マンニックヤルヴ

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マンニックヤルヴ
マンニックヤルヴ
マンニックヤルヴ
位置 北緯58度52分15秒 東経26度15分42秒 / 北緯58.87083度 東経26.26167度 / 58.87083; 26.26167座標: 北緯58度52分15秒 東経26度15分42秒 / 北緯58.87083度 東経26.26167度 / 58.87083; 26.26167[1]
流出河川 トオマ幹線水路[2]
集水域面積 2.5 km2 (0.97 sq mi)[1]
流域国 エストニア
南北長 560 m (1,840 ft)[1]
最大幅 460 m (1,510 ft)[1]
面積 17.3 ha (43エーカー)[1]
周囲長 1,642 m (5,387 ft)[1]
最大水深 3 m (9.8 ft)[1]
平均水深 2 m (6 ft 7 in)[1]
水面の標高 77 m (253 ft)[3]
淡水・汽水 淡水
沿岸自治体 トオマ英語版[1]
プロジェクト 地形
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マンニックヤルヴエストニア語: Männikjärv)は、エストニア共和国ユゲヴァ県ユゲヴァ行政教区英語版トオマ村英語版に位置するである[1]面積は、約17.3ヘクタール[1]。周囲には、同じ名を冠するマンニックヤルヴ湿原が広がり、遊歩道による散策が知られている[4]

地理・地形[編集]

マンニックヤルヴは、エストニアの中央部、パンディヴェレ台地英語版の南斜面に位置するエンドラ自然保護区英語版の中にある湖である[5]。きれいな卵型をした湖で、大きさは南北に約560メートル、東西に約460メートルで、面積は約17.3ヘクタールである[4][1]。湖の深さは、平均2メートル、深いところでもせいぜい3メートルと浅く、水量も少ない[1][6]

氷期が終わるおよそ1万年前頃、氷床が後退したあとに、現在のエンドラ自然保護区内には、大エンドラ湖が広がっていた[7]。気候が温暖になるにつれて、大エンドラ湖の浅い部分が湿原化し、いくつかの小さい湖に分かれていった[7]。大エンドラ湖の名残で湖と呼べるものは6ヶ所あり、マンニックヤルヴもその1つである[7]。このことは、湖底に粘土石灰質層(湖沼チョーク)、泥炭質層の厚い堆積物があることから裏付けられる[8]

マンニックヤルヴからは、トオマ幹線水路を通じて水が流れ出している[2]。マンニックヤルヴでは、1911年に水路を通じた排水が始まり、湖の東側が干拓地化された[9][6]。干拓は1974年に完了したが、1993年には干拓地の利用を停止し、過栄養化していたマンニックヤルヴの水質は改善した[6]

マンニックヤルヴ湿原[編集]

マンニックヤルヴの周りには、マンニックヤルヴ湿原(ボグ)が広がっている[10]。湿原は、多彩なピートモス植物が織りなす色鮮やかな草原と、点在する沼が、美しい景観を形成し、ハイキングをする人々に人気がある[4][11]。マンニックヤルヴ湿原には、湿原を東西に横断する全長約1.3キロメートルの遊歩道が設置されている[4][12]。この木道は、1955年に整備が始まったもので、湿原に敷かれた木道としてエストニアで特に古いものの1つである[4]。遊歩道の途中、湿原の中央には高さ7メートルの展望台が設けられ、マンニックヤルヴ湿原の風景を見渡すことができる[4][13]。湿原を横断する遊歩道のほかに、マンニックヤルヴを一周する、全長2.3キロメートルの遊歩道もあり、マンニックヤルヴの湖畔の植生を観察することができる[10][14]

自然保護区への来訪者の統計によると、2011年には8310人が訪れた[15]。その中でも、最も多くの人が足を運んだのが、マンニックヤルヴ湿原の遊歩道である[15]

植生・動物[編集]

マンニックヤルヴの周囲には、マツを主とした北方性の針葉樹の林が広がるが、湖畔には広葉樹の姿もみられる[14][4]。マツが密集する林には、下草もまばらなところがある一方、湿地の中のマツには高さが数メートルにしかならないものもある[4][7]。マンニックヤルヴは、イバラモの亜種(Najas marina subsp. intermedia)のエストニア唯一の生息地ともされる[4]。マンニックヤルヴ湿原で水面や泥の上を覆うのは、スゲヨシミツガシワクロバナロウゲヒメカイウヒメシダ英語版ミズゴケなどの地下茎が織り交ぜられたものである[8]

この湖を含むエンドラ自然保護区はイヌワシミサゴタゲリなどの絶滅危惧種の鳥類の繁殖地で、1997年にラムサール条約登録地となった[16]

伝承[編集]

エストニアの民族叙事詩カレヴィポエグ英語版』では、マンニックヤルヴは「カレヴィポエグの井戸」と伝えられる[4][13]。そこでは、エストニアの神話的英雄カレヴィポエグが、渇きを癒すためにこの地で井戸を掘り始めたのが、マンニックヤルヴの起源とされている[4][13]。カレヴィポエグの井戸堀りは、井戸を広げるだけで中断したため、マンニックヤルヴは浅い湖になった、といわれる[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Männikjärv” (エストニア語). Keskkonnaportaal. Keskkonnaagentuur (2023年9月26日). 2024年4月16日閲覧。
  2. ^ a b Tamre, Ruta, ed. (2006), EESTI JÄRVEDE NIMESTIK: Looduslikud ja tehisjärved, Tallinn: Keskkonnaministeeriumi Info- ja Tehnokeskus, p. 61, ISBN 978-9985-881-40-8 
  3. ^ Seppä, Heikki; et al. (2004-02-09), “A modern pollen–climate calibration set from northern Europe: developing and testing a tool for palaeoclimatological reconstructions”, Journal of Biogeography 31 (2): 251-267, doi:10.1111/j.1365-2699.2004.00923.x 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l Rekand, Elen (2020-09), “Rabade võlumaale kõrvupaitavat vaikust kuulama” (エストニア語) (PDF), Eesti Loodus (9/2020): 44-47, http://www.eestiloodus.ee/arhiiv/Eesti_Loodus09_2020.pdf 
  5. ^ Endla Nature Reserve”. Protected Areas of Estonia. Keskkonnaamet. 2024年4月16日閲覧。
  6. ^ a b c Keskkonnaamet 2015, p. 45.
  7. ^ a b c d Nature”. Protected Areas of Estonia. Keskkonnaamet. 2024年4月16日閲覧。
  8. ^ a b Möllits, K. (2004), Kütt, V., ed. (エストニア語) (PDF), Endla Looduskaitseala Männikjärve Raba, Endla Looduskaitseala, https://www.digar.ee/arhiiv/en/download/187631 
  9. ^ Sillasoo, Ülle; et al. (2007-01), “Peat multi-proxy data from Männikjärve bog as indicators of late Holocene climate changes in Estonia”, Boreas 36 (1): 20-37, doi:10.1111/j.1502-3885.2007.tb01177.x, ISSN 0300-9483 
  10. ^ a b Männikjärve hiking trail (2.2 km)”. Loodusekagoos. Riigimetsa Majandamise Keskuks. 2024年4月16日閲覧。
  11. ^ Keskkonnaamet 2015, p. 61.
  12. ^ Keskkonnaamet 2015, p. 65.
  13. ^ a b c Matkapäev Kirnal ja Endlas tõi radadele vaprad huvilised” (エストニア語). Vooremaa (2010年5月27日). 2024年4月15日閲覧。
  14. ^ a b Keskkonnaamet 2015, p. 66.
  15. ^ a b Keskkonnaamet 2015, p. 63.
  16. ^ Endla | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2020年7月13日). 2024年4月20日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]