旅館業法

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旅館業法
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 昭和23年法律第138号
種類 経済法
効力 現行法
成立 1948年6月30日
公布 1948年7月12日
施行 1948年7月15日
所管 厚生労働省
関連法令 食品衛生法食品安全基本法など
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旅館業法(りょかんぎょうほう)(法令番号 昭和23年法律第138号、1948年7月12日公布、同年7月15日施行)は、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的として制定された日本法律。所管官庁は、厚生労働省で、関係官庁には国土交通省総務省消防庁がある。

概要

定義(第2条)
この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
旅館業の許可(第3条)
旅館業を営もうとする者は、都道府県知事保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
都道府県知事は、前項の許可の申請があった場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
  1. 心身の故障により旅館業を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの[1]
  2. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  3. 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくはこの法律に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して3年を経過していない者
  4. 第8条の規定により許可を取り消され、取消しの日から起算して3年を経過していない者
  5. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者(第八号において「暴力団員等」という。)
  6. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が前各号のいずれかに該当するもの
  7. 法人であって、その業務を行う役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
  8. 暴力団員等がその事業活動を支配する者
宿泊拒否の禁止(第5条)
営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
  1. 宿泊しようとする者が伝染病の疾病にかかっていると明らかに認められるとき。
  2. 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
  3. 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。
宿泊者名簿の設置(第6条)
営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名住所職業その他の事項を記載し、当該職員の要求があったときは、これを提出しなければならない。
宿泊者は、営業者から請求があったときは、前項に規定する事項を告げなければならない。
旅館業許可の取り消し及び停止(第8条)
都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第3条第2項第3号に該当するに至つたときは、同条第1項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命ずることができる。営業者 (営業者が法人である場合におけるその代表者を含む。) 又はその代理人使用人その他の従業者が、当該営業に関し次に掲げる罪を犯したときも、同様とする。
  1. 刑法第174条 、第175条又は第182条の罪
  2. 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する罪 (同法第2条第4項の接待飲食等営業に関するものに限る。)
  3. 売春防止法第2章に規定する罪
  4. 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に規定する罪

旅館業法をめぐる動向

民泊サービス関連の規制緩和

政府は2015年10月、政府が指定する国家戦略特区の諮問会議で、旅館業法の特例として、一般の住宅などを宿泊施設として活用する「民泊」に関する事業計画を認定した。2016年1月から東京・大田区の一部地域を対象に適用されている[2]。また、大阪府議会で、国家戦略特区指定地域に関して旅館業法による許可を不要とする条例を制定、2016年4月に施行されている[3]

2016年4月1日に旅館業法の一部が改正され、簡易宿所に関して「33㎡以上を求める」構造設備基準が緩和された[4]

2017年改正

  • 第195回国会における改正 平成29年12月8日成立、12月15日公布、平成30年6月15日より施行、施行後、東京都内で初の営業許可取得は、株式会社UBIQSによって行われた。
    • 営業業種の統合
      • 営業種別について「ホテル営業」と「旅館営業」を統合し、「旅館・ホテル営業」に一元化
    • 最低客室数の廃止
      • 最低客室数(ホテル営業:10室、旅館営業:5室)の基準が廃止
    • 1客室の最低床面積の緩和
      • 1客室の最低床面積(ホテル営業:洋式客室9m2以上、旅館営業:和式客室7m2以上)が、7m2以上(寝台を置く客室にあっては9m2以上)に変更
    • 無許可営業者に対する罰則の強化
      • 無許可営業者に対する都道府県知事等に報告徴収や立ち入り検査を可能にする
      • 無許可営業者に対する罰金の上限額を3万円から50万円に、その他旅館業法違反者に対する罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げ
    • その他
      • 旅館業の欠格条件に暴力団排除規定を追加

コロナウイルス感染症と旅館業法

旅館業法第5条は「明らかな伝染病」の場合を除き、健康上の理由によって宿泊拒否をすることを禁じている[5]2019年コロナウイルス感染症の流行では発熱客などの宿泊を断る感染防止策が旅館業法第5条に抵触する可能性があり対応が課題になっている[5]

脚注

  1. ^ 成年被後見人又は被保佐人欠格条項とする規定については、令和元年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」によって削除され、心身の故障等の状況を個別的、実質的に審査し、必要な能力の有無を判断することとなった。
  2. ^ 政府、訪日向けに大田区で「民泊」-マイカー送迎なども議論”. トラベルビジョン (2015年10月21日). 2015年11月8日閲覧。
  3. ^ 大阪府も民泊特区に 制度スタート、申請第1号”. 朝日新聞デジタル (2016年4月1日). 2016年4月2日閲覧。
  4. ^ 民泊サービスと旅館業法に関するQ&A”. 厚生労働省. 2016年4月17日閲覧。
  5. ^ a b 新型コロナ 発熱客宿泊、拒めない GoTOあいまい 旅館苦慮 毎日新聞、2020年8月14日閲覧。

関連項目

外部リンク