手旗信号

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手旗信号を送るアメリカ海軍の乗員
手旗信号を送る飛行船の乗員

手旗信号(てばたしんごう、: Flag semaphore)は、手旗を使い、望遠鏡双眼鏡で見える可視範囲で遠方への通信を行う手段。その成り立ちから、おもに海上で用いられる。

和文手旗信号

概要

日本で手旗信号が考案されたのは海軍においてである。1893年頃、海軍の釜屋忠道が部下の道本場声とともに考案したとされる[1]カタカナの裏文字を両手を使って書いて見せ、ほぼ誤りなく読み取ることができたことから、近距離の通信では実用信号として使えると判断し、海軍に進言し、正式に採用された。これが「海軍手旗信号法」になったといわれる[2]

その後、海軍で覚えた信号法を商船でも海軍手旗信号法を準用して使うようになり、1936年に海軍と統一した「日本船舶手旗信号法」として定められた[3]

戦後になり、海軍が消滅したことなどもあり、海軍が規定していた発光信号とまとめる形で1952年運輸省告示により「日本船舶信号法」が制定され[3]、手旗信号は引き続き日本の船舶信号として採用されている。

現状

現状では他の通信手段の発達などにより、商船や漁船の通信として使われることはないが、海上自衛隊ではもっとも基本的な特技であり、入隊時に全員が訓練を受ける[4]ほか、海上保安庁でも訓練を受ける[5]

海洋少年団においては、手旗信号を不自由なく使えるよう訓練を行い、全国大会などの大会競技として能力を競う[6]。また、ボーイスカウト訓練の一つに手旗信号があるため、ボーイ隊以上の「携帯品」の一つに信号用の紅白旗が含まれる事が多い。

動作

右手に赤旗、左手に白旗を持つ。


基本姿勢(原姿)
  • 原画(げんかく)

(0) - 赤を基本姿勢から時計回りに回す - ○

(1) - 一

(2) - |

(逆2)

(3) - ノ

(4) - \

(5) - ・

(6) - ニ

(7) - L

(8) - ┐

(9) - フ

(10) - ハ

(11) - ク

(12) - リ

(13) - ゛

(14) - ゜
  • 原画を1 - 3種組み合わせて文字を決定する。
  • 基本姿勢を1文字の区切りとする。

カナ

※本来の配列はいろは順だが、便宜上五十音順とした。

  • ア - 9→3
  • イ - 3→2
  • ウ - 6→9
  • エ - 1→逆2→1
  • オ - 1→2→3
  • カ - 8→3
  • キ - 6→2
  • ク - 11
  • ケ - 7→3
  • コ - 8→1
  • サ - 1→12
  • シ - 5→7
  • ス - 1→2→5
  • セ - 9→7
  • ソ - 5→3
  • タ - 11→5
  • チ - 7→逆2
  • ツ - 12→3
  • テ - 6→3
  • ト - 2→5
  • ナ - 1→3
  • ニ - 6
  • ヌ - 9→4
  • ネ - 9→2→1
  • ノ - 3
  • ハ - 10
  • ヒ - 1→7
  • フ - 9
  • ヘ - 4
  • ホ - 1→2→10
  • マ - 9→5
  • ミ - 6→1
  • ム - 7→5
  • メ - 3→5
  • モ - 6→7
  • ヤ - 8→4
  • ユ - 9→1
  • ヨ - 8→6
  • ラ - 5→9
  • リ - 12
  • ル - 3→7
  • レ - 7
  • ロ - 7→8
  • ワ - 2→9
  • ヰ - 6→12
  • ヱ - 9→3→1
  • ヲ - 1→9
  • ン - 5→1
  • 濁音 - 13
  • 半濁音 - 14
  • 長音 - 2

日本の手旗信号は、受信者から見て正位置になるように、概ねカタカナの形状を反転して振るようなアクションを行う。ただし、「ス」は「寸」を模した形、「ネ」は「子」を模した形などというように工夫がされている。

その他の信号


起信信号
通信を開始する合図。受信者が応信を返すまで行う。

応信信号
起信に対し、解読準備が出来ている時に返す合図。送信者が起信を終了するまで行う。

消信信号
送信を誤った場合に、それまでの信号を取り消す合図。また受信者が信号を解読できなかった場合にも使用する。

終信信号
送信文が終了した合図。受信者が解信を返すまで保持しておく。

発動信号
起信信号の後、本文を送信する前に使われる。

解信信号
終信信号に対し内容が理解出来ている時に返す合図。

この項目の出典はこちら[3]

欧文手旗信号

1933年国際信号書として種々の通信法が定められたが、通信技術の発達により、旗りゅう(旗旒。旗や吹流し)を用いた信号の利用範囲が限定されることとなった。このことから、1961年に政府間海事協議機関(IMCO。1982年に現在のIMOこと国際海事機関となる)により国際信号書の改定計画が立案、承認され、1968年に新しい国際信号書が使用されることとなった[3]

この新しい国際信号書では、下記のセマフォア信号ではなく、モールス符号を旗手または徒手にて送信する方法が定められている[3]

セマフォア信号


Rest position(準備)

Numerals(この信号からlettersを送るまで数字表記)

Error

Cancel(訂正)

A / 1

B / 2

C / 3 / Ack(確認)

D / 4

E / 5

F / 6

G / 7

H / 8

I / 9

J / Letters(この信号からNumeralsを送るまで文字表記)

K / 0

L

M

N

O

P

Q

R

S

T

U

V

W

X

Y

Z

モールス符号

下記引用部分における、文字をカギ括弧で囲んだ部分の符号は、それらの文字が結合したひとつの符号のように送信する。

手旗または徒手によりモールス信号を行なうときには、次によるものとする。
(1)呼出し
いかなる信号方式でもよいから、信号”K2”を送信する。またこれにかえて、呼出し信号”「AA」「AA」「AA」”を表示してもさしつかえない。
(2)応答
受信局は、呼び出しを受けたときは、応答信号”T”を使用する。ただし、手旗または徒手によるモールス信号で通信ができないときは、信号”YS2”を可能な方法で送信する。
(3)呼び出し信号および応答信号の使用
呼出し信号”「AA」「AA」「AA」”および応答信号”T”は、送信局および受信局においてそれぞれ使用する。
(4)送信の要領
両手を使用して送信することを原則とするが、困難な場合は、片手で送信することができる。
(5)終信信号
信号は、すべて終信信号”「AR」”で終了する。


(1)両手を真上に上げる。

短符 


(2)両手を肩の線で水平に伸ばす。

長符


(3)両手旗または両手を胸の前に持ってくる。

短符と/または長符との区切り


(4)両手を下方45°の方向に伸ばす。

文字、符字または語の区切り


(5)両手で頭上に円を描く。

・送信側でなされたときは、消信信号を示す。
・受信側でなされたときは、再送要求を示す。

注意 各符間の間隔および文字と文字、符字と符字、語と語の間隔は、正しく受信しやすいように配慮して適当にとること。

--海上保安庁監修 国際信号書 第八版(1990/9/1発行)

出典

  1. ^ 福岡海洋少年団の手旗信号紹介ページ
  2. ^ 横浜海洋少年団の手旗信号紹介ページ
  3. ^ a b c d e 三谷末治、古藤泰美、2000、『旗と船舶通信 五訂版』、成山堂書店 pp. pp.4
  4. ^ 自衛隊愛媛地方協力本部
  5. ^ 海上自衛隊護衛艦と海上保安庁練習船のエール交換で、2013年に海上自衛隊護衛艦あけぼのと海上保安庁練習船こじまが発光信号と手旗信号で交信したことがtwitterで公開されている。
  6. ^ 日本海洋少年団第48回全国大会報告ページなどで手旗受信・送受信競技が行われたことが記載されている。

関連項目

外部リンク