アルダブラゾウガメ

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アルダブラゾウガメ
アルダブラゾウガメ
アルダブラゾウガメ Dipsochelys dussumieri
保全状況評価[a 1][a 2]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 VU.svgワシントン条約附属書II
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : リクガメ上科 Testudioidea
: リクガメ科 Testudinidae
亜科 : リクガメ亜科 Testudininae
: アルダブラゾウガメ属 Dipsochelys
: アルダブラゾウガメ D. dussumieri
学名
Dipsochelys dussumieri
(Gray, 1831)
シノニム

Testudo dussumieri Gray, 1831

和名
アルダブラゾウガメ
英名
Aldabra giant tortoise

アルダブラゾウガメDipsochelys dussumieri)は、爬虫綱カメ目リクガメ科アルダブラゾウガメ属に分類されるカメ。アルダブラゾウガメ属の模式種

分布[編集]

セーシェルアルダブラ環礁[1][2][3]固有種。セーシェル(セーシェル諸島)、フランスレユニオン)、モーリシャスに移入[1][2]

形態[編集]

最大甲長123センチメートル[2][3]。メスよりもオスの方が大型になり、メスは最大甲長89センチメートル[3]。背甲はドーム状に盛り上がり筋状の盛り上がり(キール)はなく、第1肋甲板と第2肋甲板の継ぎ目周辺で背甲が窪まない[2]項甲板は小型[2]。第3椎甲板よりも第2椎甲板の方が大型になり、また第1肋甲板よりも第2肋甲板の方が大型になる[2]。背甲の色彩は黒や黒褐色一色[2]。腹甲はやや小型だが幅広く、左右の肛甲板の間に深い切れこみが入る[2]

頭部はやや扁平[2]。頭部や頸部、四肢、尾の色彩は暗灰色[2]

卵は直径4.8-5.5センチメートルの球形で、殻は白く硬い[2]。 また、 子ガメの頃は甲羅が柔らかく、甲羅が堅くなるのは甲長20cm頃。[4]

分類[編集]

以前はリクガメ属に含まれていたが、分子系統学的解析からリクガメ属の他種よりもセーシェルに近いマダガスカルに分布するクモノスガメ属マダガスカルリクガメ属に近縁と推定されている[3]。そのためアルダブラゾウガメ属としてリクガメ属から分割する説が有力とされる[3]。アルダブラゾウガメ属に対応する属名として本種を模式種としたDipsochelysを用いる説と、より記載が古いAldabrachelysを用いる説がある[2][5]AldabrachelysG. giganteaを模式種とするため、後述するようにG. giganteaが無効とされた場合はAldabrachelysも無効とされる[2][3]

1998年に本種と考えられていた個体の中に化石種とされていたセーシェルセマルゾウガメセーシェルヒラセゾウガメが含まれていたことが判明し、再発見が報告された[2]

一般的に知られる本種の学名Geochelone giganteaの模式標本は現存しないが、模式標本の産地(模式産地)がブラジルであること、甲長75センチメートルと小型であること、記載文が本種の特徴とは異なることなどから、G. giganteaの模式標本は本種ではなくキアシガメだったとする説が有力とされる[2]。その場合はG. giganteaの学名はキアシガメのシノニムとして無効になり、本種の学名はG. giganteaのシノニムとされていたGeochelone dussumieriになる[2]。種小名dussumieriは本種の模式標本を採集したJean-Jacques Dussumierへの献名[2]

生態[編集]

海岸沿いにある草原、内陸部の低木林、マングローブからなる湿原などに生息する[1][2]。野生下ではあまり日光浴を行わなず日陰の周辺で活動し、採食時も尾を太陽の方角に向けて頭部が甲の日陰になるようにする[2]。気温が高い雨期の晴天時は薄明薄暮性傾向が強くなり、昼間は日陰で過ごしたり水浴びや泥浴びを行う[2]。孵化直後の幼体の捕食者としてはカニ、鳥類、外来種のネズミ、ネコなどが挙げられる[2]。野生下での死因は熱中症によるものが最も多い[2]

食性は植物食傾向の強い雑食で、主にイネ科ネズミノウオ属カヤツリグサ科)や低木の若枝、葉(シクンシ科モモタマナ属)などを食べるが、動物の死骸(同種やカニ)、同種の糞を食べることもある[1][2]。海岸沿いに生息する個体は草を、内陸部の低木林に生息する個体は主に木の若枝や葉を食べる[2]。鼻孔を使って浅い水たまりから飲水することもあるが、乾季に水場がなくなると食物から水分を摂取したり蓄えた水分や代謝によって生じた水分を利用する[2]

繁殖形態は卵生。1-5月(主に4月)の雨期にオスは後方からメスの背甲に覆い被さり、断続的に鳴き声をあげて交尾を迫る[2]。他のオスに対しても前方や側面からも覆い被さり、自分が優位であることを主張する[2]。野生下では乾季にあたる6-7月の薄暮時から夜間にかけて産卵し、産卵場所は平坦で茂みや低木が点在する場所を好む[2]。1回に4-6個の卵を数年に1回だけしか産まないこともあれば(個体密度が高く栄養状態が悪い)、1回に12-14個の卵を年に2-3回に分けて産むこともあり(個体密度が低く栄養状態がいい)、産卵数や期間は個体密度や栄養状態による変異が大きい[2]。飼育下では1回に20-25個の卵を産んだ例もある[2]。後肢で25-30センチメートルの深さの穴を掘ってその中に産卵することもあるが、地面の窪みや茂みの中に直接産卵することもある[2]。卵は野生下では81-150日で孵化し、アルダブラ環礁では主に雨季の11-12月に孵化する[2]。飼育下では27-29℃の環境下で110-183日、29-31℃の環境下で97-125日で孵化した例がある[2]

1900年ごろ撮影されたジョナサンの写真

1766年マルク=ジョゼフ・マリオン・デュフレーヌによってセーシェルからモーリシャスに持ち込まれ、1918年に死亡した本種の個体の152年の飼育記録がある[5]。この個体は単に「マリオンのゾウガメ」とのみ通称されており、マリオンという名前ではなかったとされるが[5]、別の文献では本種の亜種であるセーシェルゾウガメの雌の個体「マリオン」が、前述の「マリオンのゾウガメ」と同様の経緯でモーリシャスに持ち込まれ、1918年に砲台からの転落事故で死亡した記録が残っている[6]。こちらのマリオンは捕獲当時30から50歳と推定されており、1918年の死亡時には地球上で最高齢の生物として認知されていた。また、自らの種が1790年代後半に絶滅して以降、120年余りを地球上最後の個体として生き延びた逸話とともに語られる事でも知られている[6]

これより長期の飼育記録としては1750年生まれとされロバート・クライブに飼育された後に、2006年にアリポーア動物園で死亡した個体(アドワイチャ)の255年の飼育記録がある[5]。一方でロバート・クライブが最後にインドにいた1767年からアリポーア動物園が開園する1875年までのアドワイチャの関する記録がないこと、2006年に死亡した個体は1875年にセーシャルから持ち込まれた個体とする報道もあるなど、この個体が実際に255年生きたという科学的根拠はない[5]

現在同種および同種の亜種の存命個体で最も長寿なものは、1882年に推定年齢50-70歳でセント・ヘレナへ持ち込まれ、2014年現在推定年齢182歳とされるセーシェルゾウガメのジョナサン (ゾウガメ)英語版である。ジョナサンは現在信頼に足る飼育記録が残る個体の中では最長寿とされており、1900年頃にボーア戦争の捕虜と共に撮影された写真が2008年に発見され、甲羅の模様から現在飼育されている同名の個体との同定が行われた。また、この時点で成体とほぼ同じ大きさであった事から、前述の推定年齢がほぼ確実なものとして認知されるようになった[7]。また、セイシェル諸島のバード島で飼育されている「エスメラルダ」という雄のアルダブラゾウガメの個体[8]は、2014年現在少なくとも170歳以上とされ、飼育記録上はジョナサンに次ぐ長寿記録となっている。なお、エスメラルダはギネスブックでは「世界で最も体重が重い亀」「世界で最も寿命の長い亀」として記載されている(2004年時点で推定200歳、体重約320kg[9])。

人間との関係[編集]

食用や油用、動物園の展示目的、剥製目的、ペット目的の乱獲などにより生息数は激減した[2]。化石からセーシェル広域に分布していたと考えられているが[1]、20世紀初頭にはアルダブラ諸島を除いて絶滅した[2]。セーシェルでは法的に保護の対象とされ生息地は1982年に「アルダブラ環礁」として世界自然遺産に登録され、アルダブラ諸島での学術調査などを除いた採集の禁止、アルダブラ諸島への上陸が規制されているなど厳重に保護されている[2]。1977年からアルダブラ諸島の個体群が絶滅した際の保険、観光、調査目的で他の島に保護区を設け繁殖・展示する試みが進められているが、密猟されることが多く成功していない[2]。セーシェルでは1977年にワシントン条約を批准し、1980年にはアルダブラ諸島の個体の商取引が禁止された[2]。アルダブラ諸島以外の個体のみ輸出されるようになり輸出量は1990年までは激減していたものの、1991年以降は輸出量が急増し1991-1995年には500頭以上が正規輸出された[2]。1997年に輸出が一時凍結され、2001年以降は輸出に成体30頭、幼体50匹の上限が定められた[2]。生息数は増加傾向にあったものの生息地の乾燥化や食糧不足により生息数が再び減少し、1998年以降は生息数がほぼ安定している[2]。一方で分布域が限定的であるため、災害や感染症による絶滅が懸念されている[2]1978年における生息数は150,000頭、1998年における生息数は100,000頭と推定されている[2]

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。主に幼体が流通しセーシェルから野生個体とタンザニアやモーリシャス産の飼育下繁殖個体が少数流通する[2]。大型種のため広大なスペースが必要になり、一般家庭での飼育にはむかない[2][3]。幼体時から与える餌に偏りがあると、急激な成長に伴い骨や甲羅に異常が起こりやすい[2]

参考文献[編集]

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  1. ^ a b c d e 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、196頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at 安川雄一郎 「ゾウガメと呼ばれるリクガメの分類と自然史(前編)」『クリーパー』第32号、クリーパー社、2006年、29-38、58-59頁。
  3. ^ a b c d e f g 安川雄一郎 「ペットとしてのリクガメの飼育と分類」『エクストラ・クリーパー』No.3、誠文堂新光社、2008年、26-27、51-52、60-61、70頁。
  4. ^ カメの飼い方がよくわかる本 成美堂出版 2013年4月20日発行
  5. ^ a b c d e 安川雄一郎 「ゾウガメと呼ばれるリクガメ類の分類と自然史(後編)」『クリーパー』第33号、クリーパー社、2006年、17-21頁。
  6. ^ a b 百二十年の孤独 新編 新しい国語 東京書籍(原典:WWF Japan監修 プロジェクトチーム編 『失われた動物たち - 20世紀絶滅動物の記録』 広葉書林、1996年。)
  7. ^ Jonathan the 176-year-old tortoise revealed as world's oldest animal in Boer War、2008年12月5日
  8. ^ カメの寿命は万年? - 動く図鑑MOVE
  9. ^ 中村庸夫『島の名前』(東京書籍, 2004年8月)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ CITES homepage
  2. ^ The IUCN Red List of Threatened Species
    • Tortoise & Freshwater Turtle Specialist Group 1996. Geochelone gigantea. In: IUCN 2013. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.2.