アシェンデン
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アシェンデン(Ashenden: Or the British Agent)は、イギリスの作家ウィリアム・サマセット・モームが、1928年に発表した連作短編小説。
概要
[編集]モームの代表作の一つで、スパイ小説の古典とされる。主人公アシェンデンによる、作家(ジャーナリスト)兼情報部員としての体験手記の形で物語が進む。若き日をふりかえった教養小説の大作『人間の絆』と同じく、作者の分身としての性格が大きく出された作品でもある。
作中の描写はモームの実体験に基づく。実際にモームは1910年代、第一次世界大戦半ばに、従軍軍医(医学校出身)から英国諜報機関へ転属勤務となり、ロシア革命時、ソビエト連邦成立直前のロシア・ペトログラードにて、情報工作活動(諜報活動)を行った。
第二次世界大戦前後から20世紀後半の冷戦で、情報部員としての実際の活動を創作に反映した英国人作家たち(例:イアン・フレミング、グレアム・グリーン、ジョン・ル・カレ、フレデリック・フォーサイス)の先駆的な作品といえる。
日本語訳は『月と六ペンス』と並び多くの版元で刊行・重版している。
日本語訳
[編集]- 『秘密諜報部員』(龍口直太郎訳、東京創元社、世界推理小説全集) 1956年、のち創元推理文庫 1959年
- 『アシェンデン』(加島祥造訳、早川書房、ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 1961年、のち復刊 1999年、グーテンベルク21(電子書籍) 2022年
- 『諜報員アシェンデン』(篠原慎訳、角川文庫) 1969年、グーテンベルク21(電子書籍) 2011年
- 『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』(河野一郎訳、ちくま文庫) 1994年- 下記を改訳
- 新潮社「モーム全集」版(1955年)、のち『アシェンデン モーム短篇集 5・6』新潮文庫(旧版)
- 『アシェンデン 英国情報部員のファイル』(中島賢二, 岡田久雄訳、岩波文庫) 2008年
- 『英国諜報員アシェンデン』(金原瑞人訳、新潮文庫) 2017年
映画化
[編集]本作中の2つの短編"The Traitor(裏切り者)"と"The Hairless Mexican(禿げのメキシコ人)"は1936年、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『間諜最後の日』の原作となった。