コンテンツにスキップ

「笠間氏」の版間の差分

リンクを追加
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
履歴の双方向閲覧
← 古い編集新しい編集 →
削除された内容 追加された内容
ビジュアルウィキテキスト
編集の要約なし
Dong1jin4 (会話 | 投稿記録)
2,549 回編集
1行目: 1行目:
'''笠間氏'''（かさまし）は、日本の氏族。[[常陸国]]の[[笠間城]]を根拠としていた武士団が著名である。
'''笠間氏'''（かさまし）は、日本の氏族。[[常陸国]]の[[笠間城]]を根拠としていた武士団が著名である。

==宇太笠間連==
'''宇太笠間連'''は[[大和国]][[宇陀郡]]笠間を拠点としていた、[[連]]（むらじ）の姓（かばね）古代の氏族{{Sfn|太田|1934|p=1455}}。『[[先代旧事本紀]]』「天孫本紀」の中に「宇太笠間連祖大幹命」という名前が見える{{Sfn|太田|1934|p=1455}}{{Sfn|黒田達也|2014|p=13}}。

==大和の笠間氏==
古代史族の[[#宇太笠間連|宇太笠間連]]の子孫と思われる大和国の笠間氏である{{Sfn|太田|1934|p=1455}}。『[[正倉院文書]]』[[天平勝宝]]4年（[[752年]]）充厨子彩色帳に「笠間家足」という名前が記述されている{{Sfn|太田|1934|p=1455}}{{Sfn|小岩正樹|2014|p=21}}。

また[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]には笠間定輔という人物が大和にいたとされる{{Sfn|太田|1934|p=1455}}。


== 常陸笠間氏 ==
== 常陸笠間氏 ==
[[下野宇都宮氏]]の一族である[[塩谷朝業]]の子・[[笠間時朝]]を祖としている<ref name=eda31>江田、2014年、P31</ref>。時朝は常陸国笠間郡12ヶ郷を領し、初めて「笠間」を名乗った<ref name=eda31/>。時朝は武人としてだけでなく、[[和歌]]にも優れ、[[浄土宗]]に深く帰依した<ref name=eda31/>。
[[下野宇都宮氏]]の一族である[[塩谷朝業]]の子・[[笠間時朝]]を祖としている{{Sfn|江田|2014|p=31}}{{Sfn|太田|1934|p=1455}}{{Efn|
{{Quotation|「[[宇都宮業綱|宇都宮成綱]]─塩屋四郎朝業─親朝」その弟「賢快（号笠間）」その兄「時朝（長門守、左衛門尉）─朝景（景朝、左衛門尉）─盛朝（左衛門尉）」その弟「時貞」弟「朝宗（周防守）」|[[尊卑分脈]]|{{Sfn|太田|1934|p=1455}}}}
{{Quotation|「塩谷朝業─時朝（笠間長門守）─太郎兵衛景朝─三郎左衛門尉盛朝─三郎兵衛長朝」|宇都宮系図|{{Sfn|太田|1934|p=1455}}}}
{{Quotation|「時朝・常陸国笠間城主、笠間と号す。文永2年（[[1265年]]）乙丑二月九日卒、六十二、歌人」|下野国志|{{Sfn|太田|1934|p=1455}}}}
}}。時朝は常陸国笠間郡12ヶ郷を領し、初めて「笠間」を名乗った{{Sfn|江田|2014|p=31}}。時朝は武人としてだけでなく、[[和歌]]にも優れ、[[浄土宗]]に深く帰依した{{Sfn|江田|2014|p=31}}。


3代目の[[笠間盛朝]]以降の系譜は判然としないが、[[室町時代]]初頭の当主は[[笠間家朝]]（長門孫三郎を称する）<ref name=eda31/>で、笠間12ヶ郷のうち石井郷の半分が[[鎌倉府]]の[[御料所]]であったことから、家朝と次の代の[[笠間宗朝|宗朝]]は[[鎌倉公方]]に従って[[室町幕府]]の支援で鎌倉府に抵抗を続けていた宇都宮氏宗家と対立した<ref name=eda32>江田、2014年、P32</ref>。ところが、[[15世紀]]後半になると宇都宮氏宗家の求心力が高まり、笠間氏もこれに従って従来[[通字]]として「朝」の字を用いていたのを改め、宇都宮氏を[[烏帽子親]]として「綱」の字を与えられることになる<ref name=eda32/><ref name=eda42>江田、2014年、P42-43</ref>（ただし、[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]中期の当主であった[[笠間高広]]は元服期に[[宇都宮尚綱]]戦死後の混乱下にあったために一字を受けていない<ref name=eda50>江田、2014年、P50</ref>）。
3代目の[[笠間盛朝]]以降の系譜は判然としないが、[[室町時代]]初頭の当主は[[笠間家朝]]（長門孫三郎を称する）{{Sfn|江田|2014|p=31}}で、笠間12ヶ郷のうち石井郷の半分が[[鎌倉府]]の[[御料所]]であったことから、家朝と次の代の[[笠間宗朝|宗朝]]は[[鎌倉公方]]に従って[[室町幕府]]の支援で鎌倉府に抵抗を続けていた宇都宮氏宗家と対立した{{Sfn|江田|2014|p=32}}。ところが、[[15世紀]]後半になると宇都宮氏宗家の求心力が高まり、笠間氏もこれに従って従来[[通字]]として「朝」の字を用いていたのを改め、宇都宮氏を[[烏帽子親]]として「綱」の字を与えられることになる{{Sfn|江田|2014|p=32}}{{Sfn|江田|2014|pp=42-43}}（ただし、[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]中期の当主であった[[笠間高広]]は元服期に[[宇都宮尚綱]]戦死後の混乱下にあったために一字を受けていない{{Sfn|江田|2014|p=50}}）。


15世紀末の当主とみられる[[笠間資綱]]は宇都宮氏に対して陰謀を企てたことが露見して出奔し、重臣の寺崎氏らが宇都宮氏に庇護を求めている<ref name=eda42/>。高広の子と推定される[[笠間綱家]]の代の[[天正]]12年（[[1584年]]）に同じ宇都宮家中の[[益子氏]]と争い、天正15年（[[1587年]]）になってようやく主君である[[宇都宮国綱]]に対して謝罪の[[起請文]]を提出している<ref name=eda50/>。
15世紀末の当主とみられる[[笠間資綱]]は宇都宮氏に対して陰謀を企てたことが露見して出奔し、重臣の寺崎氏らが宇都宮氏に庇護を求めている{{Sfn|江田|2014|p=42}}。高広の子と推定される[[笠間綱家]]の代の[[天正]]12年（[[1584年]]）に同じ宇都宮家中の[[益子氏]]と争い、天正15年（[[1587年]]）になってようやく主君である[[宇都宮国綱]]に対して謝罪の[[起請文]]を提出している{{Sfn|江田|2014|p=50}}。


通説では、天正18年（[[1590年]]）の[[豊臣秀吉]]による[[小田原征伐]]の際に笠間綱家が[[後北条氏]]に加担したため、宇都宮国綱に滅ぼされたとされているが、宇都宮国綱が[[佐竹義宣 (右京大夫)|佐竹義宣]]とともに秀吉に拝謁した際に随行した宇都宮氏の重臣の中に笠間綱家も含まれていることが[[佐竹氏]]の記録から判明しており、後北条氏への加担は事実ではない。恐らく、笠間氏は先の益子氏との争いなどで反抗的だと宇都宮氏に見なされて滅ぼされたと考えられている。なお、笠間領の処分には秀吉の重臣である[[増田長盛]]も関与しており、宇都宮国綱が[[豊臣政権]]の許可を得て笠間氏を滅ぼしたことがうかがえる<ref name=eda190>江田、2014年、P190</ref>。
通説では、天正18年（[[1590年]]）の[[豊臣秀吉]]による[[小田原征伐]]の際に笠間綱家が[[後北条氏]]に加担したため、宇都宮国綱に滅ぼされたとされているが、宇都宮国綱が[[佐竹義宣 (右京大夫)|佐竹義宣]]とともに秀吉に拝謁した際に随行した宇都宮氏の重臣の中に笠間綱家も含まれていることが[[佐竹氏]]の記録から判明しており、後北条氏への加担は事実ではない。恐らく、笠間氏は先の益子氏との争いなどで反抗的だと宇都宮氏に見なされて滅ぼされたと考えられている。なお、笠間領の処分には秀吉の重臣である[[増田長盛]]も関与しており、宇都宮国綱が[[豊臣政権]]の許可を得て笠間氏を滅ぼしたことがうかがえる{{Sfn|江田|2014|p=190}}。


== 安芸笠間氏 ==
== 安芸笠間氏 ==
[[鎌倉時代]]に[[下野国]]から[[安芸国]]に下向した[[栗栖氏]]を祖とする。戦国時代になると栗栖氏の一族であった[[笠間幸信|幸信]]・[[笠間幸親|幸親]]兄弟が栗栖の名字を捨て、笠間を名字とした。兄弟は[[吉川氏]]傘下の[[国人]]領主として活動し、笠間兄弟のいずれか、もしくは子の世代と思われる[[笠間刑部少輔]]は[[吉川経基]]の娘を妻とし、後に[[毛利豊元]]の庶子である[[兼重元鎮|元鎮]]を養子としている。
[[鎌倉時代]]に[[下野国]]から[[安芸国]]に下向した[[栗栖氏]]を祖とする。戦国時代になると栗栖氏の一族であった[[笠間幸信|幸信]]・[[笠間幸親|幸親]]兄弟が栗栖の名字を捨て、笠間を名字とした。兄弟は[[吉川氏]]傘下の[[国人]]領主として活動し、笠間兄弟のいずれか、もしくは子の世代と思われる[[笠間刑部少輔]]は[[吉川経基]]の娘を妻とし、後に[[毛利豊元]]の庶子である[[兼重元鎮|元鎮]]を養子としている。

== 筑前笠間氏 ==
== 筑前笠間氏 ==
[[大蔵氏|大蔵姓]][[高橋氏]]庶流の[[笠間種益|種益]]が笠間を名字としたことに始まる。
[[大蔵氏|大蔵姓]][[高橋氏]]庶流の[[笠間種益|種益]]が笠間を名字としたことに始まる。

== 脚注 ==
==脚注==
<references/>
===注釈===
{{脚注ヘルプ}}
{{Notelist}}
===出典===
{{Reflist|1}}

== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*江田郁夫『戦国大名宇都宮氏と家中』岩田書院、2014年 ISBN 978-4-87294-847-9
* {{Citation|和書|last= 江田|first=郁夫|author-link=|date=2014-2|title=戦国大名宇都宮氏と家中|series=岩田選書, 地域の中世 ; 14|publisher=岩田書院|id={{全国書誌番号|22378107}}|isbn=978-4-87294-847-9|ncid=BB15209803|oclc=876036413|ref=harv}}
* {{オープンアクセス}}{{Citation|和書|last=太田|first=亮|author-link=太田亮|others=[[上田萬年]]、[[三上参次]]監修|chapter=笠間　カサマ|pages=1455-1457|volume=第1|date=1934|title=姓氏家系大辞典|publisher=姓氏家系大辞典刊行会|id={{全国書誌番号|47004572}}|url={{NDLDC|1130845/801}} 国立国会図書館デジタルコレクション|ncid=BN05000207|oclc=673726070|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|author=黒田達也|title=「天孫本紀」の物部連系譜に関する復元的考察(1)|date=2014-12-17|publisher=大阪府立大学工業高等専門学校|journal=大阪府立大学工業高等専門学校研究紀要|volume=48|naid=120005539661|ncid=AA12548046|issn=2186-2826|url=http://hdl.handle.net/10466/14200|pages=1-14|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|author=小岩正樹|title=日本古代建築における様の研究|date=2014-2|publisher=|journal=|volume=|naid=500000929546|ncid=AA12548046|issn=|url=http://hdl.handle.net/2065/44693|pages=|ref=harv}}


{{DEFAULTSORT:かさまし}}
{{DEFAULTSORT:かさまし}}

2017年4月18日 (火) 12:55時点における版

笠間氏（かさまし）は、日本の氏族。常陸国の笠間城を根拠としていた武士団が著名である。

宇太笠間連

宇太笠間連は大和国宇陀郡笠間を拠点としていた、連（むらじ）の姓（かばね）古代の氏族[1]。『先代旧事本紀』「天孫本紀」の中に「宇太笠間連祖大幹命」という名前が見える[1][2]。

大和の笠間氏

古代史族の宇太笠間連の子孫と思われる大和国の笠間氏である[1]。『正倉院文書』天平勝宝4年（752年）充厨子彩色帳に「笠間家足」という名前が記述されている[1][3]。

また戦国時代には笠間定輔という人物が大和にいたとされる[1]。

常陸笠間氏

下野宇都宮氏の一族である塩谷朝業の子・笠間時朝を祖としている[4][1][注釈 1]。時朝は常陸国笠間郡12ヶ郷を領し、初めて「笠間」を名乗った[4]。時朝は武人としてだけでなく、和歌にも優れ、浄土宗に深く帰依した[4]。

3代目の笠間盛朝以降の系譜は判然としないが、室町時代初頭の当主は笠間家朝（長門孫三郎を称する）[4]で、笠間12ヶ郷のうち石井郷の半分が鎌倉府の御料所であったことから、家朝と次の代の宗朝は鎌倉公方に従って室町幕府の支援で鎌倉府に抵抗を続けていた宇都宮氏宗家と対立した[5]。ところが、15世紀後半になると宇都宮氏宗家の求心力が高まり、笠間氏もこれに従って従来通字として「朝」の字を用いていたのを改め、宇都宮氏を烏帽子親として「綱」の字を与えられることになる[5][6]（ただし、戦国時代中期の当主であった笠間高広は元服期に宇都宮尚綱戦死後の混乱下にあったために一字を受けていない[7]）。

15世紀末の当主とみられる笠間資綱は宇都宮氏に対して陰謀を企てたことが露見して出奔し、重臣の寺崎氏らが宇都宮氏に庇護を求めている[8]。高広の子と推定される笠間綱家の代の天正12年（1584年）に同じ宇都宮家中の益子氏と争い、天正15年（1587年）になってようやく主君である宇都宮国綱に対して謝罪の起請文を提出している[7]。

通説では、天正18年（1590年）の豊臣秀吉による小田原征伐の際に笠間綱家が後北条氏に加担したため、宇都宮国綱に滅ぼされたとされているが、宇都宮国綱が佐竹義宣とともに秀吉に拝謁した際に随行した宇都宮氏の重臣の中に笠間綱家も含まれていることが佐竹氏の記録から判明しており、後北条氏への加担は事実ではない。恐らく、笠間氏は先の益子氏との争いなどで反抗的だと宇都宮氏に見なされて滅ぼされたと考えられている。なお、笠間領の処分には秀吉の重臣である増田長盛も関与しており、宇都宮国綱が豊臣政権の許可を得て笠間氏を滅ぼしたことがうかがえる[9]。

安芸笠間氏

鎌倉時代に下野国から安芸国に下向した栗栖氏を祖とする。戦国時代になると栗栖氏の一族であった幸信・幸親兄弟が栗栖の名字を捨て、笠間を名字とした。兄弟は吉川氏傘下の国人領主として活動し、笠間兄弟のいずれか、もしくは子の世代と思われる笠間刑部少輔は吉川経基の娘を妻とし、後に毛利豊元の庶子である元鎮を養子としている。

筑前笠間氏

大蔵姓高橋氏庶流の種益が笠間を名字としたことに始まる。

脚注

注釈

[脚注の使い方]
  1. ^
    「宇都宮成綱─塩屋四郎朝業─親朝」その弟「賢快（号笠間）」その兄「時朝（長門守、左衛門尉）─朝景（景朝、左衛門尉）─盛朝（左衛門尉）」その弟「時貞」弟「朝宗（周防守）」 — 尊卑分脈、[1]
    「塩谷朝業─時朝（笠間長門守）─太郎兵衛景朝─三郎左衛門尉盛朝─三郎兵衛長朝」 — 宇都宮系図、[1]
    「時朝・常陸国笠間城主、笠間と号す。文永2年（1265年）乙丑二月九日卒、六十二、歌人」 — 下野国志、[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i 太田 1934, p. 1455.
  2. ^ 黒田達也 2014, p. 13.
  3. ^ 小岩正樹 2014, p. 21.
  4. ^ a b c d 江田 2014, p. 31.
  5. ^ a b 江田 2014, p. 32.
  6. ^ 江田 2014, pp. 42–43.
  7. ^ a b 江田 2014, p. 50.
  8. ^ 江田 2014, p. 42.
  9. ^ 江田 2014, p. 190.

参考文献

  • 江田郁夫『戦国大名宇都宮氏と家中』岩田書院〈岩田選書, 地域の中世 ; 14〉、2014年2月。ISBN 978-4-87294-847-9。 NCID BB15209803。OCLC 876036413。全国書誌番号:22378107。 
  • オープンアクセス太田亮「国立国会図書館デジタルコレクション 笠間　カサマ」『姓氏家系大辞典』 第1、上田萬年、三上参次監修、姓氏家系大辞典刊行会、1934年、1455-1457頁。 NCID BN05000207。OCLC 673726070。全国書誌番号:47004572。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1130845/801 国立国会図書館デジタルコレクション。 
  • 黒田達也「「天孫本紀」の物部連系譜に関する復元的考察(1)」『大阪府立大学工業高等専門学校研究紀要』第48巻、大阪府立大学工業高等専門学校、2014年12月17日、1-14頁、ISSN 2186-2826、NAID 120005539661、NCID AA12548046。 
  • 小岩正樹「日本古代建築における様の研究」2014年2月、NAID 500000929546、NCID AA12548046。 


スタブアイコン

この項目は、日本の歴史に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています（P:日本/P:歴史/P:歴史学/PJ日本史）。

スタブアイコン

この項目は、日本の歴史に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています（P:日本/P:歴史/P:歴史学/PJ日本史）。

「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=笠間氏&oldid=63797550」から取得