重力式アーチダム

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日本にある重力式アーチダムの一つの湯田ダム

重力式アーチダム(じゅうりょくしきアーチダム、Concrete Arch Gravity Dam、CAGD)は、ダムの型式のひとつで、重力式コンクリートダムアーチ式コンクリートダムの特性を兼ね備えている。

概要[編集]

アーチ式ダムを作れるほど岩盤が堅固ではないが、重力式コンクリートダムよりもコンクリート使用量を節約することができる。構造的にはアーチによって人造湖からの水圧を両岸の堅固な岩盤に伝え、さらにダムの自重をも利用することで安定性を高いものとしている。

現在、世界最大の堤高を持つ重力式アーチダムはロシアエニセイ川に建設されたサヤノシュシェンスカヤダムであり、堤高は 242 m 、総貯水容量は約313億 m3 を有する。また、アメリカ合衆国ニューディール政策の契機ともなったコロラド川フーバーダムは高さ 221 m 、貯水量は約352億 m3と、これもまた世界を代表する重力式アーチダムである。

順位 国名 ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m3
完成年 備考
1 ロシア サヤノシュシェンスカヤダム 242.0 31,340,000 1990  
2 アメリカ フーバーダム 221.0 35,200,000 1936  

日本の重力式アーチダム一覧[編集]

日本においてはチッソ宮崎県五ヶ瀬川水系芋洗谷川に建設した芋洗谷ダムが最初の重力式アーチダムである。戦後は大規模なダムが建設され、中国電力岡山県高梁川水系成羽川に建設した新成羽川ダムが最大規模のダムである。だが、アーチ式コンクリートダムと同様に強固な岩盤が必要とするため建設できる地点はやはり限定されてしまい、1974年昭和49年)に山口県阿武川で完成した阿武川ダムを最後に現在まで建設された例はなく、日本ダム協会の調べによると全国で12基しかないという珍しい型式となってしまった[1]

所在地 水系 河川 ダム 高さ
(m)
総貯水
容量
(千m3
管理者 完成年 備考
岡山県 高梁川 成羽川 新成羽川ダム 103.0 127,500 中国電力 1968  
山口県 阿武川 阿武川 阿武川ダム 95.0 153,500 山口県 1974  
埼玉県 荒川 荒川 二瀬ダム 95.0 26,900 国土交通省 1961  
岩手県 北上川 和賀川 湯田ダム 89.5 114,160 国土交通省 1964  
福島県 阿賀野川 只見川 大鳥ダム 83.0 15,800 電源開発 1963  
京都府 淀川 名張川 高山ダム 67.0 56,800 水資源機構 1968  
三重県
和歌山県
新宮川 北山川 七色ダム 61.0 61,300 電源開発 1965  
福井県 九頭竜川 九頭竜川 鷲ダム 44.0 9,650 電源開発 1968  
福井県 九頭竜川 滝波川 小原ダム 35.5 152 北陸電力 1964  
福井県 九頭竜川 石徹白川 石徹白ダム 32.0 917 電源開発 1968  
宮崎県 五ヶ瀬川 芋洗谷川 芋洗谷ダム 25.5 61 JNC 1930 土木遺産

脚注[編集]

関連項目[編集]