警杖
警杖(けいじょう)とは、日本の警察等において武器又は捕具として使用される棒。警棒より長く、全長は90cm・120cm・180cmの3種類が存在する。
概要
警備用の装備品であるが、犯罪捜査の際に遺留品を探すために藪を掻き分けたり、応急処置の担架の芯としても利用されるなど、広い用途で使われている。主に機動隊が装備するが、デモ活動の規制など乱闘が予想される現場には持ち込まない。
民間警備員の護身用具は警棒(警備業の業界用語では「警戒棒」と呼称する)しか認められていなかったが、近年は条件付きながらも警戒杖(けいかいじょう)という名称の警杖を装備することができるようになった。形状は円棒であって、130センチメートル690グラム以下に制限されている。部隊を編成するなど集団の力を用いて警備業務を行う場合は、警戒杖を携帯することはできない。
歴史
- 1874年(明治7年) - 警視庁が創設され、巡査は手棒(3尺余りの棍棒)を、警部以上は刀を佩用した。
- 1883年(明治16年) - 全ての警察官にサーベルの佩用が許される。
- 1933年(昭和8年) - 警視庁に特別警備隊が発足。特別警備隊員は一般の警察官と異なり警杖、短刀、拳銃を携行した。(一般の警察官の武装はサーベルのみ)
- 1946年(昭和21年) - 勅令によって警察官のサーベル、短刀の佩用は禁止され、警棒、警杖を携行することとされた。これを受け急きょ調達された警杖は機械削りのままの手触りの粗い、折れることもある粗末なものであったが、敗戦後の武装解除で丸腰に近い状態になっていた警察官にとって唯一の武器として頼りにされた。
- 1949年(昭和24年)5月30日・31日 - 東京都公安条例制定反対デモの取締りに警視庁予備隊が警杖を持って出動し、65名を検束した。このときGHQの指示で採用されていた新警棒を使用しなかったため、6月1日に警視庁教養課長がGHQに呼び出され、厳重な勧告とともに警杖の使用を一時禁止された。
警杖術
「杖術」も参照
1927年(昭和2年)、警視庁の弥生祭奉納武術大会において福岡県から参加した清水隆次の神道夢想流杖術演武が好評を博し、清水は警視庁の杖術教師となった。清水は特別警備隊(後の機動隊)の警杖術訓練を指導した。この警杖術は群衆整理を主目的とするものであったが、場合によっては武器としても活用できるように訓練された。
参考文献
- 『警視庁武道九十年史』、警視庁警務部教養課
- 警備員等の護身用具の携帯の禁止及び制限に関する都道府県公安委員会規則の基準について(依命通達) (PDF, 9.4 KiB) 」(平成21年3月26日付け警察庁乙生発第3号)