「空間除菌剤」の版間の差分
→研究機関・公的機関による分析: 出典がなかった記述についてNITEの資料を確認したところ、空間噴霧への言及はなかった。厚労省や経産省が公表した資料には吸入に関する記述があったため、反映した。 |
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* {{Cite journal|和書|author=西村秀一 |title=ウイルス不活化効果を標榜する二酸化塩素ガス放散製剤の実用性の有無の検証―冬季室内相当の温湿度での空中浮遊インフルエンザウイルスの不活化について― |url=https://doi.org/10.4058/jsei.31.310 |journal=日本環境感染学会誌 |publisher=日本環境感染学会 |volume=31 |issue=5 |pages=310-313 |year=2016 |doi=10.4058/jsei.31.310}} |
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2020年7月16日 (木) 02:33時点における版
空間除菌剤(くうかんじょきんざい)とは、二酸化塩素などの物質を放散することで空気中に存在する菌やウイルスを除菌できるとする商品。空間除菌グッズ、空間除菌用品などとも呼ばれる。医薬品としての承認を受けておらず、法律上は雑貨扱いのものが多い[1]。また、2019新型コロナウイルスの感染拡大以降、空間除菌と称して次亜塩素酸水などを噴霧している事例や[2]ほか、次亜塩素酸ナトリウムを混同して使用する例も見られる。
概要
市販されている空間除菌剤にはいくつかの種類がある。また、空間除菌剤ではないが、パナソニック製のジアイーノのように、水道水と塩から次亜塩素酸水を生成して放散する機器も販売されている[3]。
- 放散する物質
- 形状・目的
- 卓上型(置き型)
- 身体装着型(携帯型)
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効果
メーカーによる分析
「クレベリン」を販売している大幸薬品が、「クレベリンゲル」を部屋に設置した場合、二酸化塩素ガスがほぼ均一に部屋の中に拡がることを確認したと発表している[4]。ただし、「クレベリン」は日用雑貨品のため、特定ウイルス・菌、疾病等に対する効果・予防等を謳うことはできないとされている[5]。
研究機関・公的機関による分析
2017年に国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンターで行われた研究では、身体装着型(携帯型)の空間除菌剤にウイルスや細菌に対する抑制効果はまったく認められなかった[6]。
2020年5月15日、消費者庁は「身につけるだけで空間除菌」などと称する身体装着型の空間除菌用品を販売している業者に対して行政指導を行った[7]。行政指導では「当該表示の根拠とされる資料は、狭い密閉空間での実験結果に関する資料であることがほとんどであり、風通しのある場所等で使用する際には、表示どおりの効果が得られない可能性」があると指摘されている。
2020年6月26日、製品評価技術基盤機構(NITE)は「次亜塩素酸水」について、一定の条件の下では新型コロナウイルスに対して有効だとする報告を発表した[8][9]。ただし、NITEによる次亜塩素酸水の評価は、アルコール消毒液等の代替品として身の回りの物品を拭いて消毒する際の評価であり、手指の消毒や空間への噴霧については検証されていない[8][10]。また、厚生労働省や経済産業省は「人が吸入しないように注意してください。人がいる場所で空間噴霧すると吸入する恐れがあります。」と注意を呼びかけている[8]。
危険性
二酸化塩素
二酸化塩素ガス自体は有効な殺菌作用を持つものの、眼や呼吸器などの粘膜を刺激して喘息などの原因となる危険性がある[11]。
また、二酸化塩素が食品添加物であることから安全と称している製品もあるが、製品自体の安全性が高いことを示すわけではないという指摘もある。実際に除菌剤を首からぶら下げて幼児を抱いていたところ、幼児の胸部が化学熱傷を負う事故も発生している。また、長期間低濃度雰囲気での曝露に関する安全性の検証は不安定で反応性の高いガスであるため、塩素ガスより毒性が高く、世界的にも安全性は確立されていない[12]。
次亜塩素酸水
次亜塩素酸を含む消毒薬(次亜塩素酸水・次亜塩素酸ナトリウム液)は、厚生労働省によって「次亜塩素酸を含む消毒薬の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこと」とされている[2]。また、厚生労働省は「感染予防に役立つ見込みがなく、濃度など条件次第では有害になりうるので使用はやめてほしい」と求めている[13]。消費者庁と国民生活センターが運営している「事故情報データバンクシステム」にも、次亜塩素酸噴霧液によるものと見られる健康被害に関する報告が寄せられている[14][15][16]。
次亜塩素酸水は食品の殺菌に使われるほか、食品添加物にも指定されていることから安全であると誤解されることもある。しかし、次亜塩素酸水は最終食品の完成前に除去する(口に入らない)ことという前提で食品添加物に指定されているのであり、噴霧する場合にも安全であるとはされていない[2][13]。
また、次亜塩素酸水の噴霧器を車内に搭載した観光バス会社が、車両の電子機器の故障や乗客の不快感などを理由に撤去した事例もある[2]。
長年に渡り、使用している医療機関や施設もあり[要出典]、見解が分かれている所である。
尚、空間噴霧については、日本透析医学会や機能水シンポジウムなどでも発表されている、医療機関などでの使用例や新型インフルエンザの感染拡大の抑制についてなどを事例が発表されている[要出典]事もあり、見解が分かれている所である。
次亜塩素酸ナトリウム
Twitterなどでは次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムを混同する書き込みが見られ、「次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めたものだと思っていた」といった誤解も見られる[17]。次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤の製造メーカーにも「加湿器に使用できるか?」といった問い合わせが寄せられているという。メーカーは「たとえ水で薄めたとしてもアルカリ性が強い」としており、「加湿器などで霧状に噴霧された希釈液を吸い込むと、せき込んだり、呼吸器に異常をきたしたり、目に入ると失明のおそれもあります。また、機器の動作不良や故障の原因になる場合もあります」と述べ、注意喚起している[17]。
脚注
- ^ “「着けるだけ」で予防? 空間除菌剤の品薄続く 消費者庁「表示根拠乏しい」”. 毎日新聞. 2020年5月29日閲覧。
- ^ a b c d 天羽優子. “次亜塩素酸ナトリウム液・次亜塩素酸水を吸入してはいけない”. 2020年5月29日閲覧。
- ^ “ジアイーノ”. 2020年5月29日閲覧。
- ^ 大幸薬品. “二酸化塩素の実験結果”. 2020年5月29日閲覧。
- ^ 大幸薬品. “クレベリン 置き型に関するご質問”. 2020年5月29日閲覧。
- ^ 西村秀一, 「身体装着型の二酸化塩素放散製剤の検証」『日本環境感染学会誌』 32巻 4号 2017年 p.222-226, doi:10.4058/jsei.32.222。
- ^ “携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について” (2020年5月15日). 2020年5月29日閲覧。
- ^ a b c “次亜塩素酸水は新型コロナに有効だと確認したが... 政府「吸入しないように注意を」” (2020年6月26日). 2020年7月16日閲覧。
- ^ “新型コロナウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価にかかる検証試験の結果について(第3報)” (2020年6月26日). 2020年7月16日閲覧。
- ^ “新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法(一覧)” (2020年7月6日). 2020年7月16日閲覧。
- ^ 公益財団法人日本学校保健会. “Q&A 二酸化塩素による除菌等をうたった製品の使用について”. 2020年5月29日閲覧。
- ^ 大久保 憲. “市販の二酸化塩素製剤の殺菌効果と人体への安全性は?”. 日本医事新報社. 2020年5月29日閲覧。
- ^ a b 尾崎修二 (2020年5月29日). “次亜塩素酸水を噴霧すると除菌できるの? 効果は確認されていません”. 毎日新聞. 2020年5月30日閲覧。
- ^ 独立行政法人製品評価技術基盤機構 消毒手法タスクフォース 新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会事務局. “「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート)”. 経済産業省. 2020年5月30日閲覧。
- ^ “次亜塩素酸噴霧液 事故情報ID:0000372704”. 2020年5月30日閲覧。
- ^ “次亜塩素酸水生成液 事故情報ID:0000373274”. 2020年5月30日閲覧。
- ^ a b Kensuke Seya (2020年4月24日). “新型コロナの感染防止で広がる"勘違い" 家庭に身近な「消毒液」にメーカーが警鐘”. Buzzfeed. 2020年5月30日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 西村秀一, 林宏行, 浦繁, 阪田総一郎「低濃度二酸化塩素による空中浮遊インフルエンザウイルスの制御―ウイルス失活効果の湿度依存性―」『日本環境感染学会誌』第32巻第5号、日本環境感染学会、2017年、243-249頁、doi:10.4058/jsei.32.243。
- 西村秀一「ウイルス不活化効果を標榜する二酸化塩素ガス放散製剤の実用性の有無の検証―冬季室内相当の温湿度での空中浮遊インフルエンザウイルスの不活化について―」『日本環境感染学会誌』第31巻第5号、日本環境感染学会、2016年、310-313頁、doi:10.4058/jsei.31.310。