ワニトカゲギス目

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ワニトカゲギス目
生息年代: 白亜紀後期–現世
Messina Straits Chauliodus sloani.jpg
ホウライエソ Chauliodus sloani(ワニトカゲギス科)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
: ワニトカゲギス目 Stomiiformes
学名
Stomiiformes
Regan1909
下位分類
本文参照

ワニトカゲギス目(鰐蜥蜴鱚目、: Stomiiformes)は、硬骨魚類の分類群の一つ。所属する魚類はすべて海水魚で、2亜目5科53属391種で構成される。ほとんどの種類は深海で生活しており、分布範囲が広く個体数も多い重要な深海魚が多数含まれる。

キュウリウオ目と近縁であり[1]、原始的な特徴を一部共有するなど関係が深い。かつてはワニトカゲギス目全体がキュウリウオ目と共に、サケ目の一部として含められていた。名前に含まれるキススズキ目)との類縁関係は遠い。

概要[編集]

ワニトカゲギス目の魚類は世界中の熱帯から温帯域にかけて広く分布する。ほぼ全種が深海性で、特に中深層(水深200-1,000m)の遊泳性魚類としてはハダカイワシ類と並び個体数が多く、数と種類の両面で支配的な位置を占めている。

体型は一般に細長い。体長は10cm前後の小型種が多く、最大でも50cm程度である。ムネエソ科魚類は著しく側扁した平べったい体をもち、体高も比較的高い。口は大きく両顎に鋭い歯を備え、顎にヒゲのある種類もいる。すべてのは軟条のみで構成され、棘条をもたない。脂鰭をもつ種類があり、臀鰭の前方に位置することもある。体色は深海性の魚類らしく褐色から黒色のものが多いが、ムネエソ亜科の仲間は一様に銀色である。

ほぼすべての種類が生物発光を行い、捕食や敵からの回避行動に役立てている。発光器は腹側に左右一列ずつ並んでいることが多く、発光バクテリアに頼らない自力発光により明滅する。発光器の組織学的形態には特徴が多く、本目の単系統性を裏付ける要素の一つと捉えられている。

分類[編集]

ワニトカゲギス目はヨコエソ亜目ギンハダカ亜目の2亜目4科と、所属不明につき暫定的に設置されたユメハダカ科を加えた5科53属391種で構成される[2]。ワニトカゲギス科からトカゲハダカ科・ホウライエソ科・ホテイエソ科・ミツマタヤリウオ科・ホウキボシエソ科を分離し、それぞれ独立の科とみなす体系もある[3]

ユメハダカ科 Diplophidae[編集]

ユメハダカ科 Diplophidae
ネッタイユメハダカ Diplophos taenia(ユメハダカ科)。本科は従来所属していたヨコエソ科から分離されたグループで、目内での系統順位は定まっていない
3属8種を含む。本科はNelson(1994)の分類ではヨコエソ亜目ヨコエソ科に含まれていたが[4]、ユメハダカ属および Manducus 属が姉妹群であること、および他のすべてのワニトカゲギス目魚類の姉妹群である可能性が示されたことを受け、暫定的に設置された科である。脂鰭をもたない。

ヨコエソ亜目 Gonostomatoidei[編集]

ヨコエソ亜目 Gonostomatoidei
ヨコエソ科およびムネエソ科の2科が含まれ、15属90種が所属する。歯は小さく均等な大きさ。発光器は腹部に連続的に配列する。

ヨコエソ科 Gonostomatidae[編集]

ヨコエソ科 Gonostomatidae
ミナミオニハダカ Cyclothone microdon(ヨコエソ科)。オニハダカ類は莫大な個体数をもち、深海中層の生態系で重要な役割を果たしている
5属23種からなる。本科のオニハダカ属およびギンハダカ科のウキエソ属魚類は南極海を含む全世界の外洋に広く分布し、地球上の脊椎動物として最大の個体数をもつと考えられている[2]

ムネエソ科 Sternoptychidae[編集]

ムネエソ科 Sternoptychidae
テンガンムネエソ Argyropelecus hemigymnus(テンガンムネエソ属)
トガリムネエソ Argyropelecus aculeatus(テンガンムネエソ属)
2亜科10属67種で構成される。キュウリエソ亜科は細長く、ムネエソ亜科は左右に平べったく側扁し大きな体高をもつことが特徴。
キュウリエソ亜科 Maurolicinae
7属25種。
ムネエソ亜科 Sternoptychinae
3属42種。眼と口が上向きについている。多くの種が脂鰭をもち、臀鰭は2つに分かれる。

ギンハダカ亜目 Photichthyoidei[編集]

ギンハダカ亜目 Photichthyoidei
ギンハダカ科およびワニトカゲギス科の2科で構成され、35属293種が所属する。

ギンハダカ科 Photichthyidae[編集]

ギンハダカ科 Photichthyidae
ギンハダカ科の1種(Phosichthys argenteus
7属20種を含む。ヨコエソ科と類似した形態をもち、Yarrella 属以外は脂鰭をもつ。下顎のヒゲはない。

ワニトカゲギス科 Stomiidae[編集]

ワニトカゲギス科 Stomiidae
トカゲハダカ属の1種 Astronesthes sp. (トカゲハダカ亜科)。下顎のヒゲはワニトカゲギス科魚類の重要な特徴で、分類形質として利用される
Stomias boa boa(ワニトカゲギス亜科)
ヒレグロホテイエソ Photonectes margarita(ホテイエソ亜科)
ホソギンガエソ Bathophilus pawneei(ホテイエソ亜科)
オオクチホシエソ Malacosteus niger(ホウキボシエソ亜科)
5亜科28属273種で構成され、ワニトカゲギス目で最大のグループとなっている。成魚は真の鰓耙をもたない。ほとんどの種類は暗い体色で、下顎にヒゲがある。バーベルドドラゴンフィッシュBarbeled dragonfishは、ヒゲのはえた龍魚を意味し、バーベルとは、英語で「魚のひげ」の意味である。
トカゲハダカ亜科 Astronesthinae
6属55種。鱗がない。背鰭は腹鰭と同じか後方の位置から始まり、臀鰭より前方に終わる。背側・腹側の両方に脂鰭をもつ種類が多い。本亜科はトカゲハダカ科 Astronesthidae として分類されることもある。
ワニトカゲギス亜科 Stomiinae[編集]
ワニトカゲギス亜科 Stomiinae
2属19種。鱗をもつ。ワニトカゲギス属の背鰭は腹鰭より後方から始まり、臀鰭と対の位置にある。また、脂鰭はない。これに対して、ホウライエソ属の背鰭は腹鰭よりずっと前方にあり、臀鰭と対在する脂鰭をもつ。ホウライエソ属はホウライエソ科 Chaliodontidae として分類されることもある。
ホテイエソ亜科 Melanostomiinae[編集]
ホテイエソ亜科 Melanostomiinae
16属180種。鱗がない。背鰭は腹鰭より後方に始まり、臀鰭と対在する。本亜科はホテイエソ科 Melanostomiidae として分類されることもある。
ミツマタヤリウオ亜科 Idiacanthinae[編集]
ミツマタヤリウオ亜科 Idiacanthinae
1属4種。ウナギのように細長い体型をもつ。背鰭は非常に長く、体長の半分以上に及ぶ。鱗はない。成魚は胸鰭を欠く。矮雄をもつグループで、最大50 cmにまで成長する雌に対し、雄は5 cm程度にしかならない。本亜科はミツマタヤリウオ科 Idiacanthidae として分類されることもある。
ホウキボシエソ亜科 Malacosteinae[編集]
ホウキボシエソ亜科 Malacosteinae
3属15種。顎が発達し、頭蓋骨よりも長く伸びる。本亜科はホウキボシエソ科 Malacosteidae として分類されることもある。

系統[編集]

分子系統解析からは、以下のような系統樹が提案されている[1]。ヨコエソ科・ワニトカゲギス科は概ね単系統であるが、他の3科の単系統性は疑わしいものとなっている。

ワニトカゲギス目

ホシエソ属 Valenciennellus(ムネエソ科)
ウキエソ属 Vinciguerria・ヨウジエソ属 Pollichthys (ギンハダカ科)




ヨコエソ科 GonostomatidaeBonapartia 属を除く)





ホウライエソ属 Chauliodus



ムネエソ科 Sternoptychidae・ユメハダカ科 Diplophidae
Bonapartia 属などを含むクレード





シンジュエソ属 Ichthyococcus(ギンハダカ科)




Phosichthys(ギンハダカ科)




ワニトカゲギス属 Stomias




トカゲハダカ亜科 Astronesthinae(側系統群)



ホテイエソ亜科 Melanostomiinae
(ミツマタヤリウオ亜科 Idiacanthinae・ホウキボシエソ亜科 Malacosteinaeを含む)









脚注[編集]

  1. ^ a b DeVaney, Shannon C (2008年). Interrelationships of Fishes of the Order Stomiiformes (Ph.D. thesis). University of Kansas.. http://hdl.handle.net/1808/4532 
  2. ^ a b Nelson JS (2006). Fishes of the world (4th edn). New York: John Wiley and Sons. 
  3. ^ 『日本の海水魚』 pp.106-109
  4. ^ Nelson JS (1994). Fishes of the world (3rd edn). New York: John Wiley and Sons. 

参考文献[編集]

外部リンク[編集]