イタチハギ

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イタチハギ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: イタチハギ属 Amorpha
: イタチハギ A. fruitcosa
学名
Amorpha fruticosa L. (1753)[1]
シノニム
  • Amorpha angustifolia
  • Amorpha bushii
  • Amorpha croceolanata
  • Amorpha curtissii
  • Amorpha dewinkeleri
  • Amorpha occidentalis
  • Amorpha tennesseensis
  • Amorpha virgata
英名
desert false indigo,
bastard indigobush

イタチハギ(鼬萩[2]学名: Amorpha fruitcosa)は、北アメリカ原産のマメ亜科イタチハギ属落葉低木の一種。別名「クロバナエンジュ」[3]。道路法面に植えられ、河原などに野生化している。

分布[編集]

北アメリカ(カナダの一部とアメリカ)、メキシコを原産地とする[4]

アメリカ西部、イタリア、日本などに移入分布する[5]

特徴[編集]

花序

樹木の高さは1 - 5メートル (m) ほど[4]樹皮は灰褐色であまり裂けず、皮目が多く、よく目につく[2]。若木の樹皮は緑色を帯びる[2]。一年枝は褐色で短毛があり、枝先は枯れることが多い[2]。葉は互生で、奇数羽状複葉[4]

花期は4 - 7月で、長さ6 - 20センチメートル (cm) の黒紫色をした穂状花序をつける[4]両性花で、果実の大きさは約1 cm[6]豆果は裂開せず、いぼ状の突起があり、莢の中に種子が1個入る[2]。冬でも枯れた果序や豆果がよく残る[2]冬芽は鱗芽で互生し、卵形でときに柄があり、下に副芽をつけ枝に伏せるように生える[2]。葉痕は半円形で、維管束痕が3個つく[2]

道端、河川敷、荒地、海岸など幅広い環境に生育する[6]。高温や乾燥に強い[6]

根の土壌固定力が強く、マメ科特有の窒素固定による肥料木としても有用であるため、法面緑化に利用されている[5]

外来種問題[編集]

日本には韓国から1912年に初めて導入され、1940年代以降、緑化や観賞用として本格的に輸入された[4]。日本各地に野生化している[4]

霧ヶ峰白山といった自然度の高い地域で、在来種の植物の生育を阻害したり、景観を損なうなどの問題を起こしている[4]

また、日本に導入されたイタチハギの種子から同じく北アメリカ原産のイタチハギマメゾウムシが確認されており、本種の導入がさらに別の生態学的に関連のある外来種の定着を促進してしまっている[7]

日本生態学会では、これらの侵略性を考慮してイタチハギを日本の侵略的外来種ワースト100に選定している[4]。しかしその一方で、本種は緑化樹木として経済的に有用であるがゆえに、外来生物法では「別途総合的な取り組みを進める外来生物」とされて要注意外来生物の指定にとどまっており、特定外来生物のような導入や栽培への規制が行われていない[5]

脚注[編集]

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Amorpha fruticosa L. イタチハギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年5月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 191
  3. ^ 庄内海岸の国有林”. 林野庁東北森林管理局庄内森林管理署. p. 51. 2022年4月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 多紀保彦(監修)、財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日、275頁。ISBN 978-4-582-54241-7 
  5. ^ a b c 髙木康平、日置佳之「鳥取県千代川水系上流域において法面緑化に使用されたイタチハギ (Amorpha fruticosa L.) の逸出の実態と侵略性の評価」『日本緑化工学会誌』第33巻第4号、日本緑化工学会、2008年、571-579頁、doi:10.7211/jjsrt.33.5712011年11月26日閲覧 
  6. ^ a b c イタチハギ”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2011年11月27日閲覧。
  7. ^ 津田みどり、島克弥、Clarence D. Johnson、森本桂「導入マメ科植物イタチハギの種子を食するイタチハギマメゾウムシ(Acanthoscelides pallidipennis)の日本での定着とその寄生蜂Eupelmusの新記録」『日本応用動物昆虫学会誌』第45巻第3号、2001年、156頁。 [信頼性要検証]

参考文献[編集]

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、191頁。ISBN 978-4-416-61438-9 

外部リンク[編集]

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