 『メタボローム研究の最前線』 冨田勝編(シュプリンガーフェアラーク東京) 2003
  • 『ゲノム情報生物学―BioinformaticsとInformation Biology』 高木利久 冨田勝編(中山書店) 2000
  • 『博士のススメー理科系人間よ、「博士」を目指せ』 冨田勝 橋田浩一 北野宏明著(ジャストシステム) 1993
  • 『ゲーム少年の夢』 冨田勝著(講談社) 1991

参考になる文献[編集]

  • "Building Working Cells 'in Silico'", Science 1999; 284-5411:80-81
  • "Going for Grand Challenges", Nature 1999; 402:C70
  • "E-CELL: Software environment for whole cell simulation", Bioinformatics 1999; 15:72-84
  • "Computerized role models: Japan's push to create a virtual cell signals a new approach to research", Nature 2002; 417
  • "Multiple high-throughput analyses monitor the response of E. coli to perturbations", Science 2007; 316:593-597

脚注[編集]

  1. ^ Tomita M. (1984). "LR parsers for natural languages". COLING. 10th International Conference on Computational Linguistics. pp. 354–357.
  2. ^ SFCの革命者ーゲームプログラミングの先に、生命の神秘の扉があった
  3. ^ SFCの革命者ーゲームプログラミングの先に、生命の神秘の扉があった
  4. ^ 大学教授対談シリーズ『こだわりアカデミー』1994年2月号
  5. ^ Tomita M. et al. (1997) "E-CELL: Software Environment for Whole Cell Simulation." Genome Inform Ser Workshop Genome Inform, 8:147-155.
  6. ^ 日本IBM科学賞 歴代受賞者一覧
  7. ^ 『毎日新聞』2007年6月21日
  8. ^ 生命と情報 (2005) 湘南藤沢学会
  9. ^ おかしら日記 2007年9月20日
  10. ^ 『朝日新聞』2009年5月11日
  11. ^ 『読売新聞』 2006年8月12日
  12. ^ 『ゲーム少年の夢』 冨田勝著
  13. ^ 『日経新聞』2002年3月1日朝刊

外部リンク[編集]