湿球黒球温度

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湿球黒球温度(WBGT)と気温、相対湿度との関係

湿球黒球温度(しっきゅうこっきゅうおんど、wet-bulb globe temperature)は、酷暑環境下での行動に伴うリスクの度合を判断するために用いられる指標である。1954年にアメリカ海兵隊新兵訓練所で熱中症のリスクを事前に判断するために開発された[1]。日本の環境省では、暑さ指数(WBGTと称している[2]。人体の熱収支に影響の大きい気温湿度日射量輻射熱風速を反映しており、湿球温度Tw)、黒球温度Tg)、乾球温度Td)の値を使って計算する。

(屋内および日照していない場合)

軍隊のほか、高温となる労働環境や運動環境等での熱中症を予防するために国際的に利用されており、ISO 7243JIS Z 8504などとして規格化されている。 日本の気象庁と環境省は、2020年からWBGTが33 ℃以上になると予報された場合に熱中症警戒アラートを発表している(ただし、2020年は関東甲信地方のみ)。

歴史

フロリダの訓練施設でWBGTを測定するアメリカ海軍の隊員

1954年アメリカ合衆国サウスカロライナ州パリスアイランドにあるパリス・アイランド訓練所で導入された。サウスカロライナ州は温暖湿潤気候にあるが、パリスアイランドなどの標高の高い地域は大西洋岸よりも温帯の性格が少なく夏は高温多湿となるため訓練中に熱中症となるリスクが高いことから、予防措置としてWBGTを導入した。効果が認められ、アメリカ軍の訓練施設でも導入された。

熱中症予防

日常生活に関する指針
WBGT 警戒レベル 注意事項
≧ 31.0°C 危険 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
28.0 - 30.9°C 厳重警戒 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
25.0 - 27.9°C 警戒 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
≦ 24.9°C 注意 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。
運動に関する指針
気温(参考) WBGT 警戒レベル 熱中症予防運動指針
≧ 35.0°C ≧ 31.0°C 運動は原則中止 特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべき。
31 - 35°C 28.0 - 30.9°C 厳重警戒
(激しい運動は中止)
熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。
28 - 31°C 25.0 - 27.9°C 警戒
(積極的に休息)
熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。
24 - 28°C 21.0 - 24.9°C 注意
(積極的に水分補給)
熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
<24°C ≦ 20.9°C ほぼ安全
(適宜水分補給)
通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

脚注

外部リンク