サトイモ科

サトイモ科
アンスリウム（Anthurium andraeanum）
分類
界 : 植物界 Plantae 門 : 被子植物門 Magnoliophyta 綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida 目 : サトイモ目 Arales 科 : サトイモ科 Araceae
属
本文参照

サトイモ科(Araceae)は、被子植物単子葉類に属する植物。湿潤な熱帯～温帯地方を好む。花軸に密集した小さな花（肉穂花序）と、それを囲むように発達した苞（仏炎苞）が特徴。

特徴

サトイモ科の植物は、花に大きな特徴がある。花そのものは小さく、花びらがあっても目立たず、花びらがない場合もある。雄花と雌花に分かれているものもあり、いずれにしても、個々の花は小さく、目立たない。花は肉質の太い柄の上に一面に並んでつき、肉穂花序（にくすいかじょ）と呼ばれる。花は穂全体に着くものが多いが、穂の先端に花のない部分（付属体）があって、さまざまな形になるものもある。

穂の根元からは苞が出る。サトイモ科の植物では、多くの場合、苞が単純な葉の形ではなく、花の穂を包むような形になって、特別な色を持ち、目立つものが多い。言わば、花びらの役割を担っている。このような苞を仏炎苞（ぶつえんほう）と呼ぶ。仏炎苞の袋状の部分を筒部、筒部の上部で長い舌のように伸びる部分を舷部と呼ぶ。

このような構造を取る理由としては、花に寄ってくる昆虫を内部に閉じ込めることで、滞在時間を長くして受粉の確率を高めていると考えられる。

なお、東南アジア産のコンニャクの一種、ショクダイコンニャク（Amorphophallus titanium）は、花序の先端までが3mにも達し、花序としては世界で一番背が高いと言われる。

サトイモ科の植物は、単子葉植物としては例外的に、葉の幅が広く、切れ込みがあったり、複葉になったりと、複雑な形のものがあり、葉脈も網状になったものが多い。どちらかと言えば、湿ったところに生育するものが多く、湿地性や半水性のものもある。日本では、地下に芋状の地下茎を持つものがよく見られるが、亜熱帯～熱帯では大型のつる植物になり、根を伸ばして樹木の幹に張りつき、よじ登るものがある。

なお、ボタンウキクサは例外的に浮遊性の水草である。

人間とのかかわり

テンナンショウ属マムシグサの開花、仏炎苞の形状が分かる

サトイモ科の植物には、サトイモ（里芋＝タロイモ）をはじめ、主食として用いられるものがある。特に東南アジアから太平洋にかけて、芋食文化が広がり、日本はその最北端に当たる。また、コンニャクも加工して食品となる。

また、熱帯地方のものには、葉の形の面白いものがあり、観葉植物として利用される。

日本では、ミズバショウやザゼンソウは北日本の季節の花として有名で、ミズバショウは「夏の思い出」などの歌にも出てくる。テンナンショウ類にも鑑賞価値の高いものがあり、その一部に野生では絶滅に瀕しているものがある。

一方、テンナンショウ属を始め、クワズイモ、ザゼンソウや多くの観用植物は有毒植物であり、シュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩を根茎などに含んでいる。

分類

ショウブ属（Acorus）は葉が細長く平行脈で典型的な仏炎苞もないので、クロンキスト体系ではショウブ科（Acoraceae）、APG IIでは更にショウブ目（Acorales）として分ける。APG IIではさらにウキクサ科がウキクサ亜科としてサトイモ科の下位に分類される。

Aroideae サトイモ亜科

• Aglaodorum アグラオドルム属
• Aglaonema アグラオネマ属
  • Aglaonema spp. アグラオネマ
• Alocasia クワズイモ属
  • Alocasia spp. アローカシア
  • A. odora クワズイモ
• Ambrosina アンブロシナ属
• Amorphophalus コンニャク属
  • A. konjac コンニャク
  • A. titanum スマトラオオコンニャク
• Anchomanes アンコマネス属
• Anubias アヌビアス属
• Aridarum アリダルム属
• Ariopsis アリオプシス属
• Arisaema テンナンショウ属
  • A. serratum マムシグサ
  • A. sikokianum ユキモチソウ
  • A. urashima ウラシマソウ
• Arisarum アリサルム属
• Arophyton アロフィトン属
• Arum アルム属
• Asterostigma アステロスティグマ属
• Biarum ビアルム属
• Bognera ボグネラ属
• Bucephalandra ブケファランドラ属
• Caladium ハイモ属
  • C. bicolor ニシキイモ（カラジューム）
  • C. humboldtii ヒメハイモ
• Callopsis カロプシス属
• Carlephyton カルレフィトン属
• Cercestis ケルケスティス属
• Chlorospatha クロロスパタ属
• Colletogyne コレトギネ属
• Colocasia サトイモ属
  • C. esculenta タロイモ・サトイモ・ヤツガシラ・ミズイモなど
• Cryptocoryne クリプトコリネ属
• Culcasia クルカシア属
• Dieffenbachia カスリソウ属
  • Dieffenbachia spp. カスリソウ（ディフェンバキア）
• Dracunculus ドラクンクルス属
• Eminium エミニウム属
• Filarum フィラルム属
• Furtadoa フルタドア属
• Gearum ゲアルム属
• Gonatopus ゴナトプス属
• Gorgonidium ゴルゴニディウム属
• Hapaline ホパリネ属
• Helicodiceros ヘリコディケロス属
• Heteroaridarum ヘテロアリダルム属
• Homalomena ホマロメナ属
• Hottarum ホッタルム属
• Jasarum ヤサルム属
• Lagenandra ラゲナンドラ属
• Lazarum ラザルム族
• Mangonia マンゴニア属
• Montrichardia モントリカルディア属
• Nephthytis ネフティティス属
• Peltandra ペルタンドラ属
• Philodendron フィロデンドロン属
  • Philodendron spp. フィロデンドロン（ビロオドカズラ・ヤッコカズラ・ヒトデカズラなど、中型・小型の蔓植物）
  • P. scandens ヒメカズラ
• Phymatarum フィマタルム属
• Pinellia ハンゲ属
  • P. ternata カラスビシャク
• Piptospatha ピプトスパタ属
• Pistia ボタンウキクサ属
  • P. stratiotes ボタンウキクサ（一属一種）
• Protarum プロタルム属
• Pseudodracontium プセウドドラコンティウム属
• Pseudohydrosme プセウドヒドロスメ属
• Remusatia レムサティナ属
• Sauromatum サウロマトゥム属
• Scaphispatha スカフィスパタ属
• Schismatoglottis スキスマトグロッティス属
• Spathantheum スパタンテウム属
• Spathicarpa スパティカルパ属
• Steudnera ステウドネラ属
• Stylochaeton スティロカエトン属
• Synandrospadix シナンドロスパディクス属
• Syngonium シンゴニューム属
  • Syngonium spp. シンゴニューム
• Taccarum タッカルム属
• Theriophonum テリオフォヌム属
• Typhonium ティフォニウム属
• Typhonodorum ティフォノドルム属
• Ulearum ウレアルム属
• Xanthosoma クサントソマ属
  • Xanthosoma spp. タロイモ
• Zamioculcas ザミオクルカス属
  • Zamioculcas zamiifolia（一属一種）
• Zantedeschia オランダカイウ属
  • Z. aethiopica オランダカイウ、カラー
  • Z. elliottiana キバナカイウ
  • Z. rehmannii モモイロカイウ
• Zomicarpa ゾミカルパ属
• Zomicarpella ゾミカルペラ属

Calloideae ヒメカイウ亜科

• Calla ヒメカイウ属
  • Calla palustris ヒメカイウ（一属一種）

Gymnostachydoideae ギムノスタキス亜科

• • Gymnostachys ギムノスタキス属

Lasioideae ラシア亜科

• Anaphyllopsis アナフィロプシス属
• Anaphyllum アナフィルム属
• Cyrtosperma キルトスペルマ属
• Dracontioides ドラコンティオイデス属
• Dracontium ドラコンティウム属
• Lasia ラシア属
• Lasimorpha ラシモルファ属
• Podolasia ポドラシア属
• Pycnospatha ピクノスパタ属
• Urospatha ウロスパタ属

Monsteroideae ホウライショウ亜科

• Alloschemone アロスケモネ属
• Amydrium アミドリウム属
• Anadendrum アナデンドルム属
• Epipremnum ハブカズラ属
  • E. aureum オウゴンカズラ（ポトス）
  • E. pinnatum ハブカズラ（沖縄産の蔓植物）
• Heteropsis ヘテロプシス属
• Holochlamys ホロクラミス属
• Monstera ホウライショウ属
  • Monstera spp. ホウライショウ（モンステラ）：大型の蔓、葉に穴が空く。
• Rhaphidophora ラフィドフォラ属
• Rhodospatha ロドスパタ属
• Scindapsus スキンダプスス属
• Spathiphyllum スパティフィラム属
• Stenospermation ステノスペルマティオン属

Orontioideae ミズバショウ亜科

• Lysichiton ミズバショウ属（一属二種）
  • L. americanus アメリカミズバショウ
  • L. camtschatcense ミズバショウ
• Orontium オロンティウム属
• Symplocarpus ザゼンソウ属
  • S. foetidus ザゼンソウ

Pothoideae アンスリウム亜科

• Anthurium アンスリウム属
• Pedicellarum ペディケアルム属
• Pothoidium ポトイディウム属
• Pothos ポトス属

Lemnoideae ウキクサ亜科

• Landoltia ランドルティア属
• Lemna アオウキクサ属
  • L. trisulca ヒンジモ
• Spirodela ウキクサ属
  • S. polyrhiza ウキクサ
• Wolffia ミジンコウキクサ属
  • W. globosa ミジンコウキクサ
• Wolffiella ウォルフィエラ属

外部リンク

• フラボンの山野草と高山植物の世界：サトイモ科(画像)