ハンミョウ科

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ハンミョウ科 Cicindelidae
Reitter Cicindela.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera
亜目 : オサムシ亜目 Adephaga
上科 : オサムシ上科 Caraboidea
: ハンミョウ科 Cicindelidae
学名
Cicindelidae
和名
ハンミョウ科
英名
Tiger Beetle

本文参照

ハンミョウ斑猫英語: Tiger Beetle)は、コウチュウ目(鞘翅目)ハンミョウ科学名Cicincelidae)に属する昆虫の総称。あるいはその中の1種 Cicindela japonica Thunberg和名。幼虫・成虫とも肉食性の甲虫である。

なお、漢方生薬にある「斑猫」は、名前は同じでもかなり縁遠いツチハンミョウ科の昆虫を指している。

概要[編集]

熱帯亜熱帯を中心に亜寒帯まで、世界中から2000種程が知られている。うち日本に分布するのは22種・8亜種である。日本最大の種類は体長20mmほどのハンミョウ(ナミハンミョウ) Cicindela japonica だが、世界最大のハンミョウはアフリカ南部に分布するオオエンマハンミョウ Manticora latipennis で、体長6cmに達し、巨大な顎をもつ。本種はタイガービートルの名でペット用に販売される。

成虫は体に対して頭部が大きく、複眼や大顎が発達している。また、脚も細長く発達している。体色は種類によって様々で、全身が黒いものもいれば、斑紋や金属光沢のある鮮やかな体色のものもいる。

動作は非常に敏捷で、素早く走り回ったり翅を使って飛び回ったりする。ただし通常の生活で飛ぶ距離は数十m以内で、広域分散を行うときを除くと、空高く飛んだり長距離を飛び続けることはあまり行わない。中にはマガタマハンミョウにみられるように後翅が退化した種類もいて、これらは飛ぶことができない。

岩場、砂漠、川原、海岸など植物の少ない環境に生息し、昼行性の種類がよく知られるが、森林の樹上で生活する種類、あるいは夜行性の種類もいる。

食性は肉食性で、ハエアリなどの小昆虫の他、ヨコエビミミズなども捕食する。ハンターのイメージが独り歩きしている彼らだが、昆虫の死骸も食べる。また、おもに小型種が飼育下で削り節(鰹節)や粉砕処理したドッグフード等の“死に餌”も盛んに食べることはあまり知られていない。大型種であるナミハンミョウも、生肉の小片を与えると食べることがわかっている。

成虫は粘土質の固くしまった裸地の土中などに一粒ずつ離して卵を産みつけ、孵化した幼虫はそのまま卵のあった場所の土壌を掘り下げて巣穴とする。幼虫の巣穴は産卵の行われた場所に垂直に掘られた円筒形の深い穴であり、温帯産のハンミョウの多くでは地表に巣穴を掘るが、熱帯や亜熱帯には木の幹に巣穴を掘る種もある。海岸の岩礁にみられるシロヘリハンミョウでは、海岸の岩石が風化して、亀裂に粘土質の風化生成物がたまったところに巣を掘っている。幼虫も肉食性で、巣穴の円形の入り口付近を、円盤状の頭部と前胸でマンホールの蓋のように塞いで待ちかまえ、付近を通るアリ等の昆虫を捕らえ、中に引き込んで食べる。巣穴から勢いよく飛び出し、大顎で獲物を捕らえる様はびっくり箱のようである。このとき力の強い獲物に巣穴の外に引きずり出されないよう、幼虫の背面には前方を向いたかぎ状の突起が備わっており、これを巣穴の壁に引っ掛けている。3齢が終齢であり、充分成長した終齢幼虫は巣穴の口を土でふさぎ、巣穴の底を蛹室に作り替えて蛹となる。

毒性について[編集]

漢方生薬にある「斑猫」は、名前は同じでもかなり縁遠いツチハンミョウ科マメハンミョウミドリゲンセイなどを指す。これらは非常に強いカンタリジンという毒性成分を含み、国外では実際に暗殺に利用された例がある。しかし、日本では江戸時代の初期に渡来した『本草綱目』を訳した際の間違いで、ハンミョウ科のものがそれだとされてしまった。そのため、実際にハンミョウ科の昆虫の粉が忍者などによって暗殺用の薬に使われたとも言われる。特に種としてのハンミョウはその鮮やかな色彩も相まって、いかにも毒がありそうに見えるのも、このような誤解の一因でもあろう。そのため、ハンミョウに毒があるとの誤解は長く残り、今も結構な知識人にもこの誤解を持つ人がいるという[1]

ハンミョウ科の昆虫には実際には毒はない。ただし大顎で噛まれるとかなり痛いので、注意しなければならないことに変わりはない。

日本のハンミョウ[編集]

ハンミョウ(ナミハンミョウ) Cicindela japonica
アイヌハンミョウの標本

ハンミョウ類の生息環境は多岐にわたるが、日本産に限れば植物の少ない環境に生息する昼行性の種類が多い。

日本のハンミョウ類でもっとも目にする機会が多いのは、ハンミョウ(ナミハンミョウ) Cicindela japonica である。体長は20mmほどだが、日本に分布するハンミョウ科の中では最大の種類である。頭部は金属光沢のある緑色、前翅はビロード状の黒紫色に白い斑点があり、前胸部と前翅の中央部に赤い横帯が入る。体の下面は金属光沢のある青緑色をしている。体には独特の香りがある(フルーツのような芳香と感じる人もいる)。

本州四国九州に加え、離島では対馬屋久島に分布する。成虫は春から秋まで見られ、日当たりがよくて地面が湿っている林道や川原などによく生息するが、公園など都市部でも見られる。人が近づくと飛んで逃げるが、1、2メートル程度飛んですぐに着地し、度々後ろを振り返る。往々にしてこれが繰り返されるためその様を道案内にたとえ「ミチシルベ」「ミチオシエ」という別名がある。冬は成虫で、土中で集団越冬する。

日本のハンミョウ科の種[編集]

亜種は日本産のみを示した。

脚注[編集]

  1. ^ 梅谷 (1994) p.123

参考文献[編集]

  • 梅谷献二 『原色図鑑 野外の害虫と不快な虫』、(1994)、全国農村教育協会