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'''薬剤誘発性ループス'''(やくざいゆうはつせいるーぷす、{{lang-en|''Drug-induced lupus erythematosus''}}, [[略称]]: '''DIL'''/'''DILE''')とは、薬剤が原因で[[全身性エリテマトーデス]](SLE)に類似した'''紅斑性狼瘡'''({{en|''Lupus Erythematosus''}}, '''LE''')を呈する疾患のこと<ref name="mieru6">病気がみえるVol.6 メディックメディア社発行 ISBN 978-4-89632-309-2</ref>。'''薬剤誘発性エリテマトーデス'''とも言う。
'''薬剤誘発性ループス'''(やくざいゆうはつせいるーぷす、{{lang-en|''Drug-induced lupus erythematosus''}}, [[略称]]: '''DIL''', '''DILE''')とは、薬剤が原因で[[全身性エリテマトーデス]](SLE)に類似した'''紅斑性狼瘡'''({{en|''Lupus Erythematosus''}}, '''LE''')を呈する疾患のこと<ref name="mieru6">病気がみえるVol.6 メディックメディア社発行 ISBN 978-4-89632-309-2</ref>。'''薬剤誘発性エリテマトーデス'''とも言う。


== 概要 ==
== 概要 ==
; 原因
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: 誘発する薬剤は多数報告があるが[[降圧剤]]の[[ヒドララジン]]や[[抗不整脈薬]]の[[プロカインアミド]]などが主たる原因とされる<ref name="mieru6"/>。ヒドララジンを高用量で長期使用した患者の約5%がDIL様症状を呈する。それ以外の薬剤はDIL誘発リスクが低い。{{main|[[:en:Drug-induced lupus erythematosus|Drug-induced lupus erythematosus<small>(英語版)</small>]]}}
: 誘発する薬剤は多数報告があるが[[降圧剤]]の[[ヒドララジン]]や[[抗不整脈薬]]の[[プロカインアミド]]などが主たる原因とされる<ref name="mieru6"/>。ヒドララジンを高用量で長期使用した患者の約5%がDIL様症状を呈する。それ以外の薬剤はDIL誘発リスクが低い。{{main|[[:en:Drug-induced lupus erythematosus|Drug-induced lupus erythematosus<small>(英語版)</small>]]}}
: [[コクラン共同計画#システマティック・レビュー|コクラン・レビュー]]は、[[ざ瘡]](にきび)の治療で長期使用される[[ミノサイクリン]]により「10万処方あたり約53症例」<ref group="注">一人平均331.3処方と仮定すると、302人中53症例(約17.5%)と推定できる。日本の皮膚科に通院しているざ瘡患者は約250万人と推定されている。</ref>の割合で誘発されると報告した。また、使用期間との強い関連性も示された<ref name="pmid23635606">{{cite journal |author= |title=Time to say goodbye to minocycline? |journal=[[:en:Drug and Therapeutics Bulletin]]. (DTB) |volume=51 |issue=5 |page=49 |date=2013-5-1 |url=http://www.bmj.com/content/347/bmj.f4536.long |doi=10.1136/dtb.2013.5.0176 |pmid=23635606}}</ref>。長期使用後の中止によって誘発される<ref name="pmid26657914">{{cite journal |authors=花井俊一朗, ほか |title=尋常性ざ瘡に対する長期ミノサイクリン内服により発症した薬剤誘発性ループスの1例 |journal=アレルギー |volume=64 |issue=9 |pages=1269-73 |date=2015-9 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/64/9/64_1269/_article/-char/ja/ |doi=10.15036/arerugi.64.1269 |pmid=26657914}}</ref>。ざ瘡の有病率ピークは女性で24.4±6.6歳であり<ref name="differin_2008-11">{{cite journal |authers=川島 眞、赤松浩彦、林 伸和、ほか |title=皮膚科専門医療機関における痤瘡患者実態調査 |date=2008-11 |publisher=[[ガルデルマ]]株式会社、[[塩野義製薬]]株式会社 |url=http://www.differin.jp/doctor/pdf/research.pdf |accessdate=2016-10-10}}</ref>、SLEの好発年齢と重なる。{{main|[[尋常性ざ瘡#議論|尋常性ざ瘡(にきび)#議論]]}}
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; 症状
; 症状

2016年11月4日 (金) 00:29時点における版

薬剤誘発性ループス(やくざいゆうはつせいるーぷす、英語: Drug-induced lupus erythematosus, 略称: DIL, DILE)とは、薬剤が原因で全身性エリテマトーデス(SLE)に類似した紅斑性狼瘡Lupus Erythematosus, LE)を呈する疾患のこと[1]薬剤誘発性エリテマトーデスとも言う。

概要

原因
誘発する薬剤は多数報告があるが降圧剤ヒドララジン抗不整脈薬プロカインアミドなどが主たる原因とされる[1]。ヒドララジンを高用量で長期使用した患者の約5%がDIL様症状を呈する。それ以外の薬剤はDIL誘発リスクが低い。
コクラン・レビューは、ざ瘡(にきび)の治療で長期使用されるミノサイクリンにより「10万処方あたり約53症例」[注 1]の割合でLE様症状が誘発されると報告した。使用期間との強い関連性も示された[2]。それは、長期使用後の中止によって誘発される[3]。ミノサイクリン以外のテトラサイクリン系は「8.8症例/10万人/年」の割合でLEが認められている[4]。ざ瘡患者の平均年齢は女性で24.4±6.6歳であり[5]、SLEの好発年齢と重なる。
症状
症状としては関節炎漿膜炎皮疹などのSLE様症状を呈するが、ループス腎炎CNSループスは起こさない[1]。SLEと異なり男女均等に発症し、抗ds-DNA抗体が見られることは稀である。
治療
治療としては疑わしい薬剤の使用を中止する。通常は数日から数週間で回復する[要出典]
ミノサイクリン誘発性ループスの症例では、中止から約4ヶ月後に血液検査所見が陰性化した[3]
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、治癒過程を早めることができる。

誘発薬剤

特に高リスク

高リスク

中〜低リスク

脚注

注釈

  1. ^ 一人平均331.3処方と仮定すると、302人中53症例(約17.5%)と推定できる。日本の皮膚科に通院しているざ瘡患者は約250万人と推定されている。

出典

  1. ^ a b c 病気がみえるVol.6 メディックメディア社発行 ISBN 978-4-89632-309-2
  2. ^ “Time to say goodbye to minocycline?”. en:Drug and Therapeutics Bulletin. (DTB) 51 (5): 49. (2013-5-1). doi:10.1136/dtb.2013.5.0176. PMID 23635606. http://www.bmj.com/content/347/bmj.f4536.long. 
  3. ^ a b 花井俊一朗, ほか (2015-9). “尋常性ざ瘡に対する長期ミノサイクリン内服により発症した薬剤誘発性ループスの1例”. アレルギー 64 (9): 1269-73. doi:10.15036/arerugi.64.1269. PMID 26657914. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/64/9/64_1269/_article/-char/ja/. 
  4. ^ Garner SE, et al. (2012-8-15). “Minocycline for acne vulgaris: efficacy and safety.”. en:The Cochrane database of systematic reviews. (8): CD002086. doi:10.1002/14651858.cd002086.pub2. PMID 22895927. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.cd002086.pub2/full. 
  5. ^ 皮膚科専門医療機関における痤瘡患者実態調査. ガルデルマ株式会社、塩野義製薬株式会社. (2008-11). http://www.differin.jp/doctor/pdf/research.pdf 2016年10月10日閲覧。. 

関連項目