九一式徹甲弾

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大和ミュージアムに展示されている九一式徹甲弾

九一式徹甲弾(きゅういちしきてっこうだん)は、大日本帝国海軍戦艦巡洋艦用に開発した砲弾である。なお、関連性のある八八式徹甲弾および一式徹甲弾についても合わせて説明する(八八式の改良型が九一式、九一式の改良型が一式である)。

概要[編集]

日本海軍はワシントン海軍軍縮条約により破棄されることになった「ポスト・ジュットランド型」未成戦艦「土佐」を用いた射撃試験、同じく除籍となった戦艦「安芸」を標的とした射撃訓練を行った。「土佐」に対する射撃試験では40cm砲弾が舷側に命中、後部機関室内で炸裂し3,000トンの浸水被害を及ぼし、「安芸」を標的とした射撃訓練では「長門」「陸奥」の2隻による初弾発砲から17分という短時間で「安芸」が沈没したことから、「目標の手前に落下した砲弾が、水中である程度の距離を水平に直進する」ことを実際に確認した。ちなみに「日本海軍のみが水中弾効果を認識しており、他国戦艦は水中弾防御を備えていない」という俗説は誤りである。英米仏では1920年代後半には水中弾効果が認識されており、以後に設計・建造された新型戦艦の水中防御では、水中弾効果を考慮している。

この結果、日本戦艦は改装時に水中弾防御を備えるとともに、水中弾道特性に優れた徹甲弾を開発した。この新型徹甲弾は六号徹甲弾(後の八八式徹甲弾)と呼ばれ、頂部が平面な被帽の上に、鋭利な被帽頭を置き、その上に風帽を被せた構造であり、砲弾が水面に命中した際には、風帽と被帽頭が飛散して、水中を直進した砲弾が敵艦の水線下に命中するという構想で開発された。通常形式の砲弾の水中直進距離が、砲弾直径の80口径程度であるのに対し、この徹甲弾では200口径(つまり46cm砲弾なら、46cm×200口径で92mとなる)まで直進すると考えられていた。

また、水中弾効果を最大限に活用するため、六号徹甲弾には調停秒時の長い大遅動信管(0.4秒)が装備されていた。試験の結果、六号徹甲弾は水中弾効果を発揮できると認められ、1930年昭和5年)に制式採用された。この六号徹甲弾の風帽を延長し、弾尾の形状をすぼめることで、ボートテール型にした徹甲弾が大和型戦艦にも搭載された九一式徹甲弾である。1931年(昭和6年・皇紀2591年)に採用されたため、この呼び名がある。九一式徹甲弾は、六号徹甲弾よりも空気抵抗が少ない形状であったために、同じ仰角時での射程が3,000~4,000m延伸した。

とはいえ、九一式徹甲弾は、実戦での水中弾発生確率は通常弾と大差なく、また大遅動信管の装着により、非装甲部分での命中弾が炸裂せずに貫通するという問題を抱えていた。このことにより、砲弾命中時に爆煙が視認できないため、砲戦指揮上問題があるとの指摘もある。

さらに、弾体強度が不足しているため、命中時に砲弾が破砕されてしまうという欠陥があった。具体的には砲弾径の9割以上の厚みがある表面硬化装甲に対し、撃角25度以上で命中した場合に見られる欠点であった。こうしたことから、大和型戦艦ではこの原因である被帽の取り付け方法を是正している。

九一式徹甲弾の更新用として、1941年(昭和16年)に採用された一式徹甲弾では、上記の被帽取り付け方法の改善に加え、弾頭部への着色剤充填を行ったとされている。このほかに、一式徹甲弾では弾体強度を合わせて強化したという説もあるが、定かではない。

九一式徹甲弾を搭載した艦[編集]

 九一式徹甲弾は戦艦「大和」「武蔵」の主砲砲弾として搭載された。

砲弾諸元[編集]

口径 全長 砲弾重量 炸薬重量 炸薬比率 射程
46cm 1,955mm 1,460kg 33.85kg 2.32%  42030m
40cm 1,738.5mm 1,020kg 14.888kg 1.46% 37900m
36cm 1,524.7mm 673.5kg 11.102kg 1.65% 35450m
20.3cm 906.2mm 125.85kg 3.100kg 2.46% 27400m
15.5cm 677.8mm 55.87kg 1.152kg 2.00% 27400m

関連項目[編集]