ラネル酸ストロンチウム

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ラネル酸ストロンチウム
IUPAC命名法による物質名
distrontium 5-[bis(2-oxido-2-oxoethyl)amino]-4-cyano-
3-(2-oxido-2-oxoethyl)thiophene-2-carboxylate
臨床データ
胎児危険度分類 Only intended for use in postmenopausal women, no data on exposed pregnancies. If strontium ranelate is used inadvertently during pregnancy, treatment must be stopped.
法的規制 POM (UK)
投与方法 経口
薬物動態的データ
生物学的利用能 25% (19~27%の範囲)
血漿タンパク結合 血漿中25%、骨組織と高い親和性
代謝 ストロンチウムは代謝されない。シトクロムP450を阻害しない。
半減期 60時間
排泄 Renal and gastrointestinal. 血漿クリアランス12ml/min(CV 22%)、腎クリアランス7ml/min(CV 28%)
識別
CAS登録番号 135459-87-9 チェック
135459-90-4 (free acid)
ATCコード M05BX03
PubChem CID 6918182
ChemSpider 5293393 チェック
化学的データ
化学式 C12H6N2O8SSr2 
分子量 513.491 g/mol

ラネル酸ストロンチウム (Strontium ranelate)ラネル酸ストロンチウムであり、骨粗鬆症治療薬である。仏セルヴィエ社によってプロテロス (Protelos)プロトス (Protos)等の名称で販売されている。現在のところ、骨形成の促進・骨吸収の阻害双方の作用を持つ薬剤(dual action bone agent, DABA)としてはほぼ唯一のものである。

作用機序[編集]

ストロンチウムは第2族元素で、周期表ではカルシウムの下に位置する。カルシウムと性質が類似するため、骨・歯のエナメル質のカルシウムと置き換わる。臨床試験においては、このことで骨の成長が促され、骨密度が増加し、椎骨・末梢骨・女性では股関節の骨折が減少した。

ラネル酸ストロンチウムはカルシウム感知受容体を刺激し、前骨芽細胞を骨芽細胞に分化させ、骨形成を促進する。さらに、骨芽細胞からオステオプロテゲリンを分泌させることで破骨細胞分化因子の働きを阻害し、前破骨細胞の破骨細胞への分化を妨げることで骨吸収を阻害する。この双方の作用により骨代謝のバランスを骨形成の方へと傾ける。これはコリン安定化オルトケイ酸の効果に似ている。[1][2]

ほとんどの薬剤は、その薬理学的作用をアニオンに依存するのに対し、ラネル酸ストロンチウムはカチオンに依存する点が特徴的である。他のカチオン性薬剤にはヒ素水銀ビスマスリチウムなどのイオンがあるが、現在ではあまり使用されない。

適応[編集]

椎骨・股関節骨折を減少させる効果があるため、更年期障害による骨粗鬆症の処方薬として、70カ国以上で承認されている。米国ではFDAに承認されていないが、英国では 国民保健サービスに、閉経後骨粗鬆症治療薬として処方されている。[3]

2000年にSOTI(Spinal Osteoporosis Therapeutic Intervention)・TROPOS(Treatment of Peripheral Osteoporosis)という2つの治験がフェーズIIIに入った。結果は2004年にまとめられ、プラシーボ群と比べ、3年間で椎骨骨折を41%・股関節骨折を36%減少させた。[4]

5年間のデータによると、年齢・骨密度・既存骨折・症候性骨折・ボディマス指数・喫煙歴などの元々持つ骨粗鬆症リスクにかかわらず、椎骨骨折を有意に減少させた。

高齢者や骨減少症患者に対して抗骨折効果を示す。忍容性が高いとみなされている。

禁忌[編集]

本剤または賦形剤への過敏症がある場合は禁忌である。また、正確なデータがないため重度の腎疾患患者、例えばクレアチニンクリアランスが30mL/min以下の患者には推奨されない。静脈血栓塞栓症の既往症がある場合、そのリスクが増加することへの注意が必要である。尿・血中のカルシウム比色測定に影響するほか、製剤中にアスパルテームを含むためフェニルケトン尿症患者に対しても注意しなければならない。[5]

相互作用[編集]

メーカーによると、制酸剤投与の2時間以上前に、また乳製品・カルシウム製剤の摂取から2時間以上間を開けて投与すべきである。また、ストロンチウムのキレート剤として作用するテトラサイクリンキノロン系抗生物質の投与は中止すべきである。

副作用[編集]

副作用は吐き気下痢頭痛湿疹などで、プラシーボ群に比して2~4%増加したが、ほとんどは3か月以内に治まった。

出典[編集]

  1. ^ Spector, Tim (11 June 2008). “Choline-stabilized orthosilicic acid supplementation as an adjunct to Calcium/Vitamin D3 stimulates markers of bone formation in osteopenic females: a randomzed, placebo-controlled trial”. BMC Musculoskeletal Disorders 9 (85): 85. doi:10.1186/1471-2474-9-85. PMC 2442067. PMID 18547426. http://www.biomedcentral.com/1471-2474/9/85. 
  2. ^ Calomme, M; et al (13). “Partial prevention of long-term femoralbone loss in aged ovariectomized rats supplemented with choline-stabilized orthosilicic acid”. Calcif Tissue Int 78 (4): 227–32. doi:10.1007/s00223-005-0288-0. PMID 16604283. 
  3. ^ NHS Choices: Strontium Ranelate
  4. ^ Meunier PJ, Roux C, Seeman E, Ortolani S, Badurski JE, Spector TD, Cannata J, Balogh A, Lemmel EM, Pors-Nielsen S, Rizzoli R, Genant HK, Reginster JY (2004). “The effects of strontium ranelate on the risk of vertebral fracture in women with postmenopausal osteoporosis”. New England Journal of Medicine 350 (Jan 29): 459–468. doi:10.1056/NEJMoa022436. PMID 14749454. 
  5. ^ Protelos, INN-strontium ranelate

外部リンク[編集]