自画像 (デューラー、1493年)
フランス語: Autoportrait 英語: Self-Portrait | |
作者 | アルブレヒト・デューラー |
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製作年 | 1493年 |
種類 | 羊皮紙 に 油彩 (1840年ごろカンヴァスに移転) |
寸法 | 56.5 cm × 44.5 cm (22.2 in × 17.5 in) |
所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『自画像』(じかぞう、仏: Autoportrait、英: Self-Portrait)、または『アザミを持っている芸術家の肖像』(アザミをもっているげいじゅつかのしょうぞう、仏: Autoportrait au chardon、英: Portrait of the Artist Holding a Thisle)は、ドイツのルネサンス期の巨匠、アルブレヒト・デューラーが制作した絵画である。羊皮紙に油彩で描かれており、カンヴァスに移転されている。画家は生涯にわたり素描、油彩の自画像を複数残しているが、1493年に描かれた本作はデューラーが描いた自画像の中で最初期の作品の1つであり、北ヨーロッパの芸術家による最初の自画像のうちの1点であると見なされている[1]。なお、デューラーは、本作の後にも油彩で26歳の時の『自画像』(プラド美術館、マドリード) と28歳の時の『自画像』 (アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン) を描いている。本作は、1922年にパリのルーヴル美術館に購入された[2]。
概要
[編集]1493年、デューラーは22歳であり、ストラスブールで仕事をしていた。すでにミヒャエル・ヴォルゲムートの下で徒弟修業を終え、各地を渡り歩く遍歴の旅も終えており、1494年7月7日にアグネス・フライと結婚している[3]。
制作年ならびに画家の手中にある植物は、本作が婚約者の肖像画 (ドイツ語で、Brautporträt) であることを示唆しているようである[4][5]。実際、デューラーは、植物学者によって「エリギウム・アメティスティウム (eryngium amethystinum)」であると特定された、開花している茎を提示している自分自身を描いたが、「エリギウム・アメティスティヌム」のドイツ語名は「Mannestreue」であり、「夫婦間の忠実」を意味し、「愛」の象徴とされていた[4]。このセリ科の植物はアザミ (肖像画の名称の由来) に似ており、薬として使用され、媚薬とも見なされている[6]。15世紀には、アザミは結婚における「夫の忠誠」の象徴であった[7][8]。植物はまた、宗教的な意味を持っているのかもしれない。デューラーの絵画、『悲しみの人としてのキリスト』 (1493–94年、カールスルーエ美術館) の背景の金地には、同じ植物が輪郭の形で刻まれている[3]。
デューラーは、哲学的な疑念を持つほうに気質的に傾いていた。そして、しばしば自分の顔を素描したり絵具で描いたりして、分析した。自分自身を理想化することもあれば、しないこともあるが、画面上部に記されている制作年の横に書かれた二行は、作品の哲学的およびキリスト教的意図を明らかにしている。
Myj sach die gat
Als es obenschtat
訳:私に関する出来事は神の手の中にある[9]。
本作は、おそらく鏡を見つめながら描かれたもので、左手は後に他の画家によって描き足されている[4][8]。デューラーは、複雑な心理を見せつつ憂鬱で内向的、真剣な表情で鑑賞者を見ている。
1805年に、ゲーテはライプツィヒの美術館でこの肖像画の複製を見て、「計り知れない価値」があると評価した[10]。『アザミを持っている芸術家の肖像』を「すべてのデューラーの作品中、最もフランス的」と呼んでいるローレンス・ゴーイングによれば、「他のどの絵画よりも筆致が奔放で、色彩は虹色に近い」作とされ、デューラーの絵画の中では独自性を持っている[2]。
デューラーの自画像
[編集]脚注
[編集]- ^ Fenyő, Iván (1956). Albrecht Dürer. Budapest: Corvina. p. 16.
- ^ a b Gowing (1987), p. 164
- ^ a b Wolf (2006), p. 28.
- ^ a b c 『カンヴァス世界の大画家 7 デューラー』、1983年、77-78頁。
- ^ NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動、1985年、56頁。
- ^ Botanical herbal note on the eryngium, on Botanical.com. Accessed 13 January 2012
- ^ Brion (1960), p. 127
- ^ a b ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて、2011年、429頁。
- ^ J.L. Koerner, The Moment of Self-portraiture in German Renaissance Art, University of Chicago Press (1997).
- ^ H. von Einem, Goethe und Dürer – Goethes Kunstphilosophie, Hamburg: von Schröder (1947).
参考文献
[編集]- 井上靖・高階秀爾編集『カンヴァス世界の大画家 7 デューラー』、中央公論社、1983年刊行、ISBN 4-12-401897-5
- 中山公男・佐々木英也責任編集『NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動』、日本放送出版協会、1985年刊行 ISBN 4-14-008424-3
- ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
- Brion, Marcel. Dürer. London: Thames and Hudson, 1960.
- Gowing, Lawrence. Paintings in the Louvre. New York: Stewart, Tabori & Chang, 1987. ISBN 1-55670-007-5
- Wolf, Norbert. Albrecht Dürer. Prestel, 2010. ISBN 978-3-7913-4426-3