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2009年6月3日 (水) 02:10時点における版

コンデンサ一覧
足のあるものを「リード形」、長方体のものを「チップ形」と呼ぶ

コンデンサ蓄電器、英capacitor)は、静電容量により電荷電気エネルギー)を蓄えたり、放出したりする受動素子である。

静電容量の単位はF(ファラド)が使われる。通常使われるコンデンサは数pF - 数万μF程度であるが、電気二重層コンデンサなどでは数十Fオーダーの大容量な物もある。両端の端子に印加できる電圧(耐圧)は、6.3V - 10kV程度までさまざまである。

なお、英語圏でコンデンサ (condenser) と言った場合、もっぱら冷凍機などの凝縮器(熱媒体凝縮用の熱交換器)のことを指す。決して通用しないことはないが、一般には capacitor(キャパシタ)と言い、日本でもこの呼び方が普及しつつある。

歴史

1745年10月ポメラニアのEwald Georg von Kleistは、記録が残っている限りでは最初にキャパシタを発明した人物である。それはガラスの内側と外側の表面を金属によりコーティングしたものであった。 内側のコーティングは、ふたを通って終端に金属球がついたロッドに接続されていた。 2枚の大きな密接に間隔をあけたプレートの間にガラスの絶縁誘電体)として薄い層を設けることにより、von Kleistは絶縁体のない状況と比べてエネルギー密度が劇的に増えることを発見した。 1746年1月、Kleistの発見が広く知られる前に、オランダ人の物理学者ピーター・ヴァン・マッシェンブレーケは、類似したコンデンサを独自に発明した。 それはピーター・ヴァン・マッシェンブレーケが所属していたライデン大学にちなんでライデン瓶と名付けられた。 Daniel Gralathは最初に、キャパシタのチャージを増やすため、数個の瓶を並列にした「バッテリー」を接続した。 初期のキャパシタの単位は「jar(瓶)」であり、おおよそ1nF程度である。 初期のキャパシタは「コンデンサ (condenser)」として知られていた、これは今日でも使われている単語である。 普通の孤立したコンダクタより高い電荷密度を有する装置の性能(イタリアのcondensatoreから派生)に関しては、1782年アレッサンドロ・ボルタによって作られた。 また、前述のとおり、多くの非英語圏では「condensatore」に由来する語を使用している。

物理におけるコンデンサ

模式図

コンデンサは誘電体によって分離された2枚の電極若しくは電極板によって構成される。

容量

コンデンサの容量(C)は電荷(Q) の蓄積と電極間の電圧(V)で測定される。

国際単位系(SI)では容量はファラドを単位とするが、ファラドは通常の用途では過大なので通常はマイクロファラド(µF), ナノファラド (nF), 或いはピコファラド (pF)を用いる。

電極間に異なる電荷が蓄積された場合、プレート間に電界が生じることにより電荷は電極から他方の電極へ移動する。 この電界は単純な平行板コンデンサにおいて電位差V = E·dを生み出す。

なお、使用する場合の電力量W、単位ジュール)は

となる。つまり、容量1ファラドのコンデンサに10ボルトの電圧がかかっている場合、電力量は50ジュール(ワット秒)となる。したがって、この場合における定格出力50Wの電気製品が1秒間動作することになる。(これは理論値であり、実際には電圧を安定させるための回路などが必要となるため、その分電力量が減ることとなる。)


容量は電極の面積に比例、電極間の距離に反比例する。同様に誘電体の誘電率にも比例する。

平行に配置された電極板のコンデンサの容量は

[1]

である。ただしAは1つの電極板の面積、dは電極板間の距離、εは電極板間の誘電体の誘電率を表している。

用途

キャパシタの電気記号(図記号)
キャパシタ 電解コンデンサ 可変コンデンサ
Capacitor symbol
Polarized capacitor symbol
Polarized capacitor symbol
Polarized capacitor symbol 2
Polarized capacitor symbol 2
Polarized capacitor symbol 3
Polarized capacitor symbol 3
Polarized capacitor symbol 4
Polarized capacitor symbol 4
Variable capacitor symbol

アナログ電子回路での用途

直流電流を通さないことからカップリングコンデンサに利用されたり、デカップリング用のコンデンサに利用される。その他、平滑回路や、共振回路、フィルタなどにも利用される。実際の電子回路では、同じく受動素子の一つである抵抗器コイルとともに用いられることが多く、前者はR、後者はLと表現されることが多い。要求される周波数帯域、容量や精度、温度に対する容量変化、耐圧など回路の目的、用途、環境、コスト、大きさに合わせて各種の形状、材質の物が幅広く用いられる。低コスト化、小型化の要求の強い民生用小型機器では、チップ積層セラミックコンデンサが幅広く使われている。

デジタル電子回路での用途

バイパスコンデンサ(パスコン)としての用途が圧倒的に多い。他に僅かながら水晶発振器やタイミング回路に使われる。主にチップセラミックコンデンサが使われる。

電源回路での用途

アルミ電解コンデンサを中心として、セラミックコンデンサやタンタルコンデンサが使われる。

電力系統での用途

電力系統では力率改善のための進みリアクタンスとして使用される。位相を進める働きがあるため、一般に「進相コンデンサ」という。

電源そのものとしての用途

近年、後述の電気二重層コンデンサをはじめとした1F以上の大容量のものが開発され、蓄電装置として利用されることが多くなりつつある。たとえばノートパソコンの電源としての利用、ハイブリッドカー電気自動車の始動用電源など。最近では電気自動車の走行用電源そのものとしても使用可能となってきている。

構造

構造は単純化すると、誘電体絶縁体)を介した、2枚の電気伝導体平板であり、これに(直流)電圧を加えると、電荷(電気エネルギー)が蓄えられる。

実際の製品では、以下に挙げられるものがある。

単板型
二枚の平行平板からなるもの。誘電体の種類を選ばないが、面積を大きく取れないため、大型になる。
旋回型(巻き型)
二枚の電気伝導体箔と誘電体膜を交互に重ねて巻き込んだもの。旋回構造自体がインダクタの形となるため概して高周波特性は良くない。巻き方や線の引き出し方を工夫して無誘導化したものもある。
貫通型
電気伝導体の軸の周りに誘電体の管を形成し、その外側にさらに電気伝導体の管を形成して同軸構造としたもの。シールドケースからの線の引出しなど高周波回路で利用される。
積層型
電気伝導体と誘電体とを交互に重ねたもの。
電解型
電気伝導体の表面に化学的に酸化皮膜による誘電体層を形成し、電解液に浸したもの。誘電体層が非常に薄くなおかつ比誘電率が大きいため、大容量が得られる。
電気二重層型
活性炭電極の表面に有機分子を吸着させ、誘電体としたもの。誘電体の厚さを分子長さレベルにまで薄くできるので、極端な大容量が得られる。

コンデンサの用途による分類

高電圧電力回路用

紙コンデンサ
誘電体として木材パルプを加工したものを使用している。
オイルコンデンサ
絶縁油を含浸した紙を誘電体としたもの。
真空コンデンサ
内部を真空にしたもの。
ガス封入コンデンサ
内部にSF6六フッ化硫黄)等を封入したもの。

電子回路用

プラスチックフィルムコンデンサ

アナログ回路用。

スチロールコンデンサ
俗にスチコンと称される。スチロール樹脂はCDケース等にも使用されるポピュラーなプラスチック。
成形が容易で安価、諸特性優秀だが、耐熱温度が85℃と熱に弱く機械的にも脆い。
最近になって樹脂分子の並びを制御して結晶化させ、問題点を改善した素材も出ている。
ポリエステルコンデンサ(マイラコンデンサ)
マイラと略される。諸特性良好だが、誘電吸収がやや大きい。
ポリプロピレンコンデンサ
PPコンと呼ばれる。諸特性優秀で、耐圧も高い(1,000V程度まである)。
テフロンコンデンサ
諸特性良好。プラスチックフィルムコンデンサとしては比較的高温に耐える。
ポリフェニレンサルファイドコンデンサ
PPSコンと呼ばれる。諸特性良好で耐熱性に優れる。

セラミックコンデンサ

0.5pFから0.1μFが一般的。 デジタル回路のパスコン(高誘電率系および半導体)、アナログ回路の温度補償用(低誘電率系)。高周波特性はよい。内部で物理的に並列接続して容量を底上げ(10μF - )しているものもある。

低誘電率系セラミックコンデンサ
誘電体に酸化チタンアルミナの磁器を用いたもの。容量温度係数が低く、かつ直線的。微量元素の導入で任意の温度係数に設定することもできる。ただし、容量の誤差が大きい。
高誘電率系セラミックコンデンサ
誘電体にチタン酸バリウムを用いたもの。無極性・大容量のコンデンサが得られる。ただし、容量温度係数が大きく、かつ、非直線で変化する。さらに、印加電圧による容量の変動がある。
半導体セラミックコンデンサ
チタン酸バリウムに金属化合物を導入して導電性を持たせたものに、化学処理を施して非常に薄い誘電体層を形成し、焼結したものを誘電体としたもの。高誘電率系セラミックコンデンサよりも更に大きな容量が得られるが、その分、容量変動の諸特性も悪化している。

マイカコンデンサ

高周波回路、高精度・安定性が要求される回路用。

電解コンデンサ

電解コンデンサ

電極表面に化学処理することで絶縁体あるいは半導体の薄膜を形成し、これを誘電体としたもの。非常に大きな容量(0.1μF - 10万μF)が得られるが、一部を除き極性を持ち、諸特性はかなり悪い。電源系や低周波系に使用される。耐圧や周波数に注意する必要がある。耐圧を守らなかったり極性を間違えると正常に動作しないばかりか発熱し煙が出たり電解液が外部に漏れ出す場合がある。ひどい時には破裂する場合もある。破裂するとコンデンサーの破片が四方八方に飛び散り、非常に危険である。 一般に固体電解コンデンサと呼ばれるものは、電荷移動錯体や導電性高分子を用いた電子導電性固体を用いており、従来からある電解液を用いたコンデンサに対して、等価直列抵抗 (ESR) が小さく、周波数特性に優れている為、CPU周辺など高周波系にも使用されているが、電解液タイプに比べて高価でかつ自己修復性が小さいという問題がある。

リード線方式の場合は、負(マイナス)極の上に黒い線が記載され、一般タイプの新品では負極のリード線が短く切られていることで判別する。画像の上側の黒いものでは、右側のリード線が負極で、下の青いものでは下側のリード線が負極である。

アルミ電解コンデンサ
単に電解コンデンサ、またはケミコン(ケミカルコンデンサ)ともいう。大容量が得られ、電源回路の平滑用・時定数回路用に使用される。誘電体としては、アルミニウム電極(通常はアルミ箔)表面に形成した酸化被膜を用いる。誘電体層が非常に薄いため、大きな容量を得ることが出来る。通常、酸化被膜を形成する前にエッチング処理を施して表面を荒し、微細な凹凸を作製して表面積を稼いでいる。酸化被膜表面に隙間無く対向する電極を密着させることが困難なため、電解液を含浸した紙を挟み、空隙を埋めている。酸化被膜を形成した側の電極を他方の電極より低い電圧(極性を逆)にすると、電気化学反応により誘電体膜が破壊され使用不能になるとともに、素子が破裂・発煙する場合がある。
固体アルミ電解コンデンサ
電解液の代わりにTCNQ錯体などの電荷移動錯体、またはポリチオフェンなどの導電性高分子を用いたもの。
非固体アルミ電解コンデンサ
上述。電解液として、溶媒を水、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、γ-ブチロラクトンあるいはN-メチルホルムアミドなどとし、電解質としてホウ酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどにしたものが用いられる。逆極性接続による誘電体膜の破壊に対し自己修復能を持つため、極短時間の逆電圧印加が可能とされるが、この用法は推奨はされない。故障時のモードがオープンである(電極間の抵抗値が高くなる)ことも特長のひとつだが、素子の破裂による二次被害がでることもあるので注意すること。
両極性電解コンデンサ(ノンポーラ)
酸化被膜の形成を対向する二つの電極双方にほどこしたもの。コンデンサの直列接続となるため、単位体積当りの容量は半減するが、極性がないため扱い易い。ただし、高速に極性が反転する条件(交流回路)での利用は出来ない点には注意すること。
タンタル電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサより小型で特性がよい。特にアナログ回路に多く用いられる。デジタル回路でもスパイク状の電流を除去する目的で使われる。大容量を得る原理はアルミ電解コンデンサに似ている。金属タンタル粉体を焼結してこれを陽極とし、電気化学反応で表面に酸化タンタル薄膜を形成する。逆電圧に弱く、故障モードはショートである点に注意を要する。そのため故障前の極間に電位差があると大電流が流れ発熱、発火につながる。ショートによる機器への被害を防ぐためにタンタルコンデンサのモールド内にヒューズを内蔵しているものもある。
固体タンタル電解コンデンサ
通称「タルコン」。高温条件下で誘電体表面に二酸化マンガンを析出させて空隙をうめ、焼結体表面に黒鉛を吹き付けた後、銀パラジウム等を用いて電極を引き出したもの。
湿式タンタル電解コンデンサ
金属ケースに電解液を充填し、これを陰極としたもの。ここに陽極となる焼結体を浸漬する。
ニオブコンデンサ
金属ニオブ粉体を焼結してこれを陽極とした固体電解コンデンサ。タンタルに比べ埋蔵量が多く(タンタルの100倍程度と見積もられている)、供給の安定化と低価格化が期待できるとされている。また、タンタルコンデンサより逆耐圧耐性が高く大容量化できる可能性があることから、将来的にはタンタルコンデンサを置き換えることが期待されている。
酸化ニオブコンデンサ
焼結体として金属ニオブの代わりに酸化ニオブを用いたもの。

電気二重層コンデンサ

電気二重層キャパシタ、ウルトラキャパシタ(主に米国で用いられる用語)、スーパーキャパシタ(日本電気の商標)、ゴールドキャパシタ(パナソニックの商標)、電気化学キャパシタ、あるいは単にキャパシタと称される。電解液-電極界面において電解液中のイオン及び電極中の電荷担体(電子またはホール)が互いに引き合う格好で整列する現象(電気二重層)を用いて蓄電するコンデンサ。イオンと電荷担体が互いに隔てられた部分(ナノオーダーの距離)が誘電体に相当する。また、電気二重層コンデンサの静電容量は理想的には電極の表面積に比例すると共に電極間の距離に反比例する。そのため、非常に大きい静電容量を実現することが可能である。

実用化されている電気二重層コンデンサでは、比表面積が極めて大きい活性炭を電極として用いている例が多く数F/cm3級の静電容量が得られている。なお、電気二重層は正負両極に生じるため、一つの電気二重層コンデンサは二つのコンデンサ(正・負極に生じた電気二重層)の直列接続に相当する。耐圧は電解液の分解電圧以下に制限されるため約1V(水系電解液の場合)、約3V(非水系電解液の場合)と非常に低く、複数個を直列接続することで必要な電圧を得ることが多いが、接続された個々のコンデンサの特性ばらつきからくる過充電を防ぐ工夫が必要となる。また、通常のコンデンサと比較して漏れ電流が非常に大きく、周波数特性も悪いことは留意する必要がある。

主に電子機器のメモリーや時計回路におけるバックアップ電源として用いられて来たが、電力貯蔵用にも使用され始めている。近年、ハイブリッド自動車や電気自動車の電源としても注目されており、製品化された例ではコピー機の急速立ち上げ用電源や無停電電源装置などがある。さらに鉄道用の電車でも実験的に電源として使用して起動力約2%の電力を確保するなど、様々な分野で小型化・大容量化の研究開発が進められている。二次電池と異なり電気化学反応を従わないため、充放電回数の制限が無いこと、大電流の充放電に強く温度条件の厳しい環境下でも利用できることなどの利点を持つ。このためハイブリッドカーへの搭載が予定されており、はやぶさに搭載されたローバーにも採用された。

バリアブルコンデンサ(可変コンデンサ、バリコン)

回転軸を回すことで静電容量を可変できるコンデンサ。送信機受信機ラジオ)などの同調回路などに使われる。ラジオ同調回路(周波数ダイアル)のようにもともと頻繁に回すことを目的に作られているものと、回路の定数の微調整用として、出荷前やメインテナンス等、調整するときしか回さない目的に作られたもの(トリマーバリコン、半固定可変コンデンサ)とがある。

エアバリコン
空気を誘電体とする可変コンデンサ。固定した電極と、回転軸に取り付けられた電極とで空気を挟み、静電容量を可変できる。高電圧に耐えられることから、1970年代までの真空管を使ったラジオ受信機アマチュア無線機などに使われていたが、現在はあまり生産されていない。
ポリバリコン
薄いポリエチレンフィルムを誘電体とする可変コンデンサ。固定した電極と、回転軸に取り付けられた電極とでポリエチレンフィルムを密着して挟み、静電容量を可変できる。主に小型携帯ラジオの周波数ダイヤルに使われている。
セラミックトリマコンデンサ
セラミックを誘電体とする可変コンデンサ。回路で補償しきれない精度の特性が必要な場合、組み立て後に微調整可能な回路にしておき、製品出荷前に工場で微調整を行うために用いられる。
バリキャップ
半導体中に形成された空乏層を誘電体として用いる可変コンデンサ。逆電圧の大きさによって空乏層の厚さを制御する事が可能で、このため電子的に容量を可変できる。

容量の表示方法

電解コンデンサなどのような大型のものでは、本体に直接容量や耐圧が記載されているが、セラミックやフィルムコンデンサの場合、容量が xxy という形の3桁の数字を使った特有の表記(抵抗器のカラーコードを数字で置き換えた形)で記載されている場合がほとんどである(抵抗器に形状が似たものでは、カラーコードで表示している場合がある)。

xxyの意味は、xx × 10y pF(ピコファラド)である。

容量の間隔については、抵抗器同様にE系列で、主にE3(10・22・47を基数とする倍数値)、E6(10・15・22・33・47・68を基数とする倍数値)で、まれにE12やE24が使用される。受動素子の標準数値表も参照。ただし1から10pFに限り、1pF間隔となっている。

定格電圧(耐圧)については、電圧を直接表示している場合と、数字とアルファベットを組み合わせた記号で表示している場合がある。記号と電圧の組み合わせは次の通り。

定格電圧
↓数字\英字→ A B C D E F G H J K
0 1 1.25 1.6 2 2.5 3.15 4 5 6.3 8
1 10 12.5 16 20 25 31.5 40 50 63 80
2 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800
3 1,000 1,250 1,600 2,000 2,500 3,150 4,000 5,000 6,300 8,000

2J103と記載されていれば、

  • 耐圧が630V
  • 容量が10 × 103 = 10,000pF = 0.01μF

を表している。

2桁以下の場合は記載値がそのままpF単位を表す。

電圧表示のないものは、耐圧50V程度のものが多い。

コンデンサのように振舞うもの

プリント基板
多層基板において、隣接する層の同じ場所にプリント配線が通るとき、両配線間に比較的大きな安定した容量が形成される。プリント基板設計において、基板の未使用の領域を銅箔で埋めて接地点あるいは電源ラインの配線に用いる(グランドプレーンなど)、電源配線を信号線より広くすると言った処理は習慣的に行なわれている。
可変容量ダイオード
ダイオードは、逆電圧を加えた状態では直流電流はほとんど流れず、非常に高い直流抵抗値を示す。だが直流電圧に重畳している交流信号に対しては、容量の小さなコンデンサのように振るまうので、高い周波数の信号はいくらか通り抜ける。コンデンサとして振舞うときの容量はダイオードごとに異なるが、一般に大電流用を扱うものほど容量も大きくなる。また、この容量は、かかっている逆電圧の高さによって変動する。ダイオードの持つこの物理的性質を積極的に応用し、電圧に応じて制御できる電子的な可変コンデンサとして使えるように特に設計されたものを、可変容量ダイオードという。可変容量ダイオードは、わずかな電圧の変化で大きく容量を変えることができ、変化の直線性も改善されている。
電界効果トランジスタ
電界効果トランジスタのゲートのインピーダンスは非常に高く、構造的にもコンデンサーがソース・ドレイン間に接続されているとみなせる。単体のトランジスタでもプルアッププルダウンしないと入力信号が切り離されてもゲート電圧がホールドされてしまう。集積回路においては、ゲートの静電容量に周波数と電圧の二乗をかけた値に比例して、信号の交流成分がゲートからソース・ドレインに流れ、結果として集積回路の消費電力の一部となる。これが顕著に見られたのはマイクロプロセッサの高クロック化に伴う消費電力の増大で、この問題を回避する為にクロック当りの性能を向上させるのが現在のトレンドとなっている。
スタブ
高周波回路において、他端の短絡した1/4波長より短い伝送路、あるいは、他端が解放になっている1/4波長より短い伝送路は容量性の負荷にみえる。アンテナの整合を取る場合に用いられることがある。
電気的に短いアンテナ
モノポール、ダイポールその他のタイプのアンテナで、電気的な長さが1/4波長より短いものは、駆動回路(無線機など)から見た場合、容量性の負荷にみえる。整合を取るため小さな容量の可変インダクタが挿入されることがある。
人体
静電気の研究において、人体は10pFのコンデンサと1MΩ抵抗を並列に接続したものとしてモデル化される。
コンデンサマイク
コンデンサの電極のうち一方を振動板(ダイアフラム)としたもの。空気の振動により電極間の間隔が変化するため、電極間に形成される容量も変化し、一定の電荷を蓄積した状態ならば端子間の電圧も変化する。これを電気信号として取りだすことでマイクとして利用する。また、素子に一定の電荷を与えるために電源が必要であるが、テフロンなどの誘電体の高い電界を与える(特に、溶融した誘電体を冷却固化する際)と電荷を半永久的に保持する性質を利用し、電荷を保持した薄膜(エレクトレットと呼ぶ)を電極に張りつけることで素子への給電を不用としたものをエレクトレット・コンデンサマイクと呼ぶ。更にエレクトレットを振動板側に張りつけたフロントエレクトレットあるいは膜エレクトレットと、固定電極側に張りつけたバックエレクトレットに分れる。構造上出力インピーダンスの高い素子となるため、信号線にノイズが混入しやすく、これを防ぐため、素子直下にFETを用いた増幅回路を組み込んだ素子もよく用いられる。
プロードライザ(proadlize)
デカップリングを目的とする電子部品の一種で、既存のコンデンサと比較してインピーダンス特性が広い周波数帯域でフラットであり、かつ低インピーダンスである特性がある。なお、「プロードライザ」とは開発したNECトーキンによって「Prompt」「Broadband」「Stabilizer」から合成された造語(商品名)である[2]
導電性高分子コンデンサをシート状に成型し、電極配置を工夫することによってこの特性を得ている。このため、高周波回路におけるノイズ対策や、CPU周辺回路に存在する多数のコンデンサの置き換えなどに有効とされる。NECトーキンが開発し、日本ケミコンが技術供与を受けライセンス生産を行っている。
これまでにプレイステーション3ノートパソコンにおいて採用例があり、薄型テレビにおける画像処理エンジン周辺への適用も有望視されている。

温度特性や周波数特性

理想的なコンデンサは温度や電圧の変化に対してキャパシタンスが変化せず、直列/並列的に抵抗成分やインダクタンス成分を持たない。しかし、実際のコンデンサは上記のような完全な特性は得られず少なからず寄生的な成分が存在する。

  • 温度の変化によるキャパシタンス変動
  • 電圧の変化によるキャパシタンス変動
  • 経年変化によるキャパシタンス変動
  • 周波数の変化(特に高周波)での寄生インダクタンス成分の影響
  • 等価直列抵抗

回路での利用のしかたによっては、これらをよく考慮する必要がある。

脚注

  1. ^ http://www.ttc-cmc.net/~fme/captance.html
  2. ^ NEC技報 新デカップリングデバイス「プロードライザ」の開発、量産

製造メーカー

関連項目

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