「酸と塩基」の版間の差分
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{{Pathnav|[[化学]]|酸塩基化学|frame=1}}{{酸と塩基}} |
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{{Template:工事中|time=2017年8月9日 (水) 19:14 (UTC)}} |
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'''[[酸]]'''と'''[[塩基]]'''(さんとえんき)は[[化学反応]]における性質である。化学の初期には[[水溶液]]における化学反応を[[水素イオン]]と[[水酸化物イオン]]から説明するものとして酸と塩基を定義付けていたが(アレニウスの定義)、化学の発展とともにその定義は拡張され、今日では水溶液に限定しない一般の化学反応における[[電子配置|電子対]]の授受により酸と塩基は定義付けられている(ルイスの定義)。 |
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{{酸と塩基}} |
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'''[[酸]]'''と'''[[塩基]]'''(さんとえんき)は[[溶液]]の化学的性質の一つである。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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酸と塩基の定義は化学の進展により何度か拡張されているが、今日の[[義務教育]]で習う初歩的な定義 |
酸と塩基の定義は化学の進展により何度か拡張されているが、今日の[[義務教育]]で習う初歩的な定義は[[水溶液]]に関するものであるので、まずは水溶液をベースに酸と塩基を解説する。 |
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[[ファイル:1-Blue_and_red_litmus_paper.jpg|左|サムネイル|リトマス試験紙]] |
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[[水]]に物質([[溶液|溶質]])を溶かした上で、[[リトマス試験紙 |
[[水]]に物質([[溶液|溶質]])を溶かした上で、[[リトマス試験紙]]を水溶液につけてみると、溶かした[[溶液|溶質]]によってリトマス試験紙の色が赤になるものと青になるものがある事が知られている。前者のものを'''酸性'''の水溶液、後者のものを'''塩基性'''(もしくは'''アルカリ性''')の水溶液といい、酸性、塩基性の水溶液を作り出した溶質をそれぞれ'''酸'''、'''塩基'''という。 |
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リトマス以外の[[化学物質]]に対しても、水溶液が酸性であるか塩基性であるかに応じて、その化学物質を水溶液に入れた時に起こる[[化学反応]]が大きく異なる事が知られており、例えば酸性の水溶液は鉄を溶かして[[水素]]を生じるが、塩基性の水溶液ではそのような反応は起こらない。したがって溶質が酸であるか塩基であるかを知ることは実用上非常に重要である。 |
リトマス以外の[[化学物質]]に対しても、水溶液が酸性であるか塩基性であるかに応じて、その化学物質を水溶液に入れた時に起こる[[化学反応]]が大きく異なる事が知られており、例えば酸性の水溶液は鉄を溶かして[[水素]]を生じるが、塩基性の水溶液ではそのような反応は起こらない。したがって溶質が酸であるか塩基であるかを知ることは実用上非常に重要である。 |
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酸の例としては[[塩酸]]、[[硫酸]]、[[硝酸]]、[[酢酸]]などが挙げられ、塩基の例としては[[酸化ナトリウム]]、[[水酸化カリウム]]、[[アンモニア]]などが挙げられる。 |
酸の例としては[[塩酸]]、[[硫酸]]、[[硝酸]]、[[酢酸]]などが挙げられ、塩基の例としては[[酸化ナトリウム]]、[[水酸化カリウム]]、[[アンモニア]]などが挙げられる。 |
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酸性と塩基性は真逆の性質であり、酸性の水溶液と塩基性の水溶液を適切な量だけ混ぜると、水溶液は酸性の性質も塩基性の性質も持たない状態('''中性''')にな |
酸性と塩基性は真逆の性質であり、酸性の水溶液と塩基性の水溶液を混ぜると、'''酸塩基反応'''という[[化学反応]]が生じて、より中間的な状態へと近づき、同時に何らかの物質('''塩(えん)'''という)ができる。特に、酸性の水溶液と塩基性の水溶液を適切な量だけ混ぜると、水溶液は酸性の性質も塩基性の性質も持たない状態('''中性''')になる。この過程を[[中和 (化学)|'''中和''']]と呼ぶ。 |
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水溶液がどの程度酸性ないし塩基性であるかは、[[水素イオン指数|'''水素イオン指数pH''']]という尺度で測る事ができる。pHは0から14までの値を取り、pHが7であるときは中性、7より小さい時水溶液は酸性、7よりも大きい時には塩基性である。なお、厳密な定義は省くが、酸性の度合いが非常に強い場合を[[強酸 |
水溶液がどの程度酸性ないし塩基性であるかは、[[水素イオン指数|'''水素イオン指数pH''']]という尺度で測る事ができる。pHは0から14までの値を取り、pHが7であるときは中性、7より小さい時水溶液は酸性、7よりも大きい時には塩基性である。なお、厳密な定義は省くが、酸性の度合いが非常に強い場合を[[強酸]]、酸性の度合いが少ない水溶液を[[酸|弱酸]]という。[[強塩基]]、[[塩基|弱塩基]]も同様に定義する。 |
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なお、酸・塩基の強さを測る指標はpH以外にも、[[規定度]]・[[酸解離定数]] ({{pKa}}) ・[[酸度関数]] (''H''<sub>0</sub>) などがある。また、酸と塩基には、「硬い」「軟らかい」という表現をされる定性的な性質がある。詳しくは[[HSAB則]]を参照。 |
なお、酸・塩基の強さを測る指標はpH以外にも、[[規定度]]・[[酸解離定数]] ({{pKa}}) ・[[酸度関数]] (''H''<sub>0</sub>) などがある。また、酸と塩基には、「硬い」「軟らかい」という表現をされる定性的な性質がある。詳しくは[[HSAB則]]を参照。 |
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=== アレニウスの定義 === |
=== アレニウスの定義 === |
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こうした成果を踏まえ、[[スヴァンテ・アレニウス|アレニウス]]は、酸と塩基を以下のように定義した |
こうした成果を踏まえ、[[スヴァンテ・アレニウス|アレニウス]]は、酸と塩基を以下のように定義した[[#MF1|<sup>MF1</sup>]]{{Rp|page=144}}: |
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* 酸:水中で[[解離 (化学)|解離]]して[[水素イオン|水素イオン<ce>{H+}</ce>]]を生じる物質 |
* 酸:水中で[[解離 (化学)|解離]]して[[水素イオン|水素イオン<ce>{H+}</ce>]]を生じる物質 |
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* 塩基:水中で[[解離 (化学)|解離]]して[[水酸化物イオン]][[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]を生じる物質 |
* 塩基:水中で[[解離 (化学)|解離]]して[[水酸化物イオン]][[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]を生じる物質 |
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ここで'''水素イオン'''とは、水素原子[[水素イオン|<ce>{H}</ce>]]から[[電子]]を1つ取り除いた物質であり、'''水酸化物イオン'''とは酸素原子[[水素イオン|<ce>{O}</ce>]]と水素原子[[水素イオン|<ce>{H}</ce>]]が結合したものに電子を1つ付け加えた物質である<!-- この辺は主に素人向けの説明なので、厳密性は気にしていない。 -->。 |
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アレニウスの定義は、[[水|水分子<ce>{H2O}</ce>]]が水素イオン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]と水酸化物イオン[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]とに分解できる事を考えると理解しやすい。この事実を鑑みると、なんら物質を溶かしていない[[純水|純粋な水]]の場合、そこに含まれる[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]と[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]とは同じ量である。それに対し、酸性の水溶液では、酸が[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を生じるので[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]の方が[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]よりも多く、逆に塩基性の水溶液では塩基が[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]を生じるので、[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]の方が[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]よりも多い。 |
アレニウスの定義は、[[水|水分子<ce>{H2O}</ce>]]が水素イオン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]と水酸化物イオン[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]とに分解できる事を考えると理解しやすい。この事実を鑑みると、なんら物質を溶かしていない[[純水|純粋な水]]の場合、そこに含まれる[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]と[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]とは同じ量である。それに対し、酸性の水溶液では、酸が[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を生じるので[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]の方が[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]よりも多く、逆に塩基性の水溶液では塩基が[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]を生じるので、[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]の方が[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]よりも多い。 |
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=== ブレンステッド・ローリーの定義 === |
=== ブレンステッド・ローリーの定義 === |
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{{Main|ブレンステッド-ローリーの酸塩基理論}} |
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{{節スタブ|date=2017年8月9日 (水) 18:59 (UTC)}} |
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: <ce>{OH+}</ce> |
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==== 定義 ==== |
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アレニウスの定義における欠点を補うため、[[ヨハンス・ブレンステッド|ブレンステッド]]と[[マーチン・ローリー|ローリー]]は、アレニウスの定義において中心的な役割を果たしている[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]、すなわち[[陽子|プロトン]](陽子)をベースとして、酸と塩基の概念を以下のように再定義した: |
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歴史的には酸の水溶液が示す物性を'''酸性'''、灰汁などの水溶液が示す物性を'''アルカリ性'''と呼んだ(「アルカリ」は[[灰]]を意味する[[アラビア語]]に由来する)。 |
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* 酸:プロトン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を他の物質に渡すことができる物質[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=320}} |
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* 塩基:プロトン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を他の物質から受け取ることができる物質[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=320}} |
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よってブレンステッド・ローリーの定義における酸と塩基をそれぞれ'''プロトン供与体'''、'''プロトン受容体'''ともいう[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=320}}。なおブレンステッド・ローリーの定義では通常の分子である場合はもちろん、イオン化した分子に対しても酸や塩基が定義できる。 |
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アレニウスの定義と違い、定義の範囲を水溶液に限定していないので、アレニウスの定義にあった「水溶液にしか定義できない」という欠点は解消されている。 |
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酸性物質とアルカリ性物質とを混合すると、互いに性質を打ち消しあうことが知られており、これは'''[[中和 (化学)|中和]]反応'''と呼ばれる。 |
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==== 定義の相対性 ==== |
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'''塩'''(えん)が中和反応の生成物であることが判明してくると、「'''酸との中和反応により塩を生成するような物質群'''」という物質グループの概念が生まれ、そのグループに'''塩基'''の呼称が与えられた。ちなみに、塩を形成せず[[イオン化]]していない状態の'''酸'''を強調する場合に'''遊離酸'''と呼ばれることがある。 |
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アレニウスの定義と違い、ブレンステッド・ローリーによる酸と塩基の定義は、反応相手となる「他の物質」の存在があって初めて意味を持つものである。したがってある物質Aが「他の物質」Xに対しては酸であるにも関わらず、Xとは異なる「他の物質」Yに対しては塩基であるという事も起こりうる。例えば水は塩酸に対して塩基であるが[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=321}}、アンモニアに対しては酸として働く[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=321}}。 |
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==== アレニウスの定義との関係 ==== |
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酸と塩基の間の反応を広く'''酸塩基反応'''と呼ぶ。したがって「中和反応」は酸塩基反応の一形態であり、その語が用いられるのは、マクロなレベルで酸成分と塩基成分を混合する操作を説明する場合が多い。 |
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アレニウスによる酸の定義は、ブレンステッド・ローリーによる酸の定義における「他の物質」が水分子であり、しかも[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を水分子に渡す原因が解離である場合に相当するので、ブレンステッド・ローリーによる酸の定義はアレニウスによる酸の定義を含意する。 |
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一方ブレンステッド・ローリーによる塩基の定義はアレニウスによる塩基の定義と見かけ上大幅に異なるが、アレニウスによる塩基の中に存在する[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]が「他の物質」である反応相手の酸から[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を奪って水分子[[水|<ce>{H2O}</ce>]]を生成すると考えれば、ブレンステッド・ローリーによる塩基の定義がアレニウスによる塩基の定義を含意する事が分かる。 |
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なお、上述したように'''アルカリ性'''は'''酸性'''と同様に水溶液の物性の呼称として用いるのが原義である。これに対し塩基'''性'''とは、狭義には「'''酸との相互作用'''」する性質の意味である。ただし物性の呼称であるにもかかわらず、(アルカリ性と呼ばず)塩基性との表現されることもしばしばである。 |
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==== 共役酸-塩基対 ==== |
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酸(acid)を HA、塩基(base)を B とすると、ブレンステッド・ローリーによる酸塩基反応は一般に次の[[化学反応式]]で表される[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=321}}: |
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=== アレニウスの定義 === |
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[[1884年]]に[[アレニウス]]が提唱した定義では、[[水]] H<sub>2</sub>O に溶けると、[[陽子|プロトン]] H<sup>+</sup>(実は、水と結合した[[ヒドロニウムイオン]]H<sub>3</sub>O<sup>+</sup>であることが今日知られているが、一般に水溶液中の水素イオンをプロトンと呼び、 H<sup>+</sup> と書くのは許されている。このページではプロトンと呼称することにする)濃度を高める[[物質]]を'''酸'''、[[水酸化物イオン]] OH<sup>−</sup> 濃度を高める物質を'''塩基'''という。すなわち、[[水溶液]]中で酸はプロトンを、塩基は水酸化物イオンを ''生じる'' ということである。この定義における酸に当てはまる物質を'''アレニウス酸'''、塩基に当てはまる物質を'''アレニウス塩基'''と呼ぶ。プロトンや水酸化物イオンを生じる物質には2種類あり、[[電離]]によるものとよらないものがある。 |
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電離によるアレニウス酸、塩基について説明する。アレニウス酸を HA、アレニウス塩基を ROH とする。HA とはプロトンH<sup>+</sup> と任意の物質 A<sup>−</sup> との、ROH とは水酸化物イオン OH<sup>−</sup> と任意の物質 R<sup>+</sup> との化合物である(下図参照)。水に溶けるとアレニウス酸は H<sup>+</sup> と A<sup>−</sup> とに、アレニウス塩基は R<sup>+</sup> と OH<sup>−</sup> とに分解する。つまり、電離によって、H<sup>+</sup> あるいは OH<sup>−</sup> を生じる。 |
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: <ce>HA -> {H^+} + A^-</ce> |
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: <ce>ROH -> {R^+} + OH^-</ce> |
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具体例として、[[塩化水素]] HCl は H<sub>2</sub>O に溶解すると、H<sup>+</sup> に電離するのでアレニウス酸である。 |
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: <ce>HCl -> {H^+} + Cl^-</ce> |
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[[水酸化ナトリウム]] NaOH は H<sub>2</sub>O に溶解すると、OH<sup>−</sup> に電離するのでアレニウス塩基である。 |
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: <ce>NaOH -> {Na^+} + OH^-</ce> |
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電離によらないアレニウス酸、塩基について説明する。これらは、H<sup>+</sup> あるいは OH<sup>−</sup> の直接の源ではないが、結果的に水溶液中におけるプロトンあるいは水酸化物イオンの濃度を上げる。これは、水をイオンの源とするためである。 |
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例えば、[[アンモニア]]は水酸化物イオンに電離しないが、下のように水 H<sub>2</sub>O からプロトンを奪うことで、OH<sup>−</sup> を発生させている。 |
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: <ce>{NH3} + H2O\ <=>\ {NH4^+} + OH^-</ce> |
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いままで、プロトン(水素イオン)を H<sup>+</sup> と表記してきたが、文字通りのプロトンが実際の反応の中で活躍しているわけではない。なぜなら、どんな水溶液中でも、一瞬たりとも裸のプロトンは存在しないからである。存在しているプロトンはいつでも水分子と結合している。したがって、上の反応式は次のように表すのが正確である。 |
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: <ce>{AH} + H2O -> {H3O^+} + A</ce> |
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: <ce>{HCl} + H2O -> {H3O^+} + Cl^-</ce> |
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ただし、便宜上、水和されたプロトンを <ce>H^+</ce>と書くことは一般に認められている。水和されたプロトンは <ce>H9O4^+</ce> であり <ce>H3O^+</ce> ではないという説がある[[#F67|<sup>F67</sup>]]{{要ページ番号|date=2017年8月}}。 |
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[[塩 (化学)|塩]](えん)の意味はこのページの最初で説明したとおりであり、アレニウス酸塩基の混合によって水とともに生成されるが、狭義にはアレニウス酸とアレニウス塩基の当量混合物を指す。アレニウス酸・塩基の強度は[[リトマス紙]]に代表されるさまざまな[[指示薬]]や[[pHメーター]]などによって決定することができる。 |
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=== ブレンステッド・ローリーの定義 === |
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[[1923年]]に[[ヨハンス・ブレンステッド|ブレンステッド]]と[[マーチン・ローリー|ローリー]]が[[ブレンステッド-ローリーの酸塩基理論|提出した定義]]では、酸は H<sup>+</sup> を与える物質であり、塩基は H<sup>+</sup> を受け取る物質である。この定義にあてはまる酸を'''ブレンステッド酸'''、塩基を'''ブレンステッド塩基'''と呼ぶ。すなわち、ブレンステッド酸とは'''プロトン供与体'''、ブレンステッド塩基とは'''プロトン受容体'''である。水素を持つあらゆる物質に適用可能な定義である。 |
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一般に、酸を HA、塩基を B とすると、次の[[化学反応式]]で表される。 |
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: <math>\begin{matrix} |
: <math>\begin{matrix} |
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& \rm HA & + & \rm B \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm A^- & + & \rm HB^+ \\ |
& \rm HA & + & \rm B \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm A^- & + & \rm HB^+ \\ |
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& \rm ^{acid} & & \rm ^{base} & & \rm ^{conjugate \ base} \ & & \rm ^{conjugate \ acid} \\ |
& \rm ^{acid} & & \rm ^{base} & & \rm ^{conjugate \ base} \ & & \rm ^{conjugate \ acid} \\ |
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\end{matrix}</math> |
\end{matrix}</math> |
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なお、この式は左辺から右辺への反応が生じるのと同時に右辺から左辺への反応も生じる事を意味する<ref>ただしこの2つの反応の速度は等しいとは限らないので最終的に右辺だけ、もしくは左辺だけが残る場合もあり得るし、両者の反応速度が等しければ[[化学平衡|平衡状態]]になって右辺と左辺の両方の物質が残る。</ref>。 |
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そこで逆に、右辺から左辺への反応過程を見てみると、(ブレンステッド・ローリーの定義における)塩基[[水素イオン|<ce>{A-}</ce>]]と酸[[水素イオン|<ce>{HB+}</ce>]]が反応して、HAとBとを生成していると解釈できる。 |
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ここで、A<sup>−</sup> は酸 HA の'''共役塩基''' (conjugate base)、HB<sup>+</sup> は塩基 B の'''共役酸''' (conjugate acid)と呼ばれる。逆反応が起きればそれぞれ塩基・酸として働くからである。 |
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こうした理由により、[[水素イオン|<ce>{A-}</ce>]]を酸 HAの'''共役塩基'''(conjugate base)と呼び、[[水素イオン|<ce>{HB+}</ce>]]を塩基Bの'''共役酸'''という[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=321}}。 |
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具体例を挙げると、[[塩化水素]] HCl が[[水]] H<sub>2</sub>O に溶解すると、HCl は酸としてはたらいて H<sub>2</sub>O に H<sup>+</sup> を与え、H<sub>2</sub>O は塩基として働いて H<sup>+</sup> を受け取る。その結果、塩化水素の共役塩基として[[塩化物イオン]] Cl<sup>−</sup>、水の共役酸として[[オキソニウムイオン]] H<sub>3</sub>O<sup>+</sup> が生じる。 |
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: <math>\begin{matrix} |
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& \rm HCl & + & \rm H_2O \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm Cl^- & + & \rm H_3O^+ \\ |
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& \rm ^{acid} & & \rm ^{base} & & \rm ^{conjugate \ base} \ & & \rm ^{conjugate \ acid} \\ |
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\end{matrix}</math> |
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==== アンモニア水溶液 ==== |
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ブレンステッド・ローリーにおける酸塩基はアレニウスの定義と異なり、相手物質にもよる相対的なものである。例えば、水は、アンモニアに対しては、プロトンを与えるブレンステッド酸として作用するが、塩化水素に対しては、プロトンを受け取るブレンステッド塩基として振る舞う。 |
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ブレンステッド・ローリーの定義は、アレニウスの定義と違い、アンモニアが水に対して塩基になる事を説明できる。実際、アンモニアが水に溶ける過程 |
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: <math>\begin{matrix} |
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: <ce>{NH3} + H2O\ <=>\ {NH4^+} + OH^-</ce> |
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& \rm NH_3 & + & \rm H_2O \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm NH_4^+ & + & \rm OH^- \\ |
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において、アンモニアは水分子から[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を奪っているので、ブレンステッド・ローリーの定義における塩基である[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=321}}。 |
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& \rm ^{base} & & \rm ^{acid} & & \rm ^{conjugate \ acid} \ & & \rm ^{conjugate \ base} \\ |
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\end{matrix}</math> |
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=== ルイスの定義 === |
=== ルイスの定義 === |
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{{Main|en:Lewis acids and bases}} |
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[[1923年]]に[[ギルバート・ルイス|ルイス]]が提出した定義では、酸は電子対を受け取るあらゆる物質であり、塩基は電子対を供与するあらゆる物質である。この定義にあてはまる酸を'''ルイス酸'''、塩基を'''ルイス塩基'''と呼ぶ。すなわち、ルイス酸とは'''電子対受容体'''、ルイス塩基とは'''電子対供与体'''である。最も一般的であり、水素を持たない物質についても適用可能な定義である。 |
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[[ギルバート・ルイス|ルイス]]による以下の酸と塩基の定義は、ブレンステッド・ローリーの定義より更に広範な範囲をカバーする: |
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* 酸:電子対の受容体[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=346}} |
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* 塩基:電子対の供与体[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=346}} |
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ブレンステッド・ローリーの塩基Bは、プロトン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を受け取る際、B内にある電子対を[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]に供与する事により、[[水素イオン|<ce>{HB+}</ce>]]を作るので、ブレンステッド・ローリーの塩基はルイスの塩基でもある[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=346}}。同様の理由により、ブレンステッド・ローリーの酸はルイスの酸でもある[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=346}}。 |
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しかしルイスの定義は、プロトン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]の授受を伴わない反応に対しても酸や塩基を定義できる事に利点がある。例えば反応 |
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* ルイス酸: [[リチウム]][[イオン]]や[[塩化アルミニウム]]のように低エネルギーの[[空軌道]]をもつ[[化学種]]。 |
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: <math>\mathrm{Al}^{3+} + 6\mathrm{H_2O}</math><ce>\ <=>\ </ce><math>\mathrm{Al}(\mathrm{H_2O})_6{}^{3+}</math> |
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* ルイス塩基: [[アルコール]]、[[エーテル (化学)|エーテル]]、[[アルデヒド]]、[[ケトン]]など、[[非共有電子対]]を持つ[[化合物]]。 |
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ではプロトン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]は行われないが、<math>\mathrm{H_2O}</math>の電子対を<math>\mathrm{Al}^{3+}</math>に供与する為、<math>\mathrm{Al}^{3+}</math>、<math>\mathrm{H_2O}</math>はルイスの定義における酸と塩基である[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=346}}。 |
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: <math>\begin{matrix} |
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: |
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& \rm BF_3 & + & \rm :F^- \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm [BF_4]^- \\ |
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& \rm ^{acid} & & \rm ^{base} & & \rm ^{complex} \\ |
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\end{matrix}</math> |
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なお、水素イオン(H<sup>+</sup>)は、全く電子を持たないため、いかなる相手に対しても電子対供与体(=塩基)とはなり得ず、電子対受容体(=酸)としてのみ作用する。ルイスによる定義でも、水素イオンは最強の酸といえる。 |
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水素イオンが、水中で直ちに水分子と反応し、オキソニウムイオン(H<sub>3</sub>O<sup>+</sup>)に変化するのはそのためである(実際は溶液中において水素イオンは遊離状態では存在しないものと思われる)。 |
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: <math>\begin{matrix} |
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& \rm H^+ & + & \rm H_2O: \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm H_3O^+ \\ |
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& \rm ^{acid} & & \rm ^{base} & & \rm ^{complex} \\ |
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\end{matrix}</math> |
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また[[金属]]イオンなどに対する[[錯体]]の生成反応も金属イオンがルイス酸、電子対供与体である[[配位子]]がルイス塩基となる。 |
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: <math>\begin{matrix} |
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& \rm Ag^+ & + & \rm :NH_3 \ & \overrightarrow\longleftarrow \ & \rm [Ag:NH_3]^+ \\ |
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& \rm ^{acid} & & \rm ^{base} & & \rm ^{complex} \\ |
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\end{matrix}</math> |
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=== ウサノビッチの定義 === |
=== 参考:ウサノビッチの定義 === |
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[[1939年]]に[[ソビエト連邦]]のウサノビッチ ({{lang|ru|М. Усанович}}) が提出した定義では、酸は水素イオンおよびその他の[[陽イオン]]を放出するもの、あるいは[[陰イオン]]および電子と結合する能力のあるものはすべて含まれる[[#田中71|<sup>田中71</sup>]]{{要ページ番号|date=2017年8月}}。 |
[[1939年]]に[[ソビエト連邦]]のウサノビッチ ({{lang|ru|М. Усанович}}) が提出した定義では、酸は水素イオンおよびその他の[[陽イオン]]を放出するもの、あるいは[[陰イオン]]および電子と結合する能力のあるものはすべて含まれる[[#田中71|<sup>田中71</sup>]]{{要ページ番号|date=2017年8月}}。 |
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\end{matrix}</math> |
\end{matrix}</math> |
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== 強度 == |
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{{出典の明記|date=2017年8月|section=1}} |
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ある物質から[[水素イオン]]がひとつ脱離した化学種を、その物質の'''共役塩基'''と呼ぶ。反対に、ある物質に水素イオンがひとつ付加した化学種を、その物質の'''共役酸'''という。例えば、[[水]] (H<sub>2</sub>O) の共役塩基は[[水酸化物イオン]] (OH<sup>−</sup>) 、共役酸は[[オキソニウムイオン]](H<sub>3</sub>O<sup>+</sup>) である。 |
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物質によっては、純物質であっても自発的に共役酸と共役塩基に解離するものがある。この現象を[[自己解離]]と呼ぶ。例えば、水は通常の状態でわずかに[[オキソニウムイオン]]と[[水酸化物イオン]]に自己解離していることが知られている。 |
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: <ce>2H2O\ <=>\ {H3O^+} + OH^-</ce> |
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== 強度 == |
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ある溶液の酸性(塩基性)の強弱は、それに溶けている酸(塩基)固有の「強度」と、溶液中のその物質の「[[濃度]]」に依存する。例えば、[[硫酸]]は物質としては強い酸であるが、もし濃度が低ければ、溶液全体の酸性は弱い。 |
ある溶液の酸性(塩基性)の強弱は、それに溶けている酸(塩基)固有の「強度」と、溶液中のその物質の「[[濃度]]」に依存する。例えば、[[硫酸]]は物質としては強い酸であるが、もし濃度が低ければ、溶液全体の酸性は弱い。 |
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[[水素イオン濃度]]は、通常は水溶液中において、水素イオンの濃度を[[対数]]で示したものである。水素イオン濃度は現実的な酸・塩基の強度にあった指標であるが、単純に酸・塩基の濃度に比例するものではないため、値を知りたい場合には[[酸塩基指示薬]]などによって調べる必要がある。また、水溶液以外に適用する場合には、[[自己解離]]や[[水平化効果]]を考える必要がある。 |
[[水素イオン濃度]]は、通常は水溶液中において、水素イオンの濃度を[[対数]]で示したものである。水素イオン濃度は現実的な酸・塩基の強度にあった指標であるが、単純に酸・塩基の濃度に比例するものではないため、値を知りたい場合には[[酸塩基指示薬]]などによって調べる必要がある。また、水溶液以外に適用する場合には、[[自己解離]]や[[水平化効果]]を考える必要がある。 |
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== 酸塩基反応 == |
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酸と塩基を混合すると、酸塩基反応と呼ばれる化学反応が進行する。アレニウス定義による酸・塩基を混合した場合は'''中和反応'''が進行し水と[[塩 (化学)|塩]]が生じる。一方、ブレンステッドまたはルイスの定義による酸・塩基を混合した場合は、中和反応がおこらず、電子対の授受によって[[配位結合]]が形成され[[錯体]]が形成されるだけのこともある。 |
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=== 酸・塩基の硬さ === |
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酸・塩基は反応のしやすさによって、定性的に「硬い」ものと「軟らかい」ものに分類されている。硬い酸は硬い塩基と、軟らかい酸は軟らかい塩基とそれぞれ反応しやすく、安定な塩を形成する。詳しくは[[HSAB則]]を参照。 |
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== 代表的な酸・塩基 == |
== 代表的な酸・塩基 == |
2017年8月9日 (水) 21:17時点における版
酸と塩基 |
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酸と塩基(さんとえんき)は化学反応における性質である。化学の初期には水溶液における化学反応を水素イオンと水酸化物イオンから説明するものとして酸と塩基を定義付けていたが(アレニウスの定義)、化学の発展とともにその定義は拡張され、今日では水溶液に限定しない一般の化学反応における電子対の授受により酸と塩基は定義付けられている(ルイスの定義)。
概要
酸と塩基の定義は化学の進展により何度か拡張されているが、今日の義務教育で習う初歩的な定義は水溶液に関するものであるので、まずは水溶液をベースに酸と塩基を解説する。
水に物質(溶質)を溶かした上で、リトマス試験紙を水溶液につけてみると、溶かした溶質によってリトマス試験紙の色が赤になるものと青になるものがある事が知られている。前者のものを酸性の水溶液、後者のものを塩基性(もしくはアルカリ性)の水溶液といい、酸性、塩基性の水溶液を作り出した溶質をそれぞれ酸、塩基という。
リトマス以外の化学物質に対しても、水溶液が酸性であるか塩基性であるかに応じて、その化学物質を水溶液に入れた時に起こる化学反応が大きく異なる事が知られており、例えば酸性の水溶液は鉄を溶かして水素を生じるが、塩基性の水溶液ではそのような反応は起こらない。したがって溶質が酸であるか塩基であるかを知ることは実用上非常に重要である。
酸の例としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などが挙げられ、塩基の例としては酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
酸性と塩基性は真逆の性質であり、酸性の水溶液と塩基性の水溶液を混ぜると、酸塩基反応という化学反応が生じて、より中間的な状態へと近づき、同時に何らかの物質(塩(えん)という)ができる。特に、酸性の水溶液と塩基性の水溶液を適切な量だけ混ぜると、水溶液は酸性の性質も塩基性の性質も持たない状態(中性)になる。この過程を中和と呼ぶ。
水溶液がどの程度酸性ないし塩基性であるかは、水素イオン指数pHという尺度で測る事ができる。pHは0から14までの値を取り、pHが7であるときは中性、7より小さい時水溶液は酸性、7よりも大きい時には塩基性である。なお、厳密な定義は省くが、酸性の度合いが非常に強い場合を強酸、酸性の度合いが少ない水溶液を弱酸という。強塩基、弱塩基も同様に定義する。
なお、酸・塩基の強さを測る指標はpH以外にも、規定度・酸解離定数 (pKa) ・酸度関数 (H0) などがある。また、酸と塩基には、「硬い」「軟らかい」という表現をされる定性的な性質がある。詳しくはHSAB則を参照。
「酸」という名称は、酸には必ず酸素が含まれるのではないかというラヴォアジエの説によるMF1(p144)。しかし後にデービーが、塩酸という水素と塩素しか含んでいない物質も酸になる事を示した為、この説は修正が必要になったMF1(p144)。そしてデービーの成果は、酸素よりむしろ水素が酸の定義に重要である事を示唆していたMF1(p144)。
アレニウスの定義
こうした成果を踏まえ、アレニウスは、酸と塩基を以下のように定義したMF1(p144):
アレニウスの定義は、水分子が水素イオンと水酸化物イオンとに分解できる事を考えると理解しやすい。この事実を鑑みると、なんら物質を溶かしていない純粋な水の場合、そこに含まれるととは同じ量である。それに対し、酸性の水溶液では、酸がを生じるのでの方がよりも多く、逆に塩基性の水溶液では塩基がを生じるので、の方がよりも多い。
欠点
しかしアレニウスの定義は以下のような欠点を持つことが知られている:
ブレンステッド・ローリーの定義
定義
アレニウスの定義における欠点を補うため、ブレンステッドとローリーは、アレニウスの定義において中心的な役割を果たしている、すなわちプロトン(陽子)をベースとして、酸と塩基の概念を以下のように再定義した:
よってブレンステッド・ローリーの定義における酸と塩基をそれぞれプロトン供与体、プロトン受容体ともいうMF2(p320)。なおブレンステッド・ローリーの定義では通常の分子である場合はもちろん、イオン化した分子に対しても酸や塩基が定義できる。
アレニウスの定義と違い、定義の範囲を水溶液に限定していないので、アレニウスの定義にあった「水溶液にしか定義できない」という欠点は解消されている。
定義の相対性
アレニウスの定義と違い、ブレンステッド・ローリーによる酸と塩基の定義は、反応相手となる「他の物質」の存在があって初めて意味を持つものである。したがってある物質Aが「他の物質」Xに対しては酸であるにも関わらず、Xとは異なる「他の物質」Yに対しては塩基であるという事も起こりうる。例えば水は塩酸に対して塩基であるがMF2(p321)、アンモニアに対しては酸として働くMF2(p321)。
アレニウスの定義との関係
アレニウスによる酸の定義は、ブレンステッド・ローリーによる酸の定義における「他の物質」が水分子であり、しかもを水分子に渡す原因が解離である場合に相当するので、ブレンステッド・ローリーによる酸の定義はアレニウスによる酸の定義を含意する。
一方ブレンステッド・ローリーによる塩基の定義はアレニウスによる塩基の定義と見かけ上大幅に異なるが、アレニウスによる塩基の中に存在するが「他の物質」である反応相手の酸からを奪って水分子を生成すると考えれば、ブレンステッド・ローリーによる塩基の定義がアレニウスによる塩基の定義を含意する事が分かる。
共役酸-塩基対
酸(acid)を HA、塩基(base)を B とすると、ブレンステッド・ローリーによる酸塩基反応は一般に次の化学反応式で表されるMF2(p321):
なお、この式は左辺から右辺への反応が生じるのと同時に右辺から左辺への反応も生じる事を意味する[1]。
そこで逆に、右辺から左辺への反応過程を見てみると、(ブレンステッド・ローリーの定義における)塩基と酸が反応して、HAとBとを生成していると解釈できる。
こうした理由により、を酸 HAの共役塩基(conjugate base)と呼び、を塩基Bの共役酸というMF2(p321)。
アンモニア水溶液
ブレンステッド・ローリーの定義は、アレニウスの定義と違い、アンモニアが水に対して塩基になる事を説明できる。実際、アンモニアが水に溶ける過程
において、アンモニアは水分子からを奪っているので、ブレンステッド・ローリーの定義における塩基であるMF2(p321)。
ルイスの定義
ルイスによる以下の酸と塩基の定義は、ブレンステッド・ローリーの定義より更に広範な範囲をカバーする:
ブレンステッド・ローリーの塩基Bは、プロトンを受け取る際、B内にある電子対をに供与する事により、を作るので、ブレンステッド・ローリーの塩基はルイスの塩基でもあるMF2(p346)。同様の理由により、ブレンステッド・ローリーの酸はルイスの酸でもあるMF2(p346)。
しかしルイスの定義は、プロトンの授受を伴わない反応に対しても酸や塩基を定義できる事に利点がある。例えば反応
ではプロトンは行われないが、の電子対をに供与する為、、はルイスの定義における酸と塩基であるMF2(p346)。
参考:ウサノビッチの定義
1939年にソビエト連邦のウサノビッチ (М. Усанович) が提出した定義では、酸は水素イオンおよびその他の陽イオンを放出するもの、あるいは陰イオンおよび電子と結合する能力のあるものはすべて含まれる田中71[要ページ番号]。
この定義では陰イオンおよび電子(および電子を放出するもの)まで塩基となり、電子の授受といった酸化還元反応までを酸塩基反応と解釈し、究極にはすべての化学反応を包括することになり拡張解釈が過ぎるため、今日ではこの定義が用いられることはほとんどない。
強度
ある溶液の酸性(塩基性)の強弱は、それに溶けている酸(塩基)固有の「強度」と、溶液中のその物質の「濃度」に依存する。例えば、硫酸は物質としては強い酸であるが、もし濃度が低ければ、溶液全体の酸性は弱い。
それぞれの物質固有の(濃度に依存しない)強度の指標としては、酸解離定数 (pKa) がある。また、濃度を加味した溶液としての性質の指標として水素イオン指数(pH) 、酸度関数 (H0) および規定度がある。これらは場合によって使い分けがされる。酸性度をあらわすために希薄水溶液中では pH を用いるのが一般的であるが、濃厚溶液および非水溶媒中においては酸度関数を用いる。 また有機溶媒中での反応を議論することの多い有機化学では、反応物の水素イオンの解離の程度を pKa によって議論することが多い。
物質固有の強度
水中で電離する化合物の酸性(塩基性)の強弱は、その物質の電離度によっておおまかに分類される。電離度は電解質が溶液中で解離(電離)しているモル比をあらわす値で、電離度がほぼ 1 である酸(塩基)を強酸(強塩基)、電離度が小さいものを弱酸(弱塩基)と呼ぶ。また、純硫酸よりも強い酸性媒体を超酸ということがある。
より定量的に酸(塩基)の強さを示す場合は、解離平衡を考え、その平衡定数 Ka の対数に負号をつけた酸解離定数 pKa で表すことが多い。塩基に対しては、共役酸の pKa か、特に水中の場合では塩基解離定数 pKb = 14 − pKa が用いられる。
例えば、酢酸の pKa は 4.76 、ギ酸の pKa は 3.77 である[2]。pKa は定義から数値が小さいほど水素イオンを解離しやすい、すなわち強い酸であることを示す。したがって、同じ弱酸でもギ酸のほうが酢酸より 10 倍強いことが分かる。
また、この表記法を用いると、有機物など通常電離するとは考えない化合物に対しても酸・塩基の強度すなわちプロトン解離の指標として用いることができる。例えば、水中でのメタンの pKa は 48、ベンゼンは 43 であり、ベンゼンの水素の方がはるかに酸性が強い(すなわち、プロトンとして引き抜かれやすい)ことが分かる。[3]
塩基の強さは共役酸の pKa から判断することができる。例えば、プロトン化されたアンモニア(アンモニウム)のpKa は 9.2、トリエチルアミンは 10.75 である。すなわち、トリエチルアミンに配位したプロトンはアンモニアの場合に比べて 1 桁ほど解離しにくい。このことは、トリエチルアミンがアンモニアに比べて 10 倍強い塩基であることを示している。
酸解離定数を指標として用いることで、クライゼン縮合など、水素引き抜きが関与する反応に必要な塩基を推量することができる。
濃度を含めた強度
ある物質の溶液の酸・塩基を議論する際には、その物質の濃度も重要な要素となる。濃度を含めた酸・塩基の指標としては、規定度や水素イオン濃度がある。
規定度は酸・塩基の価数とモル濃度の積で表される値で、単位 N で示される。ただし、IUPAC [4]ならびに日本の計量法[5]等では使用が推奨されていない。
水素イオン濃度は、通常は水溶液中において、水素イオンの濃度を対数で示したものである。水素イオン濃度は現実的な酸・塩基の強度にあった指標であるが、単純に酸・塩基の濃度に比例するものではないため、値を知りたい場合には酸塩基指示薬などによって調べる必要がある。また、水溶液以外に適用する場合には、自己解離や水平化効果を考える必要がある。
代表的な酸・塩基
脚注
- ^ ただしこの2つの反応の速度は等しいとは限らないので最終的に右辺だけ、もしくは左辺だけが残る場合もあり得るし、両者の反応速度が等しければ平衡状態になって右辺と左辺の両方の物質が残る。
- ^ http://daecr1.harvard.edu/pdf/evans_pKa_table.pdf
- ^ http://www.chem.wisc.edu/areas/reich/pkatable/index.htm
- ^ Compendium on Analytical Nomenclature (The Orange Book) #6.3 The use of the equivalence concept
- ^ 計量法 附則第三条第2項 附則別表第二により、平成九年九月三十日までは法定計量単位とみなされていた。
文献
引用文献
- [田中71] 田中元治 (1971). 酸と塩基. 基礎化学選書8. 裳華房
- [F67]H・Freiser、Q・Fernando 藤永太一郎、関戸栄一訳 (1967/8). イオン平衡―分析化学における. 化学同人
- [MF1] J. McMurry、R. C. Fay 著、荻野博、 山本学、大野公一 訳「7章「水溶液内の反応」」『マクマリー 一般化学(上)』東京化学同人、2010年11月24日。ISBN 9784807907427。
- [MF2] J. McMurry、R. C. Fay 著、荻野博、 山本学、大野公一 訳「13章「水溶液内平衡 酸と塩基」」『マクマリー 一般化学(下)』東京化学同人、2011年2月23日。ISBN 9784807907434。
その他
- ジョン・マクマリー 『マクマリー 有機化学 第4版(上)』 伊東・児玉他訳、東京化学同人、1998年、ISBN 4-8079-0536-8。