学美舎
学美舎(まなびや)とは、静岡女子商業高等学校(2003年に男女共学となり、城南静岡高等学校と改称)が始めた、教育の一環として主催するオンラインショッピングモールである。高校生によるネットショップ運営の先駆けとなった[1]。2009年以降、佐賀県や奈良県等の商業系高等学校が姉妹店を開設し、全国的な拡がりを見せつつある。
概要
[編集]静岡女子商業高等学校が文部科学省の「未来型次世代ITを活用した教育研究事業」の指定校に選ばれたことをきっかけとし、情報処理教育の一環として3年生の生徒約60人が電子商取引を研究する中で、仮想ショッピングモールを構築した[2][3]。しかし、実際に運営したいという声が生徒たちに広がり、学校側も同意。2001年9月、ショッピング・モールの構築が正式にスタートした[2]。 生徒たちの組織を「会社」に見立てて「社長」などの役割を分担し、各企業を訪問する営業活動や地元説明会等で出展企業を募り、2001年12月、加盟54店舗によるオンラインショッピングモールが正式にオープンした[2][4]。
開設10か月で出展企業の累計売上高が370万円を超え[4]、2005年には1000万円を超えた[5]。
2005年以降は店舗の全国展開を目指し、県外にも積極的に営業活動に取り組んでいる[5][6][7]。
2007年には城南静岡高校を卒業して山梨学院大学に進学した5人が、「学美舎KOFU店」を開設した[8](後に閉鎖)。
2009年3月に告示され、2013年度から採用される高校の新学習指導要領で、商業科のカリキュラムに「電子商取引」が盛り込まれたことから「学美舎」の取り組みが改めて注目を浴びるようになり、城南静岡高校への問い合わせが相次いだ[1]。
2009年12月19日、佐賀県立佐賀商業高等学校が「さが学美舎」を、佐賀県立唐津商業高等学校が「からつ学美舎」をオープンした[9][10]。2010年11月には、佐賀県立伊万里商業高等学校の「いまり学美舎」と佐賀県立杵島商業高等学校の「きしま学美舎」がオープンした[11]。唐津商業高校と福岡市の企業が共同で開発したオリジナル化粧水「松ゅらる」は、「からつ学美舎」での発売後約10か月で約6500本、売上額1000万円に達した[12]。佐賀では他でもオリジナル商品が開発されている。
2011年11月には奈良県立奈良情報商業高等学校の「奈良まなびや」[13]が、2012年以降は埼玉県立羽生実業高等学校の「羽実まなびや」等が開店し、全国的な拡がりを見せつつある。
2011年12月14日、「まなびや10周年記念報告会」が静岡市内で開かれた[14]。
特長
[編集]授業の一環であるため、参加企業からは仲介手数料を取らず、月10,500円(学美舎によって金額は異なる)の維持管理費のみの負担を求めている[3][15]。
商品の取材、写真撮影、キャッチコピーの作成、ウェブ作成ならびに更新・改装などは全て生徒が行っている[15]。
学美舎の授業を通し、商品の流通やビジネスマナー、法律等を学ぶことができる、と城南静岡高等学校の学校長は語っている[16]。また城南静岡高等学校の担当教諭は、「社会とつながりを持つようになったことで、生徒たちが将来の仕事を真剣に考えるようになり、進学率も上がった」と語っている[1]。城南静岡高等学校では、2004年度には9人だった大学進学者が、2009年度には120人を越すようになった[1]。また学美舎に関わりたいと、城南静岡高等学校への進学を希望する中学生も多い[15]。
運営している高等学校
[編集]- 城南静岡高等学校(学美舎)
- 佐賀県立唐津商業高等学校(からつ学美舎)
- 佐賀県立佐賀商業高等学校(さが学美舎)
- 佐賀県立伊万里商業高等学校(いまり学美舎)
- 佐賀県立杵島商業高等学校(きしま学美舎)
- 奈良県立奈良情報商業高等学校(奈良まなびや)
- 埼玉県立羽生実業高等学校(羽実まなびや)
- 埼玉県立岩槻商業高等学校(岩商まなびや)
- 埼玉県立熊谷商業高等学校(熊商まなびや)
- 熊本国府高等学校(熊本国府まなびや)
- 佐賀県立嬉野高等学校(うれしのまなびや)
- 熊本県立八代東高等学校(八代東まなびや)
- 大牟田高等学校(大牟田まなびや)
- 三重県立四日市商業高等学校(三重まなびや)
- 滋賀県立国際情報高等学校(しが国情まなびや)
- 山陽高等学校(山陽まなびや)
脚注
[編集]- ^ a b c d 「新教育の森:高校で電子商取引、立案から販売まで プロ招き実践授業」、毎日新聞 東京朝刊、2010年7月24日、23頁。
- ^ a b c 吉田育代「育代が行くよ2〜学校編〜 第6回〜セーラー服を着た起業家誕生!」、日経ソフトウエア2002年12月号(第55号)、102-103頁、2002年。
- ^ a b 「静岡女子商業の高校生が仮想商店街 地元企業とタイアップ ネット取引を仲介」、読売新聞 東京朝刊、2002年2月25日、32頁。
- ^ a b 「静岡女子商のインターネット「商店街」が好評 開設10カ月」、朝日新聞 東京地方版/静岡、2002年10月9日、35頁。
- ^ a b 「私立城南静岡高:高校生が運営、ネット商店街 全国展開へ“熱い夏”」、毎日新聞 地方版/静岡、2005年8月3日、23頁。
- ^ 「福岡県/ネット商店運営 静岡の高校生 「博多の台所」で営業 柳橋連合市場 出店を呼びかけ/ふくおか都市圏」、西日本新聞朝刊、2007年8月29日、27頁。
- ^ 「宮城名物も参加を/静岡のインターネットショッピングモール「学美舎」」、河北新報、2007年11月30日。
- ^ 「特産品サイト、山梨学院大の学生が運営 「学美舎KOFU店」オープン」、毎日新聞 東京地方版/山梨、2007年11月21日、30頁。
- ^ 「高校生がネット商店街 唐津商12月19日開設 説明会に16社」、読売新聞 西部朝刊、2009年10月23日、31頁。
- ^ 「佐賀県/高校生が運営する ネット商店街開設 佐賀駅でイベント」、西日本新聞 朝刊、2009年12月20日、28頁。
- ^ 「高校生ネット商店街 次々 杵島商、伊万里商が来月開設」、読売新聞 西部朝刊、2010年10月9日、31頁。
- ^ 「佐賀県/化粧水 売り上げ好調 唐津商高ネット販売オリジナル商品 9、10日福岡三越イベントにも出品/唐津」、西日本新聞 朝刊、2010年10月7日、21頁。
- ^ 「元気印@学校:奈良情報商業高校 インターネットモール /奈良」、毎日新聞 地方版/奈良、2011年7月23日、23頁。
- ^ 「高校生運営のオンラインショッピングモールが10年目 12月に静岡市内で記念報告会」、建通新聞 静岡本紙版、2011年12月7日、2頁。
- ^ a b c 「教育・しずおか:学美舎誕生8年、将来の進路見据え「働く」--城南静岡高」、毎日新聞 地方版/静岡、2009年6月13日、24頁。
- ^ オンラインショッピングモールまなびや (2012年7月19日). “城南静岡高等学校 学校長あいさつ”. 2012年11月16日閲覧。